吉田英男氏(神奈川県三浦市長) Mr. Hideo Yoshida
1979年国際商科大学(現東京国際大学)商学部卒業、横浜銀行入行。葉山支店長、県庁支店長などを経て、2005年より現職。現在3期目。2009年に「三浦市緊急緊縮財政宣言(脱・イエローカード)」を公表するなど、行財政改革に注力している。

根本祐二氏(東洋大学教授) Prof. Yuji Nemoto
1978年東京大学経済学部卒、日本開発銀行(現・日本政策投資銀行)入行。地域開発部、米・ブルッキングス研究所客員研究員、設備投資研究所主任研究員、地域企画部長等を経て、06年より現職。東洋大学PPP研究センター長。近著に『朽ちるインフラ』(日本経済新聞社)がある。 

三浦市は、三浦半島の先にあるマグロと観光の町。それが過度な借入れで工業団地を造成し、企業誘致に失敗したことと、税収の落ち込みが相まって、財政破綻寸前といわれ、市長自ら 三浦市緊急緊縮財政宣言をしています。このイエローカード解消のための一つの策が、PPPです。すでに東洋大学と連携して、資産の有効活用や、業務のアウトソースを始めているとのこと(年間1億円のコスト削減効果)。アウトソーシングの究極的成功例の米サンディスプリング市を強く意識しています。特に後者の業務分類調査は、正規職員が担い続ける必要がある業務を抽出することが目的で、ABC業務に分類し、それに基づいてアウトソーシングの形態を決めるというもの。ポイントはアウトソーシングを進める際には職員数計画と符合させること。まさに地方自治法第2条にいう「最小の経費で最大の効果」を目指そうというものです。

A:高度な判断を要する専門性があり、定型化の不可能な業務
→行政が引き続き行なう(正規職員が行なわなければならない)
B:判断を要する専門性があるが、定型化が可能な業務
→委託事業者(もしくは非常勤職員)
C:判断を要さないか、要しても軽易な判断で足りる定型業務
→非常勤職員を基本とする
 
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著者「朽ちるインフラ」で著名な、根本祐二東洋大学教授は、日米の地方自治体の法制度の比較をされました。かなり似ているあるものの大きな違いは、破綻法制があるかどうかということ。米国では破綻がシナリオとして想定されており、その場合債務の削減が可能となります。一方、日本では地方自治体の破綻はそもそも想定されていないので、破綻法制がなく、もし(夕張市のように)過大債務で経営が行き詰まっても、債務の削減はできません。

<朽ちるインフラ、はコチラ>
http://www.mikito.biz/archives/21911242.html

根本氏の試算では、日本に現在ある公共施設、土木インフラを更新するためには、30%以上の予算が不足しているとのこと。これを受けて2014年から、すべての自治体に公共施設等総合管理計画の策定が求められます。これは日本初の公的資産に関するマネジメント計画になるでしょう。これが求めているのは、
1. 公共施設、インフラのすべてが対象
2. 10年以上の長期計画にすること
3. 廃止を含めて、予算不足を解消するための方法を記載すること

これを鉛筆を舐めずにきちんとやれば、3がいかに難しいか想像に難くありません。

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現在でも、8割を超える自治体が、公共資産の維持管理に何らかの問題を認識していることが分かっています。その場しのぎの延命措置をとるのでなく、全体的な人口減少をきちんと認識して長期的かつ全市的な視野で、過大な現状のインフラをどのように縮小、合理的に維持していくかが問われています。

<NHKスペシャル 調査報告 日本のインフラが危ない>
http://www.mikito.biz/archives/30434113.html

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