いわき市四倉町にて、新鮮な鮮魚、自家製の粕漬を販売している大川魚店にお邪魔しました。七浜漬という、オリジナルの魚介の粕漬が有名です。大川勝正社長は、非常にネット発信力のある方で、震災後から毎日、ツイッターやフェイスブック等で、何らかの発信を続けているそうです。

実際のリアル店舗は、四倉の商店街に面した大きなお店です。東日本大震災の津波の影響で1階部分と冷蔵装置が水に浸かってしまい、営業できなくなってしまいました。魚の販売業は、冷凍・冷蔵装置が肝で、これがなければ商売になりません。しかし2週間も立たず、3/25には2階に保管されていた、乾物や缶詰だけでリアル店舗の営業を開始したそうです。当時は、市外からの物流がうまくいっておらず、市内の食料の供給事情が悪かったため、大好評だったそうです。

21

1階の販売店舗は広い!贈答品だけでなく、日常的な鮮魚まで幅広く扱っています。メディア取材も多く、テレビ、雑誌等の登場回数も震災後、圧倒的に増えたそうです。ネット販売にも力をいれています。

08

ちょうど昨日、新聞に掲載されたホッキ貝が販売されていました。本当に、ホッキ貝の個体は「明らかに」大きい。福島民友(2014.6.20)によれば、「いわき地区の試験操業で対象魚種に追加されたホッキ貝が19日、いわき市の久之浜漁港などに震災後初めて水揚げされた。同市漁協所属の4隻が計475キロを漁獲した。放射性物質検査の結果、全ての検体が検出限界値未満だった。水揚げされたのは久之浜のほか、いずれも同市の四倉、沼の内の各漁港。ホッキ貝は同市の小名浜漁港で検査され、県内の市場に出荷された。20日に競りにかけられるという。いわき仲買組合の浜田栄一ホッキ部会長(67)は「大きなホッキ貝が取れた。県内の流通状況を見た上で漁獲量を増やし、築地にも出荷したい」と話した。」とのこと。
 
大川社長によれば、震災前に比べて、魚種によっては3-10倍の漁獲量になっているものもあるとのこと。これは福島県沖が、3年間に及ぶ操業自主規制により、お魚の天国、サンクチュアリになっていることを裏付けています。

<福島県沖の水産資源量は、操業自粛により震災前の1.3~1.6倍に増加は、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/35506179.html 

38

これからの福島県沖の魚を出荷する上で、3年間の自主操業規制の現状をしっかりと分析しなければなりません。これまでは魚の取り過ぎによる資源の枯渇化が叫ばれてきましたが、お魚サンクチュアリ化によって、魚の個体が大きくなり、魚影も濃くなっていることがあげられます。一方、マイナスの面としては、福島第一原発事故による、放射能汚染、魚摂取による内部被ばくを避けるため、福島県沖の魚は消費者から敬遠され、それは、検査したとしても消費者の記憶から離れるものではないということです。

<漁業という日本の問題 勝川俊雄著は、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/34732189.html

関東・関西の消費者から、いわき産の漁獲類に対する認知度は、いわき市民が思っている以上に低い。「うに貝焼」「常磐もの」「潮目の海でとれたカツオ・サンマ」はいわき市民のなかでは定番かもしれませんが、市外の消費者の話題になることは、残念ながら、少ない。個々の商品にきちんとした深いストーリーを持たせれば、それぞれのポテンシャルはあるので、化ける可能性があるのですが。

32

ここにおいて、どんな戦略をとればよいか。もちろん科学的な放射線量の調査により「安全」を確認することは継続しなければなりませんが、それだけでは、個々の消費者の「安心」な気持ちを担保できるとは限りません。「安心」神話から一歩離れて、どうして消費者はお魚を購入するのか。それは、食べて美味しいから、健康な生活に役立つからではないか。ならば、美味しいと感じるための、付加価値を創造するほうに注力すべきではないでしょうか。

付加価値のつけかたについては、マーケティングの分野になってきますが、福島県沖の魚は上記の様に、他との差別化として、個体の大きさ・魚影の濃さがありますので、そこをテコにしていくのが常道。「漁業という日本の問題」とい本の中で、勝川俊雄氏は、漁獲量を毎年事前に決めて、それ以上の漁獲をしないということを提唱しています。これにより、魚の価格を維持し、生態系を維持し、漁民の職場・生活環境を維持していこうというものです。

これまで日本の漁業は、現場任せの面がありました。林業従事者は10年先のことを考える。農業従事者は1年先のことを考える、漁業従事者は目の前の魚のことだけ考える、そうです。その結果、資源の枯渇化を招いたとの指摘もあります。震災を機に、「福島モデル」と呼べるような、魚の取り方の仕組み、販売の仕組みを構築できれば、福島の漁業及び関係事業者の未来は開けるはずです。

10