学童保育とは、主に日中保護者が家庭にいない小学生児童に対して、授業の終了後に適切な遊びや生活の場を与えて、児童の健全な育成を図る保育事業です。正式名称は「放課後児童健全育成事業」で、厚生労働省が所管。いわき市では、「学童クラブ」「放課後児童クラブ」等で呼ばれていますが、運営主体で自主的に名前を決めているのが実態。

いわき市では44カ所に学童保育が設置され、約2,000名の児童が在籍中。運営主体は社会福祉法人(保育園のこと)、民間団体等でもよいのですが、いわき市の場合、保護者会が運営主体となっているケースが大多数です。私の母校、平三小では昭和57年から「すずかけ学童クラブ」として、保護者会が運営主体として、小学一年生~四年生までの61名が在籍しています。設置場所は、平三小内の空き教室2つを改装して使っています。

学童保育の機能としては、
1. 保護者の帰宅・お迎えまでの間の児童の安全確保
2. 遊びや活動の提供
3. 補食としてのおやつの提供
4. 宿題など自主学習の場の提供
5. 親子イベントの開催等

平日は13:00過ぎから開所し、19:00前後まで児童を預かっています(家庭によって帰宅時間が異なる)。土曜日も事前登録により、開所しています。
 
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児童は放課後、まず学童クラブに来てランドセルを預けます。指導員とは毎日顔を会わせているので、児童の精神状態や健康状態等、コミュニケーションはバッチリです。このコミュニケーションの水準はもしかすると、(年次で担任が替わるわけでもなく、かつ教科を教えるという役割がない分だけ)小学校の担任教諭以上かもしれません。

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学童保育の設置根拠は、児童福祉法第6条3の第2項。
この法律で、放課後児童健全育成事業とは、小学校に就学しているおおむね10歳未満の児童であつて、その保護者が労働等により昼間家庭にいないものに、政令で定める基準に従い、授業の終了後に児童厚生施設等の施設を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業をいう。

条文中の「おおむね10歳未満の児童」という文言は運用上の目安であって、現在は小学校第4学年までという運用をしていますが、来年からは第6学年でも利用できるようになります。

学童の運営は、保護者会が直接行なっています。児童の親は月会費9,000円を負担します。それを原資に保護者会が、指導員を雇用しています。公費負担もありますが、ざっくりいって児童一人あたり年間10万円程度です。それ以外のイベントの運営費、備品(ストーブ等)購入等は保護者負担です。

多くの学童の運営費総額は年間10百万円-12百万円程度(親負担の月会費+市からの補助金)です。金額大きいように見えても、5人程度の専属の指導員の人件費に、備品購入、イベント開催費等を考慮すれば、運営は非常に厳しい。

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外遊びの定番は、ドッジボールと鬼ごっこ。児童と一緒に指導員の方も懸命に遊んであげていました。30分程度の外遊びですが、こどもたちは嬌声をあげて全力で遊んでいました。これは楽しそう。

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平三小は、一学年2-3クラス編成の比較的大きな学校ですが、クラブ活動はさかんです。放課後には、サッカー部・陸上部・吹奏楽部・合唱部らが毎日遅くまで練習をします。部活動に入れるのは3年生からなので、2年生まで学童クラブに入る子も多いですし、学童クラブに入りつつ、部活動をする子もいます(その場合、部活がない日だけ学童に来ることなる)。

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学童では、まず①学校の宿題を済ませる、②外遊びをする、③おやつをいただく、④自由時間となり室内遊びをするという順番で行なわれることが多い。平三小では、専属の指導員が常時5名が児童の育成を見守ります。勉強を教えることはありませんが、わからないところを質問されれば、ヒントをあげたりもして、自主的に学習するよう方向付けてあげたりもするそう。

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「小1の壁」、すなわちこれまで幼稚園延長保育や保育園で18:00過ぎまで子どもを預かってもらっていたのが、小学校に入学し、16:00過ぎには帰宅するようになり(13:00過ぎに帰宅する曜日もある)、6才の子どもが両親の帰宅まで時間を過ごす場所がないという問題があります。

もっとも、これには両親が共働きであり、かつ自宅や近隣に祖父母がいないという前提があります。本来であれば、愛情あふれる近親者に自宅にいてもらい、そこでともの時間を過ごすというのが理想ではありますが、現実社会ではそのような条件が揃っている家庭だけではなく、いろいろな多様性があるので、それのような「保育に欠ける(個人的には好きな言いまわしではありませんが、役所言葉ではこうなる)」児童を社会的に対応しようというのが、学童保育制度です。

学童保育は保護者の児童の安全を守る場であるとともに、学齢期の児童が自立するための成長支援・健全育成を実践する場でもありますが、結果的に「仕事と子育ての両立」を実現するための、極めて有効なツールとなっていることも事実です。もし学童保育がなかりせば、保護者の就労等に大きな不都合が生じることになります。

全国を見回せば、地域によっては申請が殺到して待機児童が生じるほど需要が高いところもありますが、いわき市においては、いちおう条件に合致する家庭はすべて受入れているということになっています。ただし、これはあくまで建前。潜在的に学童保育を利用したい(が、保育に欠けるという条件がクリアできない)家庭は、かなりの割合で存在していると肌で感じています。学童のような施設の拡充等の積み上げこそが、潜在的な女性の力を引き出し、日本の産業活動の活性化させ、また児童の能力を引き出す手段なのではないか。

しかし設備という量の拡充もさることながら、運営を担当する指導員の質も大事です。学童の機能を 1.単純に子どもを時間まで預かるだけの扶助機能と捉えるか、2. 安全確保や遊びや活動の提供、おやつの提供、 宿題など自主学習の場の提供等と考えるかで、大きく考え方が異なってきます。私は後者と考えており、指導員は幅広くかつ児童に直接コンタクトするため非常にその役割は大きいと思います。その割には、指導員は保護者会からの雇用形態であり福利厚生は十分とはいえません。日本の将来は次の世代であるこどもにかかっている、そしてさらに人的資本の蓄積が大事になる世の中になるということであれば、責任も待遇も、まずは幼稚園の先生と同水準を目指すべきではないでしょうか。