一般質問
5番 失敗の本質 吉田実貴人
 
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http://www.youtube.com/watch?v=lx5PPWXyZ1c

10/1から独立会派、失敗の本質として活動を開始させて頂いております。この名前の由来は、野中郁次郎が編んだ同名の組織論の本の表題からであります。BBCが毎年行っている国別世論調査の結果によれば、日本は昨年「世界に対して最も良い影響を与えている国」となりました。聖徳太子が制定した17条憲法の第1条どおり、和を以て貴しとなす、みんなで協力して成し遂げる国民性は素晴らしいことだと思います。一方で、白州次郎、すなわち吉田茂の懐刀といわれ、ダグラスマッカーサーをしかりつけた男に言わせれば、「プリンシパルのない日本」であり、白州次郎の書いた、日本人の本質をズバリと突く痛快な叱責の本をお読みになった方も多いのではないでしょうか。
 野中郁次郎が編んだ失敗の本質は、そのような日本人の特性を綿密な調査で分析したものであります。日本が70 年前に経験した太平洋戦争になぜ日本が負けたのかを、単に物量の差や一部のリーダーの誤判断のせいにして片付けることなく、そうした誤判断を許容した日本の組織の特性を明らかにすることで、戦後の組織一般に継承された日本特有の組織のあり方を分析しています。私は日本でうまくいっていない施策や事象の多くが、この著書で説明が付くと思ってやみません。誤解を恐れずにこの本の言っていることをまとめると、①目先の成功にとらわれ本質やゴールに向かっての解決が後回しになること、②過去の先例や成功体験にとらわれ、状況が一変しても全く新しい発想に目が向かないこと、そして③論理的な議論ができない組織の制度と風土です。現代の日本人は、太平洋戦争で亡くなった200 万人の戦死者、英霊の上に成り立っており、私は謙虚にその経験に学びたいと思います。そうでなければ子孫として彼ら先人の行動に申し訳が立たないと思っています。私は、過去の歴史や先達の経験から学ぶことを、自分に戒めた上で行動していきたい、との思いから会派の名称と致しました。
 逆に言えば、弱点はすでに分っているのですから、それを踏まえて行動すれば、隣人と協働作業で共に汗をかき、技術を一生懸命研ぎ澄ましていく日本の国民性は世界最強といったら言い過ぎでしょうか。ともかく素晴らしい人的資源は、少子高齢化や人口減少、国民総生産高GDPの減少といった統計数値だけでははかり得ない、潜在的な力が眠っている訳で、これこそが国力の源泉、いわき復興の源泉ではないかと考えておるところであります。
 
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それでは通告順に従って一般質問に移ります。まずはそれに先立ち、震災後、限られた医療資源の中で献身的に医療現場で働いて下さっている、いわき市内の医療関係者の方に心から感謝と崇敬の気持ちをお伝えしたいと思います。私の母はかつて長期間、磐城共立病院に入院し、お世話になりました。私自身、かつての共立病院には愛着がありますし、老朽化した病院施設の機能更新に賛成の立場であります。

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http://www.youtube.com/watch?v=4QFuLBsd8sY

1. 医療問題について
(1)市立磐城総合共立病院が平成28年度を目途に建替え予定と伺っております。これに伴い現病院建物が解体撤去されることになりますが、その解体時期を伺います。


(執行部回答)新病院建設に係る工事期間中におきましては、現在の診療機能を切れ目なく継続させることとしております
。このため、既存施設につきましては、先行して解体することが可能な一部の施設を除き、中央病棟や外来棟などの主要な施設について、平成28年度内の本体完成後、順次、解体工事に着手する予定としており、最終的な完了には数年程度を要するものと見込んでおります。 


