いわきの医療・まちづくり公開シンポジウム開催に寄せて、として主催者のひとり、いわき医療未来会議 代表の島田玲於奈氏からご寄稿いただきました。
140715_シンポジウムチラシ


 2013年1月よりいわき市内にて「いわき未来会議」という市民会議が開催されています。私もいわき市医師会として参加させて頂いております。参加者はいわき市内外に問わず、弁護士、企業家、住職、教員、お子さんを心配する父兄、市内のボランティア関係者、相双地区の避難住民等々多岐にわたります。いわき市の今後の30年間を考え、何かを実行していこうという会です。
 
 医療に関しては「医療・福祉・介護」をひとまとめのテーマとして私から第二回より挙げさせて頂きましたが、いわき市は大変ひっ迫してきており、もはや医療関係者の力だけではどうにもならない時代に来ております。勤務医数に関しては、震災前の10年間で379名から283名へと 25%も減っていましたが、そこへ2011.3.11の震災が襲いました。そして人口の1割に当たる約3万人前後が、避難や作業員として流入、高齢化も相まって、医療・介護・福祉の需要が高まってきています。特に病院常勤医不足(救命救急、麻酔科、神経内科、皮フ科、膠原病内科等)が顕著で、平成22年医師・歯科医師・薬剤師調査によれば、福島県の病院勤務医師数は112.6人/10万人で全国第41位、平成25年4月1日の県南部に位置するいわき市の病院勤務医数は県北部の673 人、県中部の572人に次ぐ264人ですが、人口10万人あたりでは80.4人と県北部の140.6人や全国平均の141.3人の半分強しかおらず、人口が3万人増加している事から考えても危機的状況といえ、救急車のスムーズな受け入れも難しく、地域内で治療が完結できないケースも増えてきています。

 眼科も例外ではなく、この原稿を書いている7月現在、病院眼科常勤医は基幹2病院に計3名しかおりません。市民に限らず医師も少子高齢化が進み疲弊する一方です。緊急手術や夜間救急も難しく、非常時には郡山市や水戸市まで紹介しなければなりません。しかし個人でも現状を少しでも打開できないかと考えたのが開業医による近隣病院のバックアップです。現在、いわき市には公立の基幹病院の他にもいくつかの私立病院がありますが、多くの病院には眼科はなく、主に入院中の患者さんを中心に、依頼があればいつでもフレキシブルに診察に出向き、重症化を防止しようと考えています。これが成功すれば他科における勤務医不足解決の手助けになるものと考え、少しずつではありますが努力していきたいと考えています。
私は小さな眼科の一開業医ですが「医師として何か出来ないか。」との思いから、いわき市が運営している軽症患者向けの休日夜間診療所で、微力ながら約10年ぶりに内科・小児科診療を勉強させて頂いているところです。

 このような現状ですが、かねてから市民と医療関係者の対話と共有も必要だと考えておりました。そこで、いわきの医療の現状と未来について考える「いわき医療未来会議」という市民会議も立ち上げさせて頂きました。今回はその縁もあって、吉田みきと氏の計らいでいわきの医療問題とまちづくり問題を考えるシンポジウムを開催頂ける運びとなりました。

 ある時の未来会議では「すべての問題は、今までの自分たちの責任」という意見がありました。そして「自分から、まず変わろう」という意見も。あの3.11以降、世界は変わりました。我々も変わらなければなりません。いつ変わるの?今でしょう!

島田 頼於奈氏
福島県出身。磐城高校卒業。金沢医科大学卒業。同麻酔科、順天堂大学眼科、南東北病院眼科勤務を経て現職。現島田眼科医院院長。南東北病院、常磐病院、国立いわき病院、松尾病院非常勤医師。いわき市医師会理事。いわき医療未来会議 代表

出典: いわきの医療・まちづくり公開シンポジウム ご寄稿集より