いわきの医療・まちづくり公開シンポジウムの開催にあたり、看護師の井出恵伊子様にご寄稿いただきました。
140715_シンポジウムチラシ

高齢化に伴い看護師への期待が広がっている。そこで新たな取り組み例として、特定看護師の事例と看護から病院経営を考える意義について報告をさせて頂きたい。
 
【特定看護師の活路】
特定看護師に係る法制度が今回の国会を通過した。この制度は医師の包括的指示の下、研修を受けた看護師が手順書に従いながら一定の判断をしつつ医行為を行うことができるもので、特に医師が不足する地域や部門での活躍が期待されている。当院では平成24年より厚生労働省の試行事業を開始、高度看護実践分野の大学院修了生を診療部に所属させ活路を模索中である。
 
(急性期病院でのニーズ)
手術や外来等で忙しい診療科では医師が日中病棟不在で、夕方に入院患者対応に当たることが少なくない。こうした毎日は医師を疲弊させるだけでなく、看護師側も夜勤帯に指示変更や処置が増加するので疲弊の原因となっている。そこで当院では脳外科に1名の特定看護師を配置、医師が手術や外来で不在の間に、検査結果を確認して患者をラウンドし、状態変化等をいち早く医師にレポートして指示を受けている。病棟看護師にとってもすぐに確認でき、医師としても1本の窓口から情報を集約して報告してくれるため、この動きは大変好評である。中規模病院では潤沢な医師採用は難しく、運営面・経営面からも助かっている。
 
(医師不足地域でのニーズ)
今春より1名を青森県六ヶ所村の有床診療所に派遣し、医師不足地域での活動を始めた。この診療所では僅かな医師で入院・外来診療の他、乳幼児~成人健診、介護施設等の訪問診療、検査読影等全てに対応しており、特定看護師の活躍の場は大きいと考える。最初に取り組んだのは糖尿病患者のフォロー。忙しい診療所では、患者教育を始め、合併症フォロー等、医師が時間をかけて患者と話す時間がない。そこでそれらを可能な範囲で特定看護師が担当し始めている。また訪問看護の立ち上げでは、iPadを持参し、気になる所見や全身状態の判断に必要な写真を送り、医師が遠隔から的確かつ迅速に判断できるよう支援を行っている。将来的にはエコーを当てられるよう訓練し更に幅広い補助が行えるようにしたい。
 
【看護から経営を考える】
現在私は管理者直轄の経営企画室で、臨床経験と経営を融合させ、病院全体の運営に関わる各種業務を行っている。特に病院経営上、収入の最大因子は「病床利用率」であり、費用で最も大きいのは「看護職員人件費」である。病床利用率は看護側の運営要素が大きく、看護職員人件費は「看護配置基準」に基づく。平成26年の診療報酬改定ではこの看護配置基準の見直しが争点となった。つまり看護が重要論点となっている。
このような背景から、昨今大学院にて病院経営と看護の関わりに関する授業を始めている。経営が現場看護と密接に関わっていたことに気付いた看護師学生は、目の色を変えて真剣に討議してくれている。こうした討議の場を広げ、病院運営を主体的に考える現場看護師を増やしていきたい。
 
【最後に】
特定看護師が支援する診療の隙間も経営課題の隙間も、1段階のスキルアップで貢献の場を広げることができる。現在こうした機会を求める看護師も増えている。この機会を各地域に創出して都会への流出を防ぎ、特に男性を中心として看護師のなり手も増やしていきたいと考えている。

井出恵伊子様
大学で医療制度を専攻後、総合病院にて7年看護師として勤務。その後経営学修士を取得、山田ビジネスコンサルティング株式会社を経て、2012年より東京ベイ・浦安市川医療センターの経営企画室にて病院立ち上げ業務に従事中。

出典:いわきの医療・まちづくり公開シンポジウム ご寄稿集