現在の病院建物は、今年度に決算確定ベースで3億2,300万円を投じて耐震化工事が完了しております。新病院は平成28年度を目途に建替えされると伺っておりますので、仮に平成29年には現在の建物は役割を終えて取り壊されるとすると、耐震化工事費に投じられた3億円余りは純粋に5年間分だけのための支出になります。国・県の負担分が大きいからといって、詰まるところ、われわれ国民の税金から支出されることには変わりなく、復旧・復興の名のもとに、新病院建設との重複投資が行われることに、違和感を感じる市民は多いと思います。単にもったいない、ということだけでなく、地方自治法第2条第14項には、地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない、と規定されており、当該支出の費用対効果について疑問を禁じ得ません。
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(2)10月議会の質疑で、私は、効果的な医師確保策の実施により、市としていつまでに何人確保したいかの目標を伺いました。厚生労働省の平成22年の医師・歯科医師・薬剤師調査によれば、本市の人口10万人あたりの医療施設従事者数は、160人であり、全国平均219人、県平均183人を大きく下回っている状況です。なお、東京都285人、京都府286と比べると、ざっくりいって、いわき市は約半分の水準ということになります。いずれにせよ仮に全国平均219人とのいわき市との乖離幅59人を埋めるためには、絶対数で200人近くの医師数がいわき市内で不足している状況にあります。昨今、病院が混雑しており待ち時間が長いように感じられているのは、雰囲気だけなく、医師数というボトルネックにより、医療サービスの量が限定されているという事実があります。
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 また10月議会で私は、医師不足解消のため市の取組みを質疑させていただきました。それに対していただいた回答は、医療の確保については、国が基本的な方針を定め、県が医療計画を定めるため、一自治体のみで対応することは困難なため、国・県と緊密な連携を図っていくというものでした。しかしながら、全国自治体病院開設者協議会会員施設の必要求人数調査によれば、現員に加えてさらに必要な求人数は、現員100人に対し18人の医師が不足しているという結果がすでに出されており、全国的に医師不足の状態であります。特に、同調査によれば福島県は現員100人に対し34名が不足となっています。さらに医師臨床マッチング協議会の資料によりますと、今年度の福島県立医科大学附属病院の研修医マッチ件数が12人にとどまり、41人定員の3割にも満たない充足率となっております。これら踏まえると国・県にも十分な医師を派遣できる余裕はなく、国や県に医師招聘を依存するだけでは、残念ながら医師数充足への道のりは難しく、やはり市独自の医師招聘の活動が中心にならざるをえません。またかつての医局制度が崩壊した今、研修医や指導医が勤務先を自由意思で選択できるようになった結果、上からの命令や指令で医師を配置することが現実的でなくなってきております。仮にそうしたとしても、医師の自発的なキャリアプランに沿ったものでなくては、所詮短期的なものであって、長くは続かないものです。医局制度が崩壊した今、ひとことでいえば医師にとって勤務地として魅力的か、勤務先として魅力的な病院であるかどうかが肝となるのは自明であります。
 これまで、勤務医不足に対してさまざまな施策を打たれてきました。いわき出身の医大進学者に対する奨学金制度、勤務医サーチ担当者の配置、大学への寄付講座、東北大学大学院との提携講座等、これまでさまざまな施策がなされてきましたが、それらの施策実施の結果として、平成17年度には共立病院に141名所属していた医師が、現在は嘱託も含めて約110名と約30名減少になっております。

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 野中郁次郎が編んだ失敗の本質には、戦略の失敗は戦術で補えない、という言葉があります。戦略とは、いかに目標達成につながる勝利を選ぶかを考えることであり、いくら施策、戦術に工夫を凝らしてもゴールに直接つながらないということであります。
 いろいろな方々にヒアリングすると、さまざまの手は打ってきたものの、現状の枠組みでは考えられる手は出し尽くした感があるそうです。新病院建設が切り札だとの見方もありますが、知人の医師らに聞きますと、医師が次の病院に魅力を感じ転職する決め手となるのは、医師としてどのように技術的なスキルアップができるか、また研究等に対するフレキシブルな支援、医師に対する感謝の伝え方などだといいます。そこには職場施設のピカピカ度というのは、最上位には入ってこないわけです。もちろん病院設備が新しいことに超したことはありませんが、新しいものも時が経てば古くなります。新病院建設によって医師が集まると考えるのは、あまりに無邪気です。楽観的といわざるを得ません。再度の野中郁次郎の失敗の本質からの引用で恐縮ですが、日本人には一つの小さな正論からその場のムードを染め上げてしまい、厳しい現実に直面すると目を背け、こうであってほしいという希望的観測に心理依存する傾向があるとのことです。まさに医師招聘の手が出し尽くされ、新病院建設に心理依存したいというのは、これに重なって見えます。
 
 先日開催された地域医療再生フォーラムにおいて、青森県八戸市立市民病院救命センターの今明秀医師にお話を伺う機会がありました。八戸市は、新幹線もない田舎、近くに医科大学もありません。そんな悪条件の中で、今年度の八戸市立市民病院卒後臨床研修プログラムでは研修医のフルマッチを達成し、平成21年度には病院機能評価の救急医療機能分野で4項目中3項目に評点5、国内で最高点を獲得したそうです。いわき市よりも市の人口が10万人近く少ないにもかかわらず、救命救急医17名を擁し、共立病院の救命救急医4名体制からすると、羨ましい限りです。今医師いわく、医師不足は地方ということが原因ではない、と断言されています。いわく、まず日本の唯一・頂点・先駆者としての病院の実績を残し、それを商品として精力的に、臨床現場から今医師が自ら広報し、学生や研修医が読む雑誌への多数の論文投稿、研修医向けの救急講習会の全国展開等により、病院自体の魅力度を上げる努力を継続的に行っているそうです。いわき市では救急は、医師にとってはつらい、病院にとってはもうからない、患者にとっては搬送に時間がかかる、と3重苦の悪循環に陥っています。そのソリューションのひとつが、八戸の取組みにあるのではないでしょうか。

