いわき市立磐城総合共立病院の現在の建物は、今年度に3億2,300万円を投じて耐震化工事が完了しています。しかしながら、市立磐城総合共立病院の建替え(平成28年度を目途)に伴い、せっかく耐震工事が完了した現病院建物が解体撤去されることになりそうです。執行部回答によると、中央病棟や外来棟などの主要な施設について、平成28年度内の本体完成後、順次、現在の病院建物は解体工事に着手する予定としているそうです。

303d8c97

仮に平成29年には現在の建物は役割を終えて取り壊されるとすると、耐震化工事費に投じられた3億円余りは純粋に5年間分だけのための支出になります。国・県の負担分が大きいからといって、詰まるところ、われわれ国民の税金から支出されることには変わりなく、復旧・復興の名のもとに、新病院建設との重複投資が行われることに、違和感を感じる市民は多いと思います。単にもったいない、ということだけでなく、地方自治法第2条第14項には、地方公共団体は、その事務を処理するに当っては、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない、と規定されており、当該支出の費用対効果について疑問を禁じ得ません。

地域医療再生基金の補助金73億円は、確かに病院建替えの原資として有効なのは間違いありません。しかし、現病院経営も過去10年間、200億円もの医業純損失を計上し続けており、このままの病院経営を続けることは、かつて補助金紐付きのハコモノを造って、後年度にのしかかってくる重い固定費負担で苦しむ先例と同じではないかとの声も聞こえてきています。

これまで、新病院建設の検討過程は、いわき市新病院基本構想において新病院建設用地の検討がなされ、新病院建設に係る基本構想づくり懇談会による提言があり、また病院内部で新病院建設検討委員会、新病院建設作業部会でさらなる検討がなされてきました。問題は、その検討の経過や検討内容は、クローズの場であり、全く一般市民の知りえるところではなかったことです。

新病院建設のタイミングで、広く市民のための病院ということを鑑みれば、公開の有識者会議を設け広く市民の意見を聴取した上で、少なくとも以下の3点で、市民との合意形成を図るべきだと思います。

1. 市民病院のありかた(大赤字が原則の政策医療をそのまま続けるか、それとの市民の医療ニーズが大きい救命救急や高度医療に医療資源を振り向けるか)
2. 病院経営(予算制度のがんじがらめの市経営を続けるか、自由で機動的な経営により質の高い医療を目指して内部留保を積み上げるか)
3. 新病院建設予定地(敷地拡張性のない現在地にするか、敷地規模3-10倍の中央台、小名浜金成、21世紀の森等を検討するか)
 
どうも1-3の問題は、すでに議論済みという空気を市役所及び議会内でも感じられます。せっかく補助金がついたのだから、四の五の言わず、建設を進めなくてはならないという声を聞きます。一方、巷間ではまったく議論済みでないことも肌で感じています。本当に官主導で、補助金がつくからという理由を旗印に、ちゃくちゃくと建設が進めてよいのか。新しい市民病院は、市民の税金で作られるわけですから、市民の市民による市民のための病院であるべきです。これまでの経営で医業純損失は、10年間で200億円の赤字で、税金で補填を続けてきました。これからの新病院もそれを継続するのでしょうか。経営がうまくいかなくなったときは、(市役所や市長、議会の誰もが責任をとるわけではなく)これまでどおり、納税者が自ら責任をとらざるを得ません。