いわきの医療・まちづくり公開シンポジウムの開催にあたり、福島復興本社代表の石崎芳行氏からご講演いただきました。石崎芳行様は、東京電力 福島復興本社の代表です。慶應義塾大学法学部を卒業後、東京電力に入社し、広報部長や福島第二原子力発電所の所長を歴任され、東京電力代表執行役副社長となりました。広野町のJヴィレッジにある復興本社に常駐され、除染・補償・復興の前線を担当されています。将来を見据えどのように浜通りのまちづくりに貢献していくかという視点でお話しをいただきました。

石崎代表

 寄稿にあたり、まずは弊社福島第一原子力発電所の事故により、多大なご迷惑、ご心配をおかけしておりますこと、あらためて心よりお詫び申し上げます。廃炉には、これから長い期間を要しますが、弊社は、国と一体となり、さらに、海外の叡智を結集して、安全・確実にこれを成し遂げることを経営の最大の責務として全力を尽くして参ります。
 
 今年1月に新しい事業計画を公表しておりますが、その中でも福島、とりわけ浜通り地域の復興に向け、最大限取り組むことを明記しております。原子力損害の賠償を最後の一人まで貫徹するとともに、住民の皆さまの帰還に向けた生活環境整備に資するための住宅や公共施設の片づけ・草刈り・モニタリング等の活動に加え、地域の産業基盤や雇用機会の創出に、弊社としてもグループをあげて最大限の努力をして参ります。
 その具体策のひとつとして、常磐共同火力勿来発電所地点および弊社広野火力発電所地点での「福島復興大型石炭ガス化複合発電(IGCC)設備実証計画」を盛り込んでおります。貴市における経済復興や雇用回復・創出へ少しでもお役に立てるのではないかと考えております。現在、実現に向けて環境影響評価を行っており、2020年代初頭の運転開始を目指し、手続きを進めるとともに、運営形態を含めた詳細を詰めて参ります。
 
 また、今年1月に赤羽経済産業副大臣が主査となり、関係省庁、福島県、浜通り地域の5つの自治体の首長(清水いわき市長を含む)、大学等の研究機関、そこに私も福島復興本社代表として参加させていただき、福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想研究会が設立されました。6月までの議論の結果、今後、国をあげたプロジェクトとして、浜通り地域の復興を加速するために次の事業に取り組むことが示されています。
【①国際廃炉研究開発拠点の整備】廃炉に必要となる先端的な研究開発に関わる国内外の技術者が働き、生活できる拠点作り。
【②ロボット開発拠点】廃炉作業に今後必要となるロボットをはじめ、災害時に活躍可能なロボットなど幅広い分野における技術開発の拠点整備。
【③国際産学連携拠点】全国の原子力や廃炉等の研究を行う大学の研究室を集積するとともに環境修復や農畜産業等も含めた産学連携拠点の整備。
【④新たな産業集積】被災地から発生する廃棄物のリサイクルを行うとともに、そこから発生する熱エネルギー等を農業やまちづくりに利用するスマートエコパークの設置、再生可能エネルギー施設の積極的な導入により、地域経済への貢献と一定の雇用創出。

 日本は、本格的な少子高齢化社会を迎え、地方都市における生産者人口の低下は都市の活力を減じる大きな課題であると認識しております。原子力発電所の事故により若い世代の方の帰還の意志が低いという厳しいアンケート結果も目にしているところではありますが、浜通り地域を温暖で住みやすい環境をベースに、さらに魅力的な街にしていくことで、この地に住みたい、働きたいと思って頂ける方を増やすことが必須と考えております。そのためには、この地でなければできないようなオンリーワンを目指した新たな産業なり農業なりを考えていくことが必要であると思っています。東京電力としても微力ながら具体的なご提案や貢献策を一緒に考えさせて頂きながら、実現に向け全力で取り組んで参る所存です。

石崎代表2

石崎芳行氏
昭和28年生
慶應義塾大学法学部卒業
平成25年1月より 代表執行役副社長 福島復興本社代表兼福島本部長兼原子力・立地本部副本部長

出典:いわきの医療・まちづくり公開シンポジウム ご寄稿集