 また共立病院は、医師診療マッチング協議会の資料によれば、今年度の研修医の募集定員14人中7人のみのマッチ、充足率は50%で、全国平均を大きく下回っています。過去においても平成23年度が2人で充足率14%、平成24年度が4人で充足率29%となっています。一方、本県の南相馬市立総合病院は、今年度において研修医募集のフルマッチを達成し、常勤医師数においても震災後に激減してしまった医師数が、現在では震災前の水準を上回る人数の医師が勤務しており、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いです。どうして、新幹線はない、東京から来るには福島市まで新幹線で来てそこから車で1時間半もかかるような不便な地域で、かつ福島第一原発がわずか20数キロメール先に位置するような、非常に不利な条件にもかかわらず医師招聘ができたのでしょうか。南相馬市立総合病院は、積極的に東京大学や関東の私立大学、そして優良経営で有名な亀田総合病院との人的なネットワークをフルに活かしています。そして、謙虚に医師派遣等の支援を受け、現在では互いにWIN-WINの関係を構築しています。この医師の中には、震災後、獨協大学准教授の職を辞して自ら飛び込んだ小鷹昌明医師や、積極的に南相馬市民向けの放射線知識習得の講習会を開催し、ネットで大量の医療関連の情報発信をしている、東京大学の坪倉正治医師が含まれます。小鷹医師の著書、「原発に一番近い病院」から引用させていただきますと、南相馬市立総合病院では楽しめる医療を学ぶことができ、そして社会を良くしていくことの醍醐味を感じることができることが魅力だそうです。余談ですが、彼らの活動が周辺に影響を与え、直接・間接的なバックアップにより県立相馬高等学校から12年ぶりの東京大学合格者を輩出したと聞いております。このような南相馬での取組みを他山の石としてもよいのではないでしょうか。謙虚に医師招聘に成功している先駆者達の知恵に学ぶことがあってもよいのではないでしょうか。

 また、前市長の時代から国の医療機関としてのナショナルセンター誘致活動が進んでいると伺っております。一方、報道によれば1979年の琉球大学を最後に30年間以上もなかった医学部新設が認められるようです。安倍晋三首相が、宮城県知事の要請を受け、復興支援のために東北地方に医学部を新設するよう下村博文文部科学相に検討を指示したとのこと。まだ確定していないようですが、その筆頭候補が仙台市の仙台厚生病院です。なぜ、仙台厚生病院なのか?ひとことでいえば、自治体首長の熱い思い、病院経営者の地域医療にかける情熱と、そしてこれまで病院経営で優良な財政状態を作り上げてきたという3点です。
仙台厚生病院は現在、病床数は386床、医師数は95名の中規模病院ですが、かつては破産の危機に瀕したこともあったそうです。目黒泰一郎氏が理事長に就任してからは、総花的な総合病院から脱却し、循環器、呼吸器、消化器の診療を専門とする紹介型、急性期型病院に転換することによって経営の改善に成功したそうです。誰もが認める東北のトップである東北大学病院と通りを隔てて向いに立地するにもかかわらず、驚くことに、この3分野に関しては、東北大学病院をもしのぐほどの患者数とのことです。狭心症や心筋梗塞の手術件数では東北地方の病院として、最多のうちのひとつだそうです。

 医学部新設を進める理由は、東北地方の医師不足の現状からです。理事長はこう言っているそうです。「東日本大震災前から医師数が絶対的に不足しています。それが震災後、さらに深刻になりました。福島の原発事故の影響で、働き盛りの若い医師達が自分の子供の健康を考えて、福島だけでなく東北を後にしています。何としてでも医師の数を増やさなければ東北の復興はありません。それ以前に、医療過疎の状況を直さなければ、郷土の発展もありません」。私も、まったく同感であります。
昨年2月、東北3県沿岸部の16自治体の市長全員が一致して、東北での医学新設を政府に要望しました。現在、医師不足の病院勤務医は、泊まり明けも夕方まで勤務し、自宅に戻ってもオンコールという緊急呼出しを受けるのが当然の仕組みになっているそうです。また緊急呼び出しにいつでも備えておかなければならず、呼び出しを受けたらすぐに病院に駆けつけることとなっているので、病院の近くに住むのが通例になっているそうです。医師数が十分でなく、交代要員がいなければ、休日も緊張感を強いられ、真面目な医師ほど気の休まる間もない過酷な労働環境になってしまいます。度を超えると自らの健康を害するか、適当に手を抜くしかないということになりかねないわけです。
 
