福島の労働市場が、沸騰しています。厚生労働省福島労働局発表によれば、福島県内の有効求人倍率は、2014年4月末現在で1.39倍。震災前が0.5倍前後であったことから、状況が一変しています。

震災直後から、県内の有効求人倍率、すなわち求人数/求職者の割合が、継続して上昇を続けています。すなわち「超」売り手市場、人手不足になっているということです。なお、全国平均の求人倍率は1.08倍で、それと比しても福島の労働市場の逼迫は明らかです。


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<出典:福島労働局職業安定部 公共職業安定所取扱月報>

 産業別に見ていくと、専門・技術、サービス、保安、輸送等運転や建設等の職業では求人数が求職者数を上回っている一方で、事務、製造、配送・清掃等の職業では求職者数が求人数を上回っているなど、職業間でのミスマッチが生じています。

<人手不足の業種>
・建設(建築・土木技術者など)
・医療(看護師・医療技術者など)
・サービス(介護サービス、接客・給仕など)
・保安(道路交通誘導員など)

<余っている業種>
・事務(デスクワーク、ホワイトカラー)
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これらが生じた要因は複層的ですが、構造的でもあります。
・建設・保安の人材不足:災害公営住宅や高台移転等の土地区画整理事業、防潮堤等の、政府財源による復興需要が依然として向こう数年間、発生すること。
・医師の人材不足:震災後、低放射線被ばくを嫌って地元から流出したり、新規に福島に流入する医師が少ないこと。原発周辺自治体から長期避難者の分だけ医療需要が増えたこと。さまざまなストレス等から医療機関受診の機会が増えたこと。また当初長期避難者は医療機関受診が無料だったこともあり、受診の過剰な労働時間に嫌気をさして、廃業する地元医師もいたこと
・サービス:建設業や除染作業員等をはじめとして、比較的高い労働単価を提供できる業種に、サービス業が許容できる労働単価に魅力が薄くなり、人材が流出してしまった

またこれらの底辺には、もとより生産人口としてのマンパワーである人の数は決まっているのに、絶対量としての仕事・作業量が増えているということがあります。景気としては好景気ですので、本来の経済運営としては、これを抑える政策をとることが望ましい。しかしながら、復旧・復興の大義名分のもと、復興予算が国から配分されており、地方は地方交付税交付金等として、単年度予算でいただく以上、単年度で使い切らなくてはなりません。結果として、さらに一時的に景気を過熱させ、労働需要の逼迫を後押しし、労務単価や建設資材の高騰を招いています。本来であれば、不況時に備えて積み立てておき、不況期に取り崩して、公共事業等に使うべきです。

注目したいのは、人材が余っている業種が、事務(デスクワーク、ホワイトカラー)であることです。有効求人倍率は、0.37倍にしか過ぎません。また生産工程に関する有効求人倍率も、0.55倍にしか過ぎません。人材不足は、一時的な復興需要関連のものであり、地元に根付いた産業部門の景気は、決して良くないことを暗示しています。これを見る限り、復興需要をさらなる過熱させることはやめて、地元に根付いた産業部門を中期的に応援していくことがより大事です。今こそ復興を機に、今までお付き合いのなかった外部の人材を取り込み、また内部の人材が外に出て交わり創造的な仕事を作っていく、その環境を各機関、各企業、各人が持っておくことが、望ましいのではないか。