マイクロ水力発電(小水力発電)は、大規模なダムを利用しないで行う小規模な水力発電のことです。いわき市の小川地区の農業用の江筋を利用した水力発電の実験が始まりました。これが実用化(広い意味での商業化)できれば、水力発電の設置箇所は無限に広がる可能性があります。

ある程度の水量があれば、基本的にどこにでも設置が可能ですが、今回は設置実験したのは、0.2㎥/秒の水量で、0.2KW(100W電球が2つ点灯可能)を発電する規模のものです。水の高低差はたった数十センチです。発電した電気を、夜間の街灯、もしくはイノシシ除けの電線に流す予定です。これを太陽光発電で行おうとすると、蓄電バッテリーが必要になるため、その点で水力発電は、24時間運用できるので、メリットになります。
 
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 これまで、水力発電が普及しなかった大きな理由は、河川を流れる水は公共のものであり、利用に当たっては、農業用水、水道用水、工業用水、水力発電などの目的ごとに規制や、いわゆる水利権の存在です。マイクロ水力発電は、あまり場所を選ばない(装置が比較的小さいため、ある程度の水量さえあれば設置が可能)ので、水利権がシンプルで関係者の合意が得やすい場所を探せるという特徴があります。このためマイクロ水力発電の未開発地は無限ともいえます。

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逆に欠点は、河川などには落ち葉やゴミ等が流れてくるので、その撤去等のメンテナンスが必要となることです。今回も落葉が詰まってしまい、掻き出す必要がありました。京都の小水力発電を見学させて頂いた際も、その朝晩の落葉掃除は必ずやっており、それがきちんとできるかどうかがひとつのポイントかもしれません。
 
<京都嵐山の小水力発電は、コチラ>
 http://www.mikito.biz/archives/26001079.html
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マイクロ水力発電は、設置時の工賃や機材のイニシャルコスト、メンテナンスにかかるランニングコストが比較的高く、採算性が低いと言われてきました。イニシャルだけでも4-5百万円といわれる設置コストも、今回の発電機及び制御盤の実証実験で、ほとんどの部品が汎用品(主に普及している太陽光発電の流用)で製作できることが分ったので、今後は、数分の一のコストで組み立てることも可能になってきます。この発見のインパクトは大きい。安価な発電ユニットを大量設置できれば、そしてさらにそのノウハウを他地域にシェアし、震災時のヘルプの恩返しができれば、いわきが再生可能エネルギーの拠点となる可能性も見えてきます。

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発電は直流で行いますが、整流や配電の都合から、交流に変換することになります。これらも基本的には汎用部品で対応可能です。

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最終的には、一般的なコンセントをつけて、これに電灯等を接続すればOKです。このマイクロ水力発電が、採算ベースに乗ってくると、電灯が引けないような山間部にも、水力発電により、防犯のための夜間街灯や、イノシシ除けの電線が張れることになり、その有用性が一気に高まります。これからの課題は、どの程度安定した運用ができるか、メンテナンスにどの程度手間ヒマがかかるか、要はメンテナンスコストがどうか、という点です。これは、実証実験を通じて、検証していくことになります。

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また水量が少ない場合に安定した電力が得られないことも考えられます。写真は水流の吸い込み口ですが、この程度の水量では、安定した発電には覚束ないとのこと。最低でもこの2倍くらいの水量・高さが欲しいです。逆に言えば、その程度で発電可能ということです。この感覚を得られたことも、大きい収穫です。

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水が高い位置から低い位置までの高低差の落下時の水流によって羽根車を回転させ発電を行うことで、電力としてエネルギーを回収することができます。運動エネルギーは、水量と落差の相乗効果ですから、それぞれを増やせば、(理論的には)正比例して、発電量を増やすことができます。

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