 しかしながら、少なくとも同じ部局に3人の医師がいれば、それぞれ役割分担し、支え合うことができます。すなわち3日に1回は完全休養できますし、定期的な医学学会に参加し研鑽を積むことができます。仙台厚生病院ではこれを忠実に実行しているそうです。先輩方がそのような仕組みで働き、自分の専門性を高めながら医療に従事し、また高給を使って仙台市内に立派な家を建て、子供達に高水準の教育を受けさせ定住する姿を見て、後輩も仙台厚生病院に入ろうとする動機付けとなるそうです。そしてそんな雰囲気に惹かれてアメリカから沖縄まで、全国から意気に感じた医師が集まっているそうです。
 
 ただ、新しく医学部を作るには、大学と大学病院、そして巨額のオカネが必要です。そこで、仙台厚生病院は、病院自体をある大学に寄付した上で大学付属病院とし、座学を大学の教室で行い、医学部設置に必要な校舎だけを作ることにしたそうです。それでも校舎や実習施設などの医学部本体を作り教授等を招聘するのに、約200億円が必要とのこと。まずは準備資金のうち多くを、経営実態な優良な仙台厚生病院の内部留保から拠出すると伝えられています。
 
 この事例からいえることは、今回の医学部新設申請は、ぽっとでの思いつきでたまたまできたものではなく、自治体首長の熱い思い、地域医療の充実にかける病院経営者の思い、そしてそれを支える優良な病院経営があったことが前提だったということです。そこで伺います。清水市長は、医学部を含む医療従事者養成機関を何としてもいわきに誘致するという、自治体首長として熱い思いをお持ちかどうか伺います。

(執行部回答)ふるさといわきの力強い復興と再生を果たすためには、医療の充実は極めて重要でありますことから、医療分野における課題、すなわち医師や看護師などの確保及び救急医療体制に強化に向けて積極的に取り組む必要があると考えております
 本市に医療従事者養成機関が設置された場合は、就学機会の拡充、人材育成、更には地域経済に貢献することとなる一方、相当数の指導教官を含めた専門スタッフを確保するなどの課題もあると認識しております。
 このことから、今後必要に応じて、市内外の関係機関等と協議を行うなど、検討を進めて参りたいと考えております。 

共立病院の経営状態を過去10年間のいわき市病院事業会計決算書をすべてあたってみました。これによると、医業収益から医業費用を差し引いた、純粋な医療行為の結果である医業純損益ベースでは、平成15年度が14.5億円の赤字、16年度が15.6億円の赤字、17年度が14.0億円の赤字、18年度が18.5億円の赤字、19年度が26.9億円の赤字、20年度が28.6億円の赤字、平成21年度が27.7億円の赤字、22年度が19.0億円の赤字、23年度が19.4億円の赤字、24年度が5.4億円の赤字、そして平成25年度が当初予算ベースで14.0億円の赤字となっており、平成16年度から直近までの10年間の累積赤字が、約200億円になります。これはちょうど新病院建設コストに匹敵する金額であります。10年間の赤字で病院建設一つ分の金額であります。
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 なぜこれまで見過ごされてきたのでしょうか。その理由は、開示されてきた病院事業会計には、毎年10億円を越える一般会計からの繰入、いわゆる赤字補填がされていたためで、この原資は、国民の血税です。このような巨額な出血が続いた要因は、限られた医療資源を政策医療に投入してきたということに尽きます。これまで逓増的な人口増、税収増が見込まれた時代においては許容されてきましたが、今後、人口減少、国の厳しい歳出予算を鑑みれば、既存の一般会計からの繰入補填は持続的でない仕組みであることは明らかです。10年後の市の財政を考えれば、赤字補填に頼らない病院経営が必要であります。先日の病院経営者が集まる会で、総務省の準公営企業室の方とお話しする機会がありました。総務省準公営企業室は、地方交付税交付金を通じて自治体病院経営を支援する部署であります。いわく、国の歳出予算状況が逼迫していることを引き合いに出され、地域医療の質はもちろんだが、病院の採算をとっていくことを持続可能性の観点から真剣に考えて欲しいと話しておられました。雑駁な言い方をすれば、建替える新病院は今後40年間使う予定ですが、税金からの補填に頼らずにきちんと採算を考えていかなくてはならないということです。新病院のあり方として、市民はたとえ赤字であっても政策医療を求めるのか、そしてそれが持続的に提供しうるのかどうかを、広く市民も交えた公開の場で議論し、市民との合意形成を図るべきと考えますが、お考えをお伺いします。

