草野心平記念文学館は、小川地区にある市立の文学館・生涯学習施設です。文化勲章受章者・日本藝術院会員で、いわき市の名誉市民でもある詩人・草野心平(くさのしんぺい 1903〜1988)の業績を末永く顕彰しています。蛙の詩が有名です。小川町は心平が16歳まで生まれ育ったこともあり、この地に開館しました。

そうは言っても小玉ダムへの中腹という地理的条件は、風光明媚な場所ではあるものの、交通アクセスは不便です。周辺に大きな街や観光施設があるわけではないため、大きな来場者数を見込むには不利な条件と言わざるをえません。観光施設ではなく、文学館ということを差し引いても、何もあえて人家から離れた山麓に中腹に作らなくても良かったのではないか。

<小玉ダムは、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/23782355.html
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ちょうど「草野心平の詩 富士山編」と題した企画展で、詩だけでなく絵画も展示されていました。心平の創作における代表的な主題の一つが富士山です。たぐいまれな存在感と造形美を持つこの山を心平がいかに表現したかを、詩、画、書など約100点の作品で展観しています。もっとも心平だけの企画展示だけでなく、市民交流の企画もやっていて、昨年はアンパンマンの企画展を開催し、アクアマリンの移動水族館の開催や、いろいろな市民講座等をやっています。絵画展や写真展、詩の朗読会、コンサートなど様々な芸術活動をしているそうです。

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個人的には、このいわき市小川町の雄大な自然を借景としたアトリウムロビーが一押しです。ロビー正面から一望できる阿武隈山系、二ツ箭山は、まさに自然風景をキャンバスで切り取ったようです。館長さんの許可を得て、写真を取らせて頂きました。
 
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建物自体も奇抜なデザインです。半地下にも見える建物は、瀬戸内海の豊島美術館のようでもあります。ディスプレイ産業優秀賞・通商産業大臣官房商務流通審議官賞・福島県建築文化賞優秀賞を受賞しています。市内にある、邑建築事務所というところが設計したらしい。施設は大きく分けて常設展示室、企画展示室、文学プラザ、小講堂、アートパフォーミングスペース、アトリウムロビーなどからなっています。展示室は写真撮影禁止なので、直接見ることをオススメします。

ちょうど、篤志家が所蔵していた古い雑誌等が寄贈されたところで、小講堂で清掃と仕分け作業をしていました。これらの書籍・雑誌は、保存すべきものとそうでないものに分類された後、保存すべきものは目録が作成され、空調・防かび対策された収蔵庫に収納されます。収蔵庫も見せて頂きましたが、厳重に管理されています(銀行の金庫室のようでした!)。こちらの収蔵庫も容量限界が近くなっているとのこと、文化財の保管には少なくないコストがかかります。先人の歩みを記録し、後世に伝え、次世代に活かすことと、それにかかる必要経費をどう確保していくかは、正解のない決断かもしれません。

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建物は半地下になっていて、土の自然なスロープで屋上部分に出ることができます。さながら空中庭園。天空の城ラピュタとまではいいませんが、360°に広がる、視界をまったく妨げることのないパノラマは、気持ちよかったです。

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