本日から、福岡市カワイイ区民になりました。私の区民番号は、46564。カワイイ区は福岡市が運営している「8番目の行政区」でバーチャルな区です。面積はゼロ平方キロメートルながら、人口は4.5万人を超える区です(住民票も発行されます)。もともとは、AKB篠田麻里子が、高島宗一郎福岡市長を表敬訪問した際の、ひょんなきっかけで出来た区なんです。
 
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本当の設立目的は、福岡市の魅力を「カワイイ」という切り口で発信し、地域振興につなげる目的、すなわちシティプロモーションです。プロジェクト全体は福岡市で情報発信を担当する市長室広報戦略課が担当しているとのこと。担当の係長(やはり、女性でした!)に、市役所内で、設立からこれまでの経過や、論点等のお話を伺ってきました。

カワイイの意味は、厳密には国語辞典に載っている意味ではなく、『愛すべき』や『心を和ませる』などの意味とと定義しており、女性のみならず、あらゆる人や動物、行動などについてもあてはまる言葉としているそうです。
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2012年に、当時AKBメンバーで福岡県出身の篠田麻里子を区長として始まった区は、当初は、登録の開始直後に登録者数が3万人を突破し、現在は(紆余曲折があって)区民が4万人超、広告効果は2.8億円だそうです。(広告効果だけで測るのは、一面に過ぎませんが)運営予算1千万円のプロジェクトとしては、一定の成功モデルといえるかもしれません。ただ、初めての試みなので、つまずきや反対意見、等があったことは事実です。これを、アナウンサー出身の高島宗一郎福岡市長があきらめずに、本来の目的(市全体のシティプロモーション)を貫き通したことで、現在に至っています。

初代は、AKBの篠田麻里子が、福岡を応援したいという気持ちから6ヶ月間無償で区長を務めましたが、多忙なため、実質的な区長活動ができませんでした。そのため結局半年だけで退任し、その後継者が決まらないという状態が半年も続いたそうです(その間、住民票の発行業務は、高島市長が代理執行)。そこで県内在住の在日カナダ人でブロガー、英会話講師のミカエラ・ブレスウェートさんの2代目起用となりました。ミカエラさんは、20代の女性で、日本語・英語(ネイティブ)とも流暢に話し、同時通訳も可能で、外人の視点を持ちながら、福岡に10年近く住み、福岡の魅力もよく知っており、情報発信力もあるだけに、最適の人材であることは間違いありません。
 
また、男女共同参画の観点から批判的意見が出されました。すなわち、「カワイイ区は男女差別を助長するものではないか」などの苦情が4件寄せられ、男女共同参画審議会でも委員から「男女共画の視点を欠いている」などの意見が出たそうです。さらに、市議会でも「市長が公金をもてあそんでいるという市民の声もある」と取り上げられたりしていますが、市執行部としては、それら意見を取り入れた上で、現在のオペレーションを行なっているそうです。

カワイイ区は区民に対して特別住民票を発行したり、区政だよりを配布するといった「行政サービス」を行っています。カワイイ区の区民登録手続きは公式サイト上で行われ、登録はニックネームとメールアドレスを登録するだけで無料で行う事ができます。福岡市民でなくとも可能で、現在は50%が福岡市民、25%が東京だそうです。市民には区民番号が与えられ、メールマガジン形式の「カワイイ区政だより」を受け取る事ができるそうです。

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カワイイ区は「カワイイ区特別住民票」を発行しており、特別住民票は福岡市役所一階の「情報プラザ」にて有料(300円)で発行しています。市内の協力店や施設で提示すると様々なイベント・サービスを受けることができる[16]。ちなみに、使われている用紙は、スカシや福岡市ロゴマークが入っている本物で、300円という値段も実際の他の区の住民票発行にかかる費用と同じです。

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そのほか、福岡市は民間の事業者・団体に届出・審査のうえでロゴの使用を認めているほか、趣旨に賛同する民間からの名義後援やタイアップを受け付けているそうです。今日は、そのサンプルとして、地元企業が作ったコーヒーバッグ(1杯ごとにドリップコーヒーを淹れることができるもの)をいただきました。実際に、地元の宿泊施設に備え付けてある無料コーヒーとして、販売開始するそうです。バーチャルがリアルと融合する、瞬間ですね。

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