(執行部回答)政策的医療につきましては、各種法律又は社会的要素を背景に行政の関与が要請される医療分野とされており、平成24年3月に策定した新病院基本構想の中で、感染症、結核、移植及び精神の各医療分野について位置づけられたものであります。
 これらの医療分野は、いずれも当院で取り組んでいる医療分野であり、市民各界各層で構成する基本構想づくり懇談会において、市内及び浜通り地区の医療提供の実情などを踏まえ、新病院完成後も引き続き担うべき医療分野とされたものであります。

 共立病院は数え方にもよりますが、いただいた資料によりますと、全部で32の診療科があります。そのうち所属医師がゼロの科が6科、1人医師体制の科が7科あります。その結果、共立病院表玄関の設置看板によれば、新規外来を受け付けない等の診療対象や時間に制限のある科は、11科となっています。いうなれば標榜している科のうち約1/3が片肺状態のわけで、市民にとって、質量ともに満足できる医療サービスが提供されているとはいえません。仙台厚生病院の事例でも紹介させていただきましたとおり、診療科を絞ることにより、医師のローテーションと医療の質を充実させた事例があります。医師にとって学会出席等の研究時間が取りやすくなるだけでなく、患者にとっても夜勤明けで疲れ切った医師に診療してもらうより、体力気力知力が充実した医師に診療していただいたほうがよいのは明らかです。なお、臨床指標による大学病院の医療の質・安全・患者満足度に関する調査という資料によれば、大学病院における薬の誤投与率は100件中2.3件、輸液の誤注入率は100人中1.4件という調査結果が出ています。このように人が携わる行為に完璧はないわけですが、医師のひとりひとり忙しさの軽減は、このような事故率の低減にも大きく関わってくると思います。
共立病院は平成28年度建替え予定ですが、数年後の平成30年度に近隣の福島労災病院の建て替え計画があるやに聞いています。医療サービスの量が拡大することは、市民にとって朗報ではありますが、内科や外科等の基幹となる診療科はともかく、重複する多数の診療科がお隣の病院に存在することは、市民にとってメリットを感じにくいと思います。逆に複数の医師がいずれかの病院に集中して所属していれば、市民にとって待ち時間の短縮・診療時間の拡大・複数医師による診療等、多くのメリットがあります。いわき市新病院基本構想においても、いわき医療圏における各医療機関の役割分担を目指すことが明確にうたわれ、市民アンケートでも新病院に求めるものは、高い専門性、そして高度医療・救急医療の回答が多かったと伺っております。そこで福島労災病院と重複している診療科の統合の可能性について、ご所見を伺います。

(執行部回答)独立行政法人労働者健康福祉機構福島労災病院と当院とは、これまで、それぞれが培ってきた病院独自の特色を活かしながら連携を図っているところであります。平成23年度は、延べ631件、24年度は、延べ796件、25年度は、10月末時点で、延べ468件にのぼる患者さんの紹介、逆紹介を行っております。
 新病院における医療機能を発揮するためには、診療機能に応じて、地域の医療機関と患者さんの紹介、逆紹介を行うなど、一定の役割分担を行っていくことが重要でありますことから、今後も引き続き、そうした関係の構築に努めて参りたいと考えております。 

現在、東北大・福島医大との人的なコネクションは平病院事業管理者がご担当、病院内の医療行為全体は、樋渡病院長という役割と伺っております。病院事業管理者におかれましては、東北大及び福島医大の両方で教鞭をとってこられた経験そして研究実績、人的ネットワークをお持ちで、病院長におかれましては、東北大学で要職をお勤めになる等の実績は申し分なく、まさに余人を持って変え難い方々と推察致します。しかしながら、仙台のご自宅から週に3回、出張ベースで出勤される82歳の病院管理者に、医師招聘もやっていただきかつ、全体の病院経営・戦略策定・実行までご担当いただくのは、どう考えても無理があることは明白です。まずは民間病院で採算管理や経営・戦略策定・実行の経験を持つ専門家チームを上級職として登用し、病院事業管理者の直轄スタッフとして配置し機動的な経営の舵取りを行うべきと考えます。本来的には、共立病院を市のがんじがらめの予算制度の呪縛から解き放ってあげて、官僚的でない、機動的かつ効果的な質の高い地域医療を実現できる病院運営をすべきであります。
いわき市新病院建設に係る基本構想づくり懇談会の提言書において、経営形態を考えるにあたっては、新病院が地域において必要な医療を安定的かつ持続的に提供することができること、また様々な環境の変化に機動性をもって対応でき経営基盤の健全性と安定性の確保が期待できること、を前提として最適な手法を見い出していくべき、とされています。そしてその経営形態として、民間譲渡・独立行政法人・指定管理者制度・地方公営企業法の全部適用・地方公営企業法の一部適用の5つが提示されています。そこで新病院建て替え時期を迎えた今こそ、新病院のあり方として、どのような経営形態が、市民が求める医療サービスの質量にふさわしいか、そしてそれが持続的に継続できるか否かを、広く市民も交えた公開の場で、市民との合意形成を図るべきと考えますが、ご所見をお伺いします。

