山崎豊子著の「白い巨塔」単行本全5巻をあらためて読み直しました。「白い巨塔」といえば、主演 唐沢寿明の映画のイメージですが、原作はさらに面白い。Hayley Westenra の「Amazing Grace」が脳裏に焼き付いて離れません・・・
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浪速大学に勤務する財前五郎と里見脩二という対照的な人物を通し、医局制度などの医学界の腐敗を鋭く追及した社会派小説なんですが、まさに傑作といわざるをえません。最後は胃がんに冒された主人公が、自分の一生を振り返り、患者を死なせたことを悔いつつも、最高裁への上告理由書と自らの病理解剖所見書を残して最期を遂げる。壮絶な最期です。またしても私の脳裏には、Hayley Westenra の「Amazing Grace」が流れる・・・

個人的には、野心まんまん、出世を成し遂げるまで、そして成し遂げた主人公が、実母を大阪に呼び寄せないところが興味深い。母は、貧乏ながら奨学生として一人息子を国立大学へ送り、たった一人で窮乏生活を続ける。その息子の立身出世だけが一生の楽しみだったのに、その一人息子を、息子の将来のために、大きな医師一家に養子に出してしまう。それでも主人公は、実母に心を寄せつつ、大阪には呼ばない。一方、妻へ隠れて、毎月一度、まとまった金額を送金することに、密かな楽しみを見いだす。何のために生を受けたのか、何を目的に一生はあるのか、考えさせられます。

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本来は、医療訴訟や、医学部の閉鎖体質に光を当てた小説なんですが、主人公とその母との関係性、働く意味や愛情の表現の仕方のほうに、非常に興味を持ってしまった本でした。