耐震改修促進法、正確には「不特定多数の者が利用する大規模な建築物等の耐震診断の実施の義務付け等について定める建築物の耐震改修の促進に関する法律」の一部を改正する法律が平成25年5月29日に公布されています。

対象は、階数3及び床面積の合計5,000㎡以上の病院、店舗、旅館等の不特定かつ多数の者が利用する建築物等(※)であって、耐震不明建築物であるものとする。
  ※・病院、店舗、旅館等:階数3及び床面積の合計5,000㎡以上
    ・幼稚園、保育所:      階数2及び床面積の合計1,500㎡以上
     ・小学校、中学校等:   階数2及び床面積の合計3,000㎡以上等

いわき市内では、大規模かつ不特定多数が利用する建物が、病院10、店舗3、旅館等7、集会所4、小中学校12、老人ホーム5 計37件が該当しています。この37件のうち、22件が耐震診断を受けており、22件のうち、13件が耐震補強が必要と認定されたものの、耐震工事未実施となっています。なお、その他の15件は耐震診断自体を受けていません。
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確かに耐震診断を受けるべきですし、耐震工事が必要となれば、早急に耐震工事すべきなのは自明です。しかし、 そこには多額のお金がかかる。耐震診断そのものは、10-数十万円で済みますし、促進事業で自己負担の軽減が図られています。問題はその先です。もし耐震工事が必要と診断されると、規模にもよりますが数百万円-数千万円の耐震化工事が求められます。繰り返しますが、工事自体はやったほうがよい、やるべきなのは自明なのですが、経済行為として成り立つのかという課題は避けて通れません。いくら理想を掲げても、現実的に進まなければ法の趣旨が達成されません。

耐震診断のIs数値自体は、技術的に確立されきったものではありませんし、建物の形状等による人の判断が介在する等もあり、唯一絶対のものではありません。それに基づいて一律に、既存建物の改修を、所有者の自己負担で求めるのには、相当無理があると思っています。大震災での教訓のとおり、予防に完璧はありませんし、諸行無常、万物流転は世の常だという事実は動かしようがありません。命だけは助かるような、緊急避難レベルでの耐震予防措置としての、コスト負担の軽い耐震工事でなければ、「角を矯めて牛を殺す」 ことになりかねないと思っています。その折り合いをつけ、どうコスト負担の軽い技術開発をしていくかが、全国レベルで耐震化率を上げるためのキーでしょう。