(執行部回答)共立病院の経営形態につきましては、当面、病院事業管理者のもと、地方公営企業法の全部適用を維持し、更なる経営改善を進めながら新病院建設に取り組むこととしたところであり、新病院建設後の経営状況等を的確に見極めたうえで、見直しの前提となる環境条件や必要性の有無等について判断して参りたいと考えております。 

市民病院は経営の結果は、すべて納税者に跳ね返ってきます。ですから市民病院は、市民の、市民による、市民のための病院でなくてはなりません。再度、市民との合意形成の場を設けることを強く要望します。

現在見込まれる新病院の本体工事費は約227億円程度と伺っております。これから地域医療再生基金の補助金73億円を差し引くと差額153億円が、いわき市の予算から支出予定なのだと試算できます。しかしながら、現病院を運営しながらの同敷地内での新病院の新築工事には相当の困難が予想され、入院患者への防音対策や近隣対策費、追加の土地取得費用等を含めれば、予定金額に収まらないおそれがあります。追加費用が多大となるようであれば、これまで説明されてきた現行建替計画の前提条件が崩壊し、残念ですが計画をいったんリセットとせざるをえないかもしれません。そこで本体工事費227億円を除いて、追加で最大いくらの支出を見込んでいるか、伺います。

(執行部回答)新病院建設の概算事業費につきましては、諸条件の確定によって変動することとしておりましたが、基本計画の中で一定の試算を行い、造成工事費や進入路整備等の不確定な事業費を除き、約227億円としたところであります
 しかしながら、その後の変動要因として、診療機能の更なる充実に向けた施設構成の調整を行ったほか、消費税アップへの対応、さらには、特に被災地において深刻な状況となっている資材不足や建設作業員の不足への対応が必要となっている状況から、コスト削減の努力をしておりますものの、事業費の増額は避けられないものと考えております。 

平成24年3月の新病院計画の提言書から、すでに1年9ヶ月が経過しており、この段階で工事金額を市民に伝えないというのは、非常に疑問に思います。早期の見込金額の開示を求めます。

現在の病院の外来用の駐車場は、556台と伺っています。工事期間中には、新病院予定建設用地や工事資材置き場、工事車両の通行・駐車に相当程度、既存の外来用駐車場が占有されてしまいます。工事期間は2年に渡って長期間になるため、外来用駐車場が十分に使えないことは、外来患者の深刻な通院危機となることが予想されます。工事期間中に外来用駐車場が何台確保できるのか伺います。

(執行部回答)現時点で、工事期間中の外来用駐車台数について、定量的にお答えすることは困難でありますが、工事期間中は、現在の駐車スペースが大きく低減することになりますことから、可能な限り駐車スペースが確保できるよう、現在、施行区域の調整や職員駐車場の活用方法をはじめ、敷地外の臨時駐車場確保に向けた関係者との調整、さらには、診療予約時間の平準化等の対応策について、総合的に検討を行っているところであります。 

通院患者は趣味やレジャー、暇に任せて通院している訳ではなく、生命の危機や運動能力の回復という深刻な状況を回避するために、すがる思いで通院するのです。建替計画は数年前からあるわけで、その通院患者に対し、通院できるかどうかは、工事をやってみないと分りませんという回答はあまりに冷酷であります。市民の方々からは、補助金がつくからという理由だけでこのまま市民不在のままなし崩し的に建替え工事を進めるのは、かつて補助金紐付きのハコモノを造って、後年度にのしかかってくる重い固定費負担で苦しむ先例と同じではないかとの声も聞こえてきております。現在の外来用駐車場556台から激減すると伺っておりますが、最大いくつ減るのでしょうか、工事期間中に確保できる駐車台数を早急に市民に公開することを要望して次の質問に移ります。

ナショナルセンターや医大、医療従事者養成機関をいわきに誘致するという動きがあります。その際には新病院の隣接地が効果的という意見聞かれますが、ナショナルセンターや医大、医療従事者養成機関をいわきに誘致する場合、新病院敷地内にこのような施設を追加的に建設できる敷地の余裕はあるのか、伺います。

(執行部回答)新病院の敷地内には、これまでにない、バスの乗り入れが可能な歩・車分離型の通路や収容台数の大きい駐車場を整備するほか、防災スペースとして活用できる植樹帯や、医師住宅、院内保育所など職員福利厚生施設等を整備することとしております
 議員お触れの施設につきましては、詳細は明らかではありませんが、一般的には相当な面積を要すると考えられますことから、敷地内に当該施設の整備スペースを確保することは困難であると考えております。 

