もっとも感性の合う作家のひとりである橘玲さんの新著です。「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」や「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法」が有名ですが、私は、10年前くらいに書かれた金融小説、「マネーロンダリング」 の大ファンです。先端的な金融知識はあまり公開されていなかった当時、金融知識・技術を惜しみなく駆使して、制度の不備や盲点を突いたこの小説は、あっと言わせたものでした。橘玲さんは、マスコミに一切登場しないことでも有名で、その点も私が好きなところです。

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<あらすじ>
シンガポールでもっとも成功した日本人金融コンサルタント北川がホテルから墜落死した。死んだ北川の妻・紫帆は現地に、高校の同級生・牧島とシンガポールへ赴く。紫帆はそこで北川の現地妻と息子の存在を知る。北川は1000億円を扱うファンドマネージャーだったが、政治家や会社社長など、数々の顧客のプライベートバンクの口座に10億円、50億円規模で穴を開けていた。背後に見え隠れする、日本の首領が仕組んだブラジルへの原子力発電施設輸出計画とそれを見込んだファンドとその失敗。紫帆と大物政治家の過去。大物フィクサーの影と蠢く謎の仕手グループ。そして起こった大物政治家秘書の暗殺。北川の死は自殺か、それとも殺人か。口座から消えた巨額の資金は、どこへ送られたのか。マネーロンダリング、ODAマネー、原発輸出計画、北朝鮮の核開発、仕手株集団、暗躍する政治家とヤクザ、名門銀行の秘密、と現実世界の話題がちりばめられています。
 
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主な舞台は、シンガポール。ラッフルズシティの由来や国の成り立ち、そして現在の街なかに著書はとても詳しい。3年間働いた自分よりも詳しいと思います。ストリート名やホテルも実在し、臨場感があります。それにしても著者の国際金融と税金の最新の知識の習得には、いつも驚かされます。主人公の古波蔵佑は、かつて国際金融で大稼ぎし若くして引退し、シニカルに世の中を見ながら、その知識を武器を世をわたっていく、そんな姿は、著者そのものの生き方なのではないかと感じました。