古代ローマに実際に生きた一級品の素敵な男達に魅せられた著者塩野七生さんの壮大な研究、『ローマ人の物語』の第10巻、ローマの真の偉大さの源泉、インフラストラクチャーの整備編です。街道、橋、水道のハード・インフラと医療、教育のソフト・インフラの両面から「ローマの本質」を描き尽くした渾身の一冊です。なお、ローマ人が考えていたインフラには、ハードインフラとしての街道・橋・港・神殿・公会堂・広場・劇場・円形闘技場・競技場・公衆浴場・水道等と、ソフトインフラとしての安全保障・治安・税制・医療・教育・郵便・通貨等が入ってくるそうです。いまのインフラよりも広い概念ですが、公が担うべき役割という点では、こちらのほうが正しいかも。

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ハードカバー一冊まるごと、ローマのインフラに割かれています。読みながら常に、公が担うべきインフラとは何かについて考えさせてくれます。インフラを整備するその重要性を共和制・帝政問わず、為政者が常に理解していたことこそパックス・ロマーナを築けた理由。米軍は兵站で勝つといわれるが、ローマ軍は土木で勝つ。ローマ兵は全員が歩兵でもあり工兵でもあった。軍が迅速に移動できるよう道と橋を造る。駐屯するための町を造る。上下水道を整備する。怪我や病気に対応するために病院や温泉を造る。娯楽のための闘技場や劇場を造る。攻城戦のための道具も造る。そういう意味で、「築土構木の思想」は、洋の東西、今も昔も息づいていると思います。

<築土構木の思想 土木で日本を建てなおす 藤井聡著は、コチラ>
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しかし、ローマ崩壊後のゲルマン人達はそんなインフラ整備はしなかった、というか「できなかった」。だから今でもイタリアでは、アッピア街道をはじめとするこの時代の道路がまだそのまま普通に使われている。裏をかえせば、ローマ帝国の敷設した8万キロに及ぶ、全線敷石舗装のローマ街道は、2000年経過したいまでもその構想力が役立っていると言うこと。2000年前にアグリッパが作った「ヴィルゴ水道」も今日に至るまで、一日も休まず「流しっ放し方式」でローマ市内に水を送り続け、トレヴィの泉やスペイン広場の噴水に使われています。水がよどまないため消毒剤がなくても水質を保っており、現代におけるいわばアグリッパの水を飲むことも可能です。

後半はカラーページで地図(街道網など)、遺構の写真(街道、水道など)、解説図(ローマ街道の立体断面図や渡河橋の橋脚工事方法など)がふんだんに盛られ、著者の文章を参照しながら、二度三度読み返すと、ぐっと楽しめます。
 
ローマ時代に作られた、フランスニームのポン・デュ・ガール(Pont du Gard)を見に行く機会がありました。これは、フランス南部・ガール県のガルドン川に架かる水道橋です。ユゼスからニームへ水を運ぶための水路の途中にあり、古代ローマ時代・紀元前19年頃にアウグストゥス帝の腹心アグリッパの命令で架けられたそうです。

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橋は3層のアーケードになっており、水路は2層目の上を通っていました。これが紀元前時代、2000年前以上の建築とは、いまだに信じられない。

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