いわき市公有財産調書によれば、小名浜金成にあるいわき金成公園の敷地65haを、平上荒川にある21世紀の森の敷地29haを、いずれもいわき市が保有しています。また、現在中央台高久地区の仮設住宅の用に供されている敷地19haはいわき市土地開発公社が所有しております。それに比べて現病院の敷地面積は7haと、それらの数分の一の規模であり狭小であります。いわき市新病院基本構想において新病院建設用地の検討がなされ、新病院建設に係る基本構想づくり懇談会による提言があり、また病院内部で新病院建設検討委員会、新病院建設作業部会でさらなる検討がなされたと伺っております。しかしながら、その検討の経過や検討内容は、クローズの場であり、全く一般市民の知りえるところではありません。そこで広く市民のための病院ということを鑑みれば、駐車場確保や敷地の拡張性の点で、公開の有識者会議を設け広く市民の意見を聴取した上で、建替場所に関する市民との合意形成を図るべきではないかと考えますが、ご所見を伺います。
 
(執行部回答)新病院建設の検討を始めるにあたりましては、はじめに、取組方針を定め、構想策定に必要な市民の合意形成を目指し、取り組んできた経緯があります
 具体的には、一つとして、懇談会の設置や市民意識調査及びパブリックコメントの実施など、幅広い市民の皆様の意見を反映させるための「市民参加の視点」、二つとして、地域医療機関との共立病院との連携を軸とした「連携の視点」、三つとして、懇談会の公開や検討資料の公表など、広く情報の発信・共有を行いながら、市民参加や連携の取組みを進める「情報共有の視点」などであります。
 こうした方針をもとに策定した基本構想に基づき、日々患者さんに接している現場の医療スタッフの意見の反映にも努めながら、これまで、基本計画及び基本設計の取組みを進めたきたところでありますので、ご理解を賜りたいと思います。 

新しい市民病院は、市民の税金で作られるわけですから、市民の市民による市民のための病院であるべきです。しかしご回答を伺うと、市民との対話をことごとく回避し、官主導で、ちゃくちゃくと建設が進められているように感じます。これでは新病院に対する市民の理解は得られないと思います。新病院の経営がうまくいかなくなったときも、納税者が自ら責任をとらざるを得ません。再度、改めて公開の有識者会議を設け広く市民の意見を聴取した上で、市民との合意形成を図る機会を設けていただくよう要望いたします。

この医療問題に関する質問の最後に、朝日新聞の田辺功氏の編んだ、ドキュメント医療危機という著書からの引用を紹介させていただきます。日本の医師はあまりにも疲れています。人数が少なく、仕事量が膨大で、しかもどんどん増えているからです。その一因は、無限に要求を拡大する、私たち患者側にもあります。また、医療の複雑さ、難しさをほとんど理解していない行政や政治、そしてそれを許している私たち国民にも責任があったといえるでしょう。
再度になりますが、私から市内の医療現場で献身的に働いていらっしゃる医療関係者の方々に深く感謝申し上げると共に、心から熱いエールを送りたいと思います。

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2. 郷土愛醸成について
(1)私は、今の現代人の生活は先人達の歩みの上にあると、常々感じております。しかし残念ながら、今のまちなかの風景から先人達の活動の息吹を感じることができる場所が非常に限られております。清水市長も常日頃から、歴史を感じることができ、風格のあるいわき市にとおっしゃっておられます。
ちょうどいわきの湯長谷藩をモチーフにした、『超高速!参勤交代』というコメディ映画が来年夏に、全国公開されます。主演に佐々木蔵之介、ヒロインに深田恭子、ふかきょんが出演します。全国での封切りですからひょっとするとフラガールに続く、いわきの名作になる可能性があります。昨今、全国各地で、名所旧跡などで観光パフォーマンスを繰り広げる戦国武将隊などが人気を博しており、また歴史に詳しい若い女性、いわゆる歴女が歴史旧跡を訪ね歩くのが小さなブームになっております。ご存じのとおり、磐城の国は建国から1300年の歴史を持ち、江戸時代には、今の田町のレンガ通りから、磐城平城の片鱗を見上げることができ、城下町の風格があったときいております。もし当時を忍ぶことができるならば、間違いなく歴女が訪れる対象のはずです。しかしながら戊辰戦争での落城後、城の敷地は、ちりぢりに民間売却され、一部は丹後沢公園として整備されたものの、外堀は常磐線の用地として埋め立てられ、櫓があったところは住宅地に変貌しています。幸いなことに物見が丘と呼ばれる本丸部分は、現在の所有者の意向によって開発されず現状保存されていますが、分譲マンション開発の適地であり、もしここに高層マンション建設がなされたら、ここからの素晴らしい眺望に惹かれて購入者が殺到することは必至です。しかしその場合、先人達の足跡はまったく考慮されず、市長がおっしゃる、風格のある街からはほど遠くなってしまいます。そこで民間売却され、マンション開発されてしまう前に、いわき市で物見が丘の土地を確保し、公有化しておくべきと考えます。
http://www.youtube.com/watch?v=CuYhgxCmyAU

