特別養護老人ホームパライソごしきは、社会福祉法人 五彩会が運営する鹿島町久保仲田の介護施設(短期入所生活介護・介護予防短期入所生活介護・介護老人福祉施設)です。2007年の運営開始ですが、いわき市内で最新・最高の介護施設との呼び声も高く、評判が良いです。いわきの医療・まちづくりシンポジウムにもご寄稿いただいた介護のエキスパートである柴田施設長にご案内いただきました。結論から先に述べると、「予想をはるかに超えるハード施設とサービスの質」でした。

<いわきの医療・まちづくりシンポジウムは、コチラ>

入居者にとって「居心地の良い家」、「自宅でない在宅」という基本理念に基づいて、全室完全個室のユニットケアシステムをとっています。特に運営の親会社が、隣接地にパレスいわやというブライダルを営んでいて、そのインテリアやサービスのノウハウがが特色ある施設とコンセプトになっています。

2棟が隣接して建っていますが、今回はパライソごしきを中心に見せて頂きました。入居室の入居率は100%、ショートステイも90%近い稼働率だそうです。
1. パライソごしき 入居室:80室、ショートステイ:20室
2. パライソサンクス 入居室:29室

建物の外観は、これまでの介護のイメージを超えた明るいカラーコントロールの外観と広い庭園です。

22

リゾート地にあるイタリアンレストランかと見紛うほど、明るいカラーのインテリアと家具の質感がある1F集会所。第二の人生にふさわしい「終のリゾート」というにふさわしいかも。ここで施設長とお話しをしました。

18

入口脇にある受付。INFORMATIONカウンターといったほうがふさわしいかも。職員は常勤60名弱、非常勤30名弱です。完全な3交代制シフトを引いているため、極端な残業は発生させない労務管理とのこと。逆に言えば、日勤・夜勤・早朝出勤のシフトのメンバーへの割り振りに工夫が要りそうです。いわき市ではサービス業のスタッフが逼迫しており、求人倍率は2倍を超えており、どのようにスタッフにとって働きやすく、離職しないような職場環境にするかは喫緊の課題です。

10

入居は完全1人部屋(13.5㎡)で、10部屋を1ユニットとして、それぞれ共用リビング・トイレ・キッチンが付きます。2ユニットごとをスタッフ6名が担当。日中は1ユニットに一人、夜間は2ユニットに一人が常駐します。なので毎日、見知ったスタッフがローテーションでお世話をすることになります。驚いたのは、ユニットごとの自動ドアやエレベータに、徘徊防止用の暗証番号によるロックがないこと。痴呆症の入居者が外に出ないか心配ですが、見知ったスタッフの目があるため、その必要がないそうです。

ユニットの建物内の配置は非常にシンプル。4隅にユニットを寄せ、中央にエレベータ、階段、スタッフステーション、吹き抜けを配置。これが建物コストの削減に寄与していると思います。参考までに、社会福祉法人 五彩会の公開財務情報によれば、平成25年度の固定資産はトータルで14億円が計上されています。建物の延べ面積はそれぞれ5,876㎡、1,451㎡ 合計7,327㎡(2,216坪)。償却計算や内訳などを全く無視したざっくり計算ですが、建設コストが64万円/坪見込みとなり、非常にコストパフォーマンスの良い建物に見えます。

このような特別養護老人ホーム・併設ショートステイの建物新築には、国の定める一定の条件のもと、補助金が通常4-5百万円/室程度、支給されます。コチラの場合も100室で、4億3千万円の国庫補助金等特別積立金が計上されています。建物コスト14億円に対する4.3億円ですから、補助金の占める割合は非常に大きいです。

<平成25年度決算報告はコチラ、パライソごしき情報公開HPより>
10

豪華、という名にふさわしいロビー。まさにブライダルテイスト。介護施設らしくないけれど、それがまた新鮮。

12

1ユニットごとの共用キッチン。平均年齢80才を超える入居者が自分で利用することはあまりなく、スタッフが食事・軽食の支援をするのに使うのが多いようです。

56

各階にひとつずつ設置されているスタッフステーション。外観は西洋の駅舎のようです。こちらのスタッフは、医師・看護師の指導のもと、入居者の痰のからみの除去や胃瘻での栄養補給等の単独で行えるそう。自力では動けないけれど、容態が安定していて天命ともいうべき衰弱を待っている状態では、医療行為の必要性がないので、プライベートのない病院へ入院するよりも、こちらのような施設で家族とプライベートな余命までの時間を過ごせるほうが、明らかに良いでしょう。

30

どうしても介護施設内とは思えない壁紙!しかもよくみると腰壁はテープではなく、木製。尋常ではない色彩へのこだわりです。それぞれの個室内の壁紙・カーテンの柄も変えてある!市中のホテルでもここまで、こだわらないと思います。オーナーの飽くなきカラーリングへの追究に脱帽です。

39

今回の視察の目玉がこの浴槽です。車椅子の入居者が、小さな補助だけで入浴できる(スタッフはそばに居ますが)という優れもの。
1. 車椅子の入居者は浴槽のそばの補助椅子まで行き、座らせてもらう
2. 補助椅子から浴槽内のバーを握ってお尻をずらせば、空の浴槽の底に行ける
3. 両手でバーをつかんで、完全に空の浴槽の中に入る
4. ボタンで操作し、浴槽の手前の壁がせり上がってくる
5. お湯張りが自動的に始まり、肩までお湯に浸かれる
6. 体を洗浄後、お湯を抜く
7. 空の浴槽になったら、体をふいて、1-3の逆の手順で車椅子に戻る

なお、一人ずつお湯を抜きますが、お湯をムダにしないよう、ゴミをとった上で循環させることもできる機械だそうです。これはすごい。価格は2百万円くらいらしいですが、重労働の介助を少しでも軽減すべく、市内すべての介護施設に導入されて欲しい。

32

車椅子の入居者にとっては、腰を上げなくてはならないトイレも深刻なハードル。車椅子が回転できる広いスペースのトイレと、つかまりバーがある便器は必須です。

37

入居者・家族の多くが、(病院でなく)施設で亡くなる「看取り」を選択するそうです。病院での延命措置のために、各種チューブを入れられ(スパゲッティ状態)、痛みに耐え、自ら話すことも意志を伝えることもままならず、個人の尊厳がなくなるような入院状態を選択しないということは、十分理解できます。その場合、死期はある程度予測がつくので、それにあわせて家族が寝泊まりし、最後の一緒の時間を過ごすことが多いそうです。入居者が呼吸停止になったら、深夜であろうと早朝であろうと、医師に電話連絡し、死亡診断書を発行してもらいます。葬儀屋さんにも連絡をすれば、間もなく来てくれ、死後の処置は、葬儀屋さんが行います。 いたってシンプルで驚くほど穏やかです。息を引き取ってから、施設からの搬出まで、ものの数時間だそうです。施設・スタッフは、入居者や家族に対して、敬虔な気持ちで接する一方、看取り自体が日常的に発生する仕事の一部となっていることも事実。持続可能なサービスを維持するためにも、中長期的に無理のない仕組みが必要です。

そのためにも看取りの医師の深夜呼び出しや、介護施設のスタッフの職場環境の改善は喫緊の課題だと思っています。