著者は、明智光秀の子孫です。明智残党狩りの手を逃れた光秀の子・於寉丸(おづるまる)の家系とのこと。その光秀の末裔がついに明かす衝撃の真実?仮説?です。本当の意味の歴史学者でなく、先祖という思い入れがあるからこそ、大胆な仮説を立て、懸命に検証するステップがおもしろい。

54

キーワードは、名門・土岐明智氏とその親族。その家系の行く末に危機感を抱いていた光秀に、家系のルーツというべき長宗我部氏を、信長の四国征伐が追い込んでいく。光秀が絶望していくタイミングで、まさに鬼才・織田信長が、最後の強敵を討ち果たすための策謀が計られる。最も信頼する部下である光秀はすべてを知り、千載一遇のチャンスにかけた。準備に十分な時間をかけ、策謀を練り、各地に手を回した。著者は自ら調べて新事実を積み重ね、日本史最大のクーデターの仮説を立てる。これこそ日本人なら誰でも知っている事件の歴史捜査エンターテイメントでしょう。

考えれてみれば、歴史の定説として教科書に掲載されているのは、いわゆる「勝者の歴史」に過ぎません。勝ったものが自らの正当性を補強するために、史実を脚色するなど、造作もなかったのでしょう。勝者の依頼で作られた歴史本などいくら読んでも真実は見えてきません。考えてみれば、調略にかけて百戦錬磨、生き馬の目を抜く戦国武将達が、単純なロジックで一族の生死をかけて行動したわけもなく、われわれの先人達は言葉通り、命をかけて人生の選択をしつづけた結果、歴史がつくられてきたわけです。その先人達の歴史の上に成り立っている現代人の生活ですから、われわれ現代の日本人はそれら先人達の想いを理解することは責務だと思います。
 
これまで習った知識や色眼鏡を捨てて、歴史の事実がなぜ起きたのかを考えてみたい。
・主君信長のために身を粉にして八面六臂の戦闘を繰り広げてきた光秀が、本能寺での家康討ち計画を利用して信長を討ったのはなぜか?
・自分の家来だった光秀が信長に抜擢されていくのを見て、細川藤孝の心中や如何に?そして下した決断とは?
・光秀との打ち合わせどおりに織田軍切り崩しにかかった家康が、光秀敗死を知ってどう動いたか?
・光秀の信長討ちを事前に知りながらも、秀吉はなぜ信長を見限り、どうやって誰よりも上を行って頂点までのし上がったのか?
・信長が警戒したとおり最終勝利者となった家康が、竹千代の元服を4年も延期して家光と命名した裏には何があるのか?
・なぜ「家」「光」なのか?家の字は家康由来としても、当時、光の字を使っている大名は限られている。
・家光の乳母とされている春日局は、明智光秀の重臣であった斎藤利三の娘。

謎解きをしていく過程が面白い。また、石谷頼辰、松井康之、杉原家次、彌介、島井宗室など、歴史上、重要視されてこなかった人物達が、実は、本能寺の変という歴史を動かしたキーパーソンであったかもしれないなど、いろいろな意味で興味深い本です。