ア 歴史的な史跡公園として、ご所見を伺います。

(執行部回答)磐城平城は、鳥居忠政公により慶長8年(1603年)に築城されて以来、明治元年の落城まで260年余りの歴史を持つ本市の貴重な歴史的資源の一つでありまして、平城にまつわる歴史を後世に伝える重要性を十分に認識しているところであります

 また、市民有志による「磐城平城史跡保存の会」等が発足し、シンポジウムが開催されるなど、磐城平城の歴史理解を深める取組みが行われているところであります。
 しかしながら、歴史公園の整備にあたりましては、整備区域や埋蔵文化財などの関係法令との調整、さらには、土地所有者や周辺の方々のご理解など解決しなければならない課題も多くありますことから、これからも引き続き、関係資料等の収集を図るとともに、市民各界各層の皆様のご意見等をいただきながら、調査・研究を進めて参りたいと考えております。 
 
イ 文化財維持の観点から歴史的な生涯教育の場として、ご所見を伺います。

(執行部回答)磐城平城本丸跡地である物見が丘の文化財としての価値につきましては、現在、目に見える遺構はなく、地下の遺構につきましても、発掘調査等が実施されていないため文化財として保存する価値が有るかどうかを判断することは困難な状況であります
 文化財として公有化の検討をする場合としては、文化財としての価値が明らかであり、且つ、保存すべきものであると判断された場合であるち考えておりますので、現在のところ、物見が丘につきましては、これに当てはまらないと考えております。 
 
ウ 市長は何度も歴史を感じることができる、風格のあるいわき市にとおっしゃっておられます。市長自らのご所見を伺います。
 
(市長回答)歴代の市長のときも議論があったものと思います。市民の意識醸成が必要と考えます。中長期的に検討していきたいと考えております。 

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3. ロックフェラー財団について
(1)レジリエンスシティについて
http://www.youtube.com/watch?v=bPpxq0A19aU 
ロックフェラー財団は、世界中の100都市を指定して都市レジリエンスのために総額1億ドルを資金提供することを発表し、現在、各都市からの応募を受け付けています。レジリエンスとは、回復力や復元力やしなやかさ、そして「復興」を指します。いかにして災害から回復できる力を持てるかが鍵で、まさに東日本大震災からの震災復興がそれにあたります。
ロックフェラー財団といえば、福島県が生んだ偉人、野口英世博士が籍を置き、研究にいそしんだところです。これまでも同財団は自然災害を受けた都市に対して支援を行ってきました。今回は、その一貫で技術的な支援と資金を提供するそうです。
私が確認したところ、いわき市は一定規模の都市である点や災害復興途上であること等、すべて応募要件を満たしています。支援を受けるメリットは、財団からの資金援助のみならず、広範囲な知見、技術支援、サポートを得られることです。同財団には、都市問題解決のソリューションが蓄積されているだけでなく、世界的ネットワークを有しています。彼らを利用することで、やり方次第でいわきの抱える課題、すなわち町外コミュニティや医師・看護師不足、風評被害等の諸問題に対する、高所視点からの解決策の提案や、彼らが持つ潜在的な影響力の利用が期待できます。ロックフェラー財団の海外認知度は非常に大きく、ここからサポートを受けているということ自体が、国内外からのいわきに対する好感度上昇につながることは必至であります。これは短期的には、直接的な交流人口の増加やノウハウの授受というメリットがありますが、さらには長期的な視点に立った人的ネットワークの拡大により、関連産業だけでなく、英語教育に対する理解等の多方面で好影響が期待できます。
ぜひこの機会を利用して、いわきから世界へ発信していくことが好機と考えますが、市長自らのお考えをお伺いします。
 
(執行部回答)あらゆる機会を捉えながら、本市の状況を国内外へ広く発信していくことは、本市のまちづくりを進める上で重要なことであると認識しております
 このような考え方のもと、適時適切に情報発信を進めて参りますが、特に、情報発信にあたっては事業の構築が必要となる場合には、事業実施の要件などを精査し、また、実施体制や費用などについて、十分に検討を行いながら、これらを総合的に勘