諸橋近代美術館は、サルバドール・ダリの作品を300点以上収蔵する、世界屈指のダリ美術館です。ダリの彫刻 37 点は随一のコレクションです。それだけでなく、敷地は、五色沼入口近くの磐梯朝日国立公園内に立地しています。国立公園内の美術館は珍しいし、冬期期間中は雪のため閉鎖する施設も珍しい。

公益財団法人諸橋近代美術館が所有・運営していますが、ゼビオ株式会社の創立者である諸橋廷蔵氏が1999年に寄贈したものです。ゼビオは、郡山市に本社がある東証一部上場の100 店舗を全国に展開するスポーツ用品小売店。実はこのゼビオ発祥の地はいわき市なんです。諸橋氏は 1962 年いわき市に紳士服小売業サンキョウを創業、一代で同社を 1 部上場企業にし、株式一般公開時の上場益を、この美術館に投入しました。
 
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美術館の設計は、諸橋廷蔵氏自らがラフデザインや色調を決め、建築家と共同で設計したそうです。福島県建築文化賞優秀賞にも選ばれています。磐梯朝日国立公園内の5.5 万㎡以上の敷地を持ち、中世の西洋建築かと見紛うほど巨大です。建物前面にはこれまた巨大が池もあり、敷地内を小川が流れています。

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ゼビオの諸橋廷蔵氏の経歴が目を引きます。氏はいわき市の豪商、釜屋を運営する諸橋家に生まれます。諸橋廷蔵氏の父親、久四郎氏の一人目の兄はいわき市で貴族院議員を務めた諸橋久太郎(守次)氏、二人目の兄は釜屋の当主、諸橋元三郞氏です。

<釜屋は、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/24995460.html
 
しかし久四郎氏は実家が資産家であることをいいことに、絵やレコードを収集に熱中し、仕事そっちのけだったらしい。廷蔵氏は、生活を支える母の姿を見ながら育ったとのこと。苦学して明治大学商学部を卒業後、陶宝堂という陶器・瀬戸物店や片岡沙羅店という生地販売店で経験を積み、いわき市平の商店街に山三繊維のFC店として、紳士服小売業サンキョウを創業。しかし仕入れ先であった山三繊維の倒産もあり、いったんは廃業も覚悟しました。しかし当時、高額のため割賦販売が常識だった紳士物スーツを、格安で販売しそのかわり現金販売で代金回収する方法をひらめく。これが他社の在庫のはけ口となり、大成功。その後、紳士服小売店舗の競争激化を見込み、カジュアル店舗へ大きく業態転換。カジュアルからさらに大型スポーツ店スーパーゼビオに業態転換しました。現在は全国に100店舗以上を展開し、ゴルフパートナーやヴィクトリアなども買収・子会社となっています。一代で、東証1部上場を果たし、地元の名士となったものの、2003年2にハワイ州ホノルル市のコンドミニアム22階の窓から転落して死去してしまいます。なお、ゼビオは娘婿の諸橋友良氏が社長を引き継いでいます。なお、長男の諸橋英二氏は 諸橋近代美術館の館長に就任しています。

展示ホールの入口。ダリが口を開けて待っています。人を食った建物デザインです。ダリの名言、「天才を演じきると天才になれる」。私生活は、繊細で礼儀正しいものであったと言われていますが、外部から天才に見えるようなポーズやアピールの仕方は、上手だなあと思います。

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ダリの代表的な作品。溶ける時計。これもそうですが、ダリの作品のほとんどは「ダブルイメージ」が入っています。すなわち 二つのイメージを一つの作品に盛り込むことです。

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これもダリの作品ですが、実際に座ってもOK。記念撮影もOK。

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美術館のエントランスホールにはミュージアムショップとカフェがあります。美術館グッズはかなり充実しています。

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カフェの窓から、前庭と池、磐梯山の噴火口を望むことができます。

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美味しいコーヒーとクッキー。美術館のグレードがこんなところにも感じられます。

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