古代ローマに実際に生きた一級品の素敵な男達に魅せられた著者塩野七生さんの壮大な研究、『ローマ人の物語』のエッセンスが詰まっています。これが面白い!一気に読み切ってしまいました。千年続いた古代ローマの歴史に、謙虚に学びたいな、と。

国家の盛衰を決めるのは、何なのか。混迷の時代に生きる現代日本人にとって学ぶべき歴史の教訓とは何かを、ローマ人たちの成功と失敗を通じて語られる「文明の法則」の数々を通して教えてくれます。当時の小さな都市国家ローマは、ギリシャやカルタゴに比べて、資源も富もありませんでした。しかし「衆知を集める」という共和政の利点をフルに活用することによって、地中海世界を制覇しました。その後、勝者となったローマも共和制の「制度疲労」は避けることができなかった。この危機を乗り越えるべく、不世出の指導者カエサルが採った帝国方式、そしてその後継者はそれを受けついで「普遍帝国」を築きました。ローマは倒した相手国を滅ぼしたりせずに、むしろ同化させ、市民権を付与したり、積極的に人材登用する等、民族・宗教を乗り越えていき、歴史上唯一の1000年もの統治を続けることができました。
_SS500_
BC753年にロムルスが建国したローマ。BC509年、ユニウス・ブルータスによって王政は共和制へ移行。ここで執政官、元老院、市民集会の三権分立が確立。その後国家の要職を平民にも開放することで貴族と平民の対立の解消をはかる。試練は、BC264-BC146年のカルタゴ滅亡まで3次に渡るポエニ戦役。知将ハンニバルに苦しめられるが最終的にスキピオがカルタゴを打ち破り、ローマの領土が急拡大。地中海をわが海としたローマではあったが、逆にそれゆえに「制度疲労」を起こします。グラックス兄弟が改革に手をつけるも、守旧派の反対で挫折。ローマの再興はカエサルの登場を待たなければならなかった。終身執政官となったカエサルは、ローマを帝政とし寡頭政治を行います。しかし、そのカエサルもブルータスに暗殺され、以後、遺言により若いオクタヴィアヌス(アウグストゥス)が執政官となります。「敗者をも同化し」、その政体を1000年にわたり維持したのがローマ帝国であった。

付録として、著者が指導者を評価する基準が掲載されています。一番評価の高い指導者は「問題を把握し、的・味方を説得して、改革を実行した人」。次に評価が高いのは「問題を把握し、建設的な改革案を出すが、何らかの理由で挫折して、改革が実行できなかった人」。一番評価が低い指導者は、「問題は把握するが、建設的な改革案が出せず、実行もできなかった人」です。ペリクレス(ギリシャ統一のリーダー)、カエサル(ローマの不世出のリーダー)がすべての項目で満点ですが、ブルータス、クレオパトラ、ネロの評価はかなり低いです。ここには、現代のリーダーに必要とされる、「決断力」「実行力」「判断力」は含まれていません。何故なら、これらはリーダーが持っていて当然のことだからとのこと。

日本とローマを比較し、ローマの凄さを知りつつ、今の日本の民主政治とは一体何なのだろう?はたして民主政治が一番良い政治なのだろうか?といったことまで考えるようになります。著者は二点、背反する興味深いことを言っています。「現代日本が長い混迷時代から抜け出すためには、結局のところ、カエサルのような強力なリーダーが出てくるか否かにかかっている」と、「政治家にまずは思う存分に仕事をさせてみて、ダメならクビにしてしまう。そのくらいの気構えで政治家に仕事をさせてみたほうがいいのではないか」。ローマの歴史から国家盛衰の普遍化した法則を探り当てた著者は、日本の戦後の政治についてリーダー不在、改革が定着しない日本の現状を憂えています。