いわき秀英中学校・高等学校にお邪魔しました。同校はいわき市で中高一貫教育を提供する私立中学校・高等学校の一つです。秀英高等部が設立される、2001年より前のいわき市には、公立高校が15校ありました。成績順に磐城高校(男子校)・磐城女子高校(女子校)・湯本高校(共学)等に、実質的に学力でヒエラルキー化されており、大学進学を目指したい生徒は、自分の中学の成績・順位を見てそれに合致する高校を受験していました。
なぜなら、公立高校の併願はできないため、滑り止めには私立高校を受験することになるわけですが、市内には私立高校が男子高と女子高が1校ずつしかなく、その2校は決して大学進学者が多いとはいえませんでした。このため、市内の上位県立高校を志望する生徒の滑り止め校は茨城県の茨城キリスト教学園を受験するか、中学浪人するなどの方法を取らざるを得ませんでした。実際、私が磐城高校を入学したときのクラスメートの1割、すなわち40人教室のうち、4-5人は1歳年上の中学浪人組でした。
その現状を打破すべく、地元有力者であった志賀利彦氏によって、開校となりました。志賀利彦氏は、受変電設備・設計・施工・技術管理等を業とする泉電設株式会社の代表取締役を務めたこともある企業経営者です。2013年には、念願の中高一貫校となりました。
沿革
2000年 学校法人いわき秀英学園設立、いわき秀英高等学校設置認可
2001年4月 いわき秀英高等学校開校
2013年4月 いわき秀英中学校開校
開学当初より進学対策を重視し、毎週土曜日の授業を実施。大手受験塾である河合塾のサテライト校も併設されています。学校では中高一貫により、中学校の1年・2年で中学校3年分の学習内容を学び、中学校3年と高校1年・2年の中間で高等学校3年間分の学習内容を終えてしまうそうです。そして高校3年は大学受験対策にあてることができます。この方式は、東京の私学でも一般的で、特段珍しいものではありませんが、いわきにおいては先駆的な試みのひとつです。
当日は、東京私学校教育研究所の清水氏をお招きして、「肯定からはじめよう 私学の持つ視点」として保護者・教員向けに講演をいただきました。清水氏は、世田谷にある中高一貫の女子校、鷗友学園の常務理事でもあります。こちらでは毎年東大合格者を輩出しており、中高一貫教育による学力の向上だけでなく、情操教育の重要性等を繰り返し、おっしゃっていました。
乳児の頃は決して肌を離さず、
幼児の頃は肌を離して決して手を離さず、
子どもの頃は手を離して決して目を離さず、
青年期には目を離して決して心を離さず という話です。
タワー棟上層部には、図書館(改装中)や実験室等がありました。泉ヶ丘ハイタウンのその10数階からの眺めは、素晴らしい。小名浜も一望できます。この建物は大手ゼネコンの大成建設が施工し、震災時にはヒビも入らなかったという逸話があります。ただ震災後は、一般教室として使用するのは控えているとのことでした。
開学の精神は、「大学進学」。それに対する批判も多いです。授業コマ数は多く、勉強時間が長すぎる、情操教育の時間が少ない、体育系のチーム部活動がない、詰め込み教育で自ら思考することが訓練されていない等の批判です。それらは、いわきにおいての私学の新しい試みに対する批判ともいえ、今後、どのように生徒の教育方法の舵を切っていくか注目していきたいと思います。