総合磐城共立病院は、目下、平成28年度中の本体工事完成に向かって、デザインビルドの発注契約に向けて進んでいます。設備が更新されることはプラスの面がありますが、当然マイナスの面もあります。ここで共立病院の建替えにあたって、重大な問題点を指摘しておきたいと思います。

1. 本体工事費の高騰(市民負担の増加)
2. 工事期間中の外来用駐車場がなくなる(通院が著しく不便)
3. 工事期間中の工事騒音と工事車両による粉じん(入院患者の環境悪化)
4. 建替期間中の病院経営の赤字拡大
5. 医療機器の予算が十分でない
6. さらなる土地買収費やシステム投資予算等が、343億円に含まれていない(さらに事業費拡大)
7. 建物は新しくなっても中身は一緒
8. 建設工事を発注手続を担当する委員会が、市民に非公開
9. 詳細設計の工数が省略されている
10. 将来の用途拡張性がない

それぞれ検討していきます。
1. 本体工事費の高騰
共立病院の建替計画のベースは、平成24年12月の基本計画です。当時の工事見積りは、226億円でした。
http://goo.gl/pDOLaL 
この見積り金額は平成25年まで変わらなかったのですが、平成26年2月の基本設計において、突然、323億円に訂正になりました。約5割のコストアップです。
http://goo.gl/J1Txbv
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このコストアップの主な要因は、建築設備工事費が86億円も増加していることと、当初見込んでいなかった造成工事費等を43億円、新規に見込んだことです。そもそも建替候補地は、広大な市有地でありアクセスに優れる中央台高久地区、小名浜金成地区、平上荒川地区等がありました。それらを総合評点方式で比較検討したのですが、結果は僅差でした。結局、それら30haを超える市有地を第一候補とせず、僅差で、狭い(7ha)現在地(内郷)を選んだ理由のひとつが、造成工事費がかからないため事業費が安いということでした。それが今回、あっさり反故にされています。小名浜金成地区、平上荒川地区ならば、将来の拡張性(放射能研究機関や医科大学とのリンク)の余地があることや、建替にあたっての工事騒音問題は発生しないだけに、非常に残念です。
http://goo.gl/ikymcT
 
当然、コストアップ分は病院事業債257億円という負債が原資になります。要は市民の負担が増加し、血税をもって償還していくことになります。市の通常時の一般会計の総額が1,200億円程度の1/4を占めるという巨額さです。一般の事業会社の売上の1/4を使って、本業でない投資を行うようなものと考えれば、イメージできるでしょうか。
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2. 工事期間中の外来用駐車場がなくなる
現在の病棟を運用しながら、新病院の建替え工事を行います。すなわち、新病院の敷地である現在の第3駐車場のみならず、工事車両のための用地として、現在600台分の外来用駐車場のほとんどがなくなります。工事期間は平成28年度中までですが、それから現病棟を取壊し、駐車場として整備するためには、さらに数年を要します。

これってスゴイことです。現在でも、連れてこられる病人のかなりの割合は、正面玄関入口まで自家用車を横付けにして、病人を下ろしてから駐車してます。今後は、それが不可能になります。また自ら運転して、通院してこられる方も、敷地外の駐車場に自家用車を停めて、シャトルバスを待ち、それに乗り換えて、徒歩で病院まで行くことになります。帰りも同様に、シャトルバスを待ち、それに乗って、敷地外駐車場まで行き、自家用車に乗り換えることになります。敷地外駐車場の距離にもよりますが、おそらく通院までに要する時間は、激増します。通院の利便性低下の影響は、工事開始から平成29年以降まで、ずっと続きます。

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3. 工事期間中の工事騒音と工事車両による粉じん
新病院は、現病院の東隣りに隣接して建設されます。13F建ての鉄筋コンクリートの建物の基礎を打つ等に建設作業には騒音がつきものです。また斜面を崩し、建設敷地の地ならしのためのブルドーザーや重機の騒音、粉じんが発生します。現病棟には工事期間中も引き続き入院患者が入っていますが、これら騒音が病状によい影響を与えないことは明白です。

4. 病院事業会計の赤字拡大
いまでも総合磐城共立病院は、一般会計からの赤字補填(10年間で170億円)をしなければ、経営がなりたちません。
http://www.mikito.biz/archives/33704463.html
それがさらに上記、通院の利便性低下による外来患者の流出と入院時の工事騒音を嫌う入院患者の流出により、収益性は著しく低下します。工事期間中のみならず、新病院稼働後も、平成34年度前後まで赤字が継続します。

5. 医療機器の予算が十分でない
建設コストに343億円も投じる割には、医療機器に投じる予算は20億円(当初は48億円だった)しかありません。結局、リース等で割高に調達せざるをえなくなってしまうことが容易に想像できます。これは当然ながら、将来の病院経営の収益圧迫要因のひとつです。

6. さらなる土地買収費やシステム投資予算等が、343億円に含まれていない
現在の、デザインビルドの対象は、建設工事費と土地造成費用です。実は、これにさらなる土地買収のコストや、病院の情報システム構築のコストは含まれていません。要は、343億円は仮の金額であり、さらに金額はつり上がるであろうということです。

7. 建物は新しくなっても中身は一緒
医療の質は、建物の新しさでは計れないことは周知の事実です。総合的なチーム医療の水準が医療の質を決めるといわれています。過去に140名在籍した共立病院は、現在115名の常勤医師しかおらず、25ある診療科のうち、6つの診療科が常勤医不在です。そして現在の診療科数・診療体制・経営体制が、そのまま横スライドで新しいハコモノに引き継がれます。

8. 建設工事を発注手続を担当する委員会が、市民に非公開
建設工事は、デザインビルド方式で発注されますが、その業者の選定基準及び選定過程は、デザインビルド事業者選定委員会で行うこととされています。その審議過程は、「非公開」とされており、400億円もの支出が密室で決定されようとしています。

<デザインビルドは、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/36563925.html

9. 詳細設計の工数が省略されている
通常、数百床の病院建設にあたっては、基本設計に1年、詳細設計に1年、合計2年を要します。どうして一般のオフィスビルに比べて設計に時間がかかるかというと、病院設備が複雑で、スタッフ・病人の効率的な動線確保、医療設備の配管取り回しの詳細設計に、工数がかかるためです。今回、デザインビルド方式により、建設工事と同時並行で詳細設計を行うことになっています。要は詳細設計がおざなりになってしまい、通常の方式に比べて、完成後に不具合が発生する可能性が高くなります。

10. 将来の用途拡張性がない
いわき市では医学部誘致と、ナショナルセンター(放射線医学総合研究所)誘致を目指したい。いずれも、広大な敷地が必要なことと、共立病院のような総合病院との連携が望ましいことから、隣接地に立地することがベストです。また経営的には医療と関連性の強い介護施設や医療者従事者教育施設も併設し一体運営したほうがよい。残念ながら、現在地の敷地規模(7ha)では、これら施設を隣接地に建設することができず、連携が限定されてものになってしまいます。

<いわき市に医学部を誘致は、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/35884943.html

こう考えてくると、400億円近くを投じて、建設作業員の確保が困難なこのタイミングで、将来も経常的な医業損失(市民負担)が発生する、診療科・診療体制・経営体制が変わらない、市民病院建設が本当に今、必要かという疑問が湧いてきます。ちなみにいわき市よりも医療水準が高いと巷でいわれている郡山市には、市民病院がなくすべて私立の病院です。建替えで確かにピカピカの病院になり、一市民として誇らしい気持ちはあるものの、それ本当に医療サービスの改善に結びつくのか、まだ私にはその答えが明確に見えていません。