磐城緑蔭中学校・高等学校は、いわき市平南白土にある男女共学の全日制校です。学校法人山崎学園が運営していますが、同学園は市内に磐城第一高等学校(女子校)も運営しているので、その姉妹校になります。緑蔭の中高一貫教育には、受験指導で有名な和田秀樹氏がアドバイザリーとなっています。具体的には、緑鐡(同氏の会社)の東大講師がテレビ会議のシステムで指導したり、カリキュラムの監修をしているそうです。この度、同校舎内で開催された同氏の講演会「中高一貫校で何を学ぶか」に伺いました。
 
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和田秀樹氏は、大阪府出身の受験アドバイザーとして有名です。そのほか、評論家、精神科医、大学教授、映画監督、小説家等の多彩な能力を持つ方です。自らの灘中・灘高・東大医学部出身の経験を活かして、講師が全員東大生という売りの「緑鐵受験指導ゼミナール」という受験指導会社の代表も務められています。
 
まず、中学受験をするということは、大学受験を目指すこととほぼ同義とした上で、なぜ今の日本で高学歴を目指すほうが個々の人生にとってプラスなのかについて、日本のおかれている環境から説明されました。第3次産業の進展、高付加価値の仕事、労働生産人口の減少、労働コストの低廉な国や学生リテラシーの高いとのグローバル競争を考えると、個々の人的資源をレベルアップすることが最善の一手であることは間違いありません。
 
その上で、高校と中学の学習内容の差を勘案すれば、中1中2の時に学習慣習をつけ、濃度の濃い学習をさせるべきだということを展開されました。生徒が身につけるべきは、①計算力、②記憶力と知識、③基本的リテラシー(数学・科学・読解力)、④学習習慣、とのこと。いずれも納得です。特に印象に残ったのが、②記憶力や知識は、覚えるコトが目的なのではなくて、覚えるチカラを身につけることだということです。これは私は「勉強」の本当の意味だと、常々思っていたことなので我が意を得たりです。

講演後、質疑応答の時間に、純粋に学力向上にあたっての(東京に比べての)いわきの課題を伺いました。①小学校6年次の学力レベルが低いこと、②勉強に対する習慣付けが低いこと、③学習に対する周囲環境(大人を含む)の切迫感が薄いこと、を挙げられました。実は私も、③について複数の高校教諭からも同様の話を聞いています。福島県の高校生の東大への進学者が、全国平均レベルであれば、50人が相当のところ、福島県からの2013年の東大合格者数は11人だそうです。何も東大進学だけが学力の全てではないことは承知していますが、有意義な指標のひとつだと思っています。その理由を聞くと③を挙げられる方が非常に多い。高学歴者の成功者が身近にいないことが遠因かもしれません。確かに市内で成功されている方の多くが、高学歴でなかったという事実もあります。確かに市内だけだったら、それでいいかもしれない。そう考えると両親が、子供にどう育って欲しいかというポリシーのような気がしています。子供には都会に出て研鑽し、自ら起業するか大企業内で切磋琢磨し、立身出世的な成長を望むか、市外から出ずに低廉な賃金で労働に甘んじ、両親のそばでのんびり暮らして欲しいか。いわきでは、意外に後者を望む家庭も相当程度、いらっしゃるのではないかと思うわけです。逆に前者を望む家庭は、後者といつまでも交流していては、朱に交われば赤くなる。そういう家庭のために、緑陰学園という選択肢があるのではないかと思いました。 

講演終了後に、著書「受験本番に勝つ 77の法則」という本に、著者サインをいただきました。
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<磐城緑蔭の沿革>
1963年 福島県磐城第二高等学校(私立男子校)創立。
2006年 二高としての生徒募集休止
2007年 磐城緑蔭中学校 開校
2010年 磐城緑蔭高等学校 開校

緑陰中高の校舎・体育館等は、旧二高の校舎をそのまま転用しています。1Fが会議室・IT教室、2Fが受付・教員室・ホール、3Fが中学校、4Fが高校です。
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高校は一学年一クラス編成、1クラス17名が在籍しています。通常、平日は8:35始業、15:00終業。土曜日は午前中だけ授業。その後クラブ活動を1.5時間やって帰宅するという生活パターンだそうです。国語・数学・英語は習熟度別授業を採用しており、αクラス(発展コース)とβ(基礎定着コース)に分けて授業を行うこともあるそうです。

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中学も一学年一クラス編成、中学一年生(1-1)は9名が在籍しています。教室が通常サイズだけに広く感じます。究極の少人数教育ともいえます。副校長先生によると、全校生徒約100名の顔と名前は完全に一致しているそうです。
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校舎は南白土の丘の中腹にあるため、平の街を一望することができます。絶景です。
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第2校舎は、技術室や理科室、音楽室等があります。木造2階建の校舎はタイムスリップしたような古く味わいがあります。
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 今時、完全に木製の床・手摺りは珍しいのではないでしょうか。床は経年ですり減り、何かの映画のセットのようです。
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旧磐城第二高等学校は、男子校で、ボクシング部の活動がさかんでした。かつては、細野悟という日本フェザー級王座を輩出したこともあります。ボクシング専用ジムとリングがありました。

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現在は、緑陰高校としてのボクシング部はないものの、他校生徒の練習等に使って頂いているそうです。また指導者は残っているので、その指導にあたっているとのこと。

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昨年度の大学合格実績がロビーに掲示されていました。昨年は学校開園後初、第1期の卒業生を生み出し、16人が巣立っていきました。国公立としては、東北大学・横浜国立大学・お茶の水大学・静岡大学の4校の合格者を出しました。第1期の合格実績としては、十分に評価すべきものと思います。

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注)写真は、緑陰中高様の撮影許可を受けています。