8/9のいわき医療・まちづくり公開シンポジウムにおいて、トップバッターでご講演いただいた、東京大学医科学研究所の上昌広教授の新著です。昨今の各種雑誌でも、いわゆる医療崩壊が叫ばれていて、「医療崩壊列島ニッポンで超高齢社会をなんとかせねば!」調の表層的な記事をよくみかけますが、全く、分析の深度が異なります。まず「医療の不都合な真実」として、一般人にあまり知られていない事実を例示し、その問題点・原因・解決策を提示しています。事実を示すデータ&ロジックを踏襲した説明は、非常に具体的でわかりやすい。

不都合な真実 1 先端医療を食い物にする御用学者
不都合な真実 2 海外の特効薬が日本で承認されない理由
不都合な真実 3 大国立病院が軽症患者に占拠される実態
不都合な真実 4 救急車の患者たらい回しの「レッドゾーン」
不都合な真実 5 なぜ東北地方の急性白血病患者が多いのか
不都合な真実 6 薩長閥が作った歪な医師西日本偏重
不都合な真実 7 首都近郊の後期高齢者を待ち受ける地獄絵
不都合な真実 8 必須の「医学部新設」を阻む利権屋たち
不都合な真実 9 医療訴訟が本当に倒すのはだれか
不都合な真実 10 医療にも「ビジネスクラス」を

上先生がここまで 「医療の不都合な真実」を理解しているのは、ご自身もかつて国立がんセンター等でガン医療現場の最前線に立ち、不都合な事実を、毎日目の当たりにしてきたからでしょう(一般人には知り得ない情報)。また現在、医療ガバナンスの研究者という、医学界の権力の中枢部から一歩引いた立場で分析・研究できるからこそ見えてくることなのでしょう。この国の医師が本当のことを発言すると、途端に疎ましがられ、医療現場や権力から、徐々に排除される風土があります。もっともこれは医師の世界だけでなく、他の業界にもあてはまることなのですが、これまで医学界の情報が外部に漏れる機会がなかったので、ここにきて噴出しているとみるべきだと思います。いずれにせよこの本で、本当に役立つ医療とは何か、 医療をダメにする本当の「癌」は何か、があぶり出されています。
 
23

日本の医学は、明治維新の薩長雄藩のえこひいきで、医学部設置が西高東低になったこと、旧日本軍の医療施設が、現在の国立医療研究機関に看板替えしたこと等、の歴史的背景が、今になっても陰に日向に影響しています。また製薬会社・個人開業医・国立大学・私立大学のそれぞれの背景と事情がわかると、なぜそんな主張をするのかが理解できます。個人的には、国立病院の運営目的が、純粋にガンの臨床研究であるからこそ、ガンの重度患者を受け入れたくないという件は、驚きでした。特に、厚生労働省・日本医師会・全国大学学部長会議の行動ロジックを明快に書いてもらったのはありがたい。

上先生の提案する解決策は一貫しています。
<ダメなもの>国費・税金の投入、全国一律規制、ガチガチの岩盤規制、医療現場の過重労働
<進めるべきもの>将来の人材育成、医学教育のさらなる普及、健全な競争の導入、試行錯誤の積み重ね、自分の力で考えること

上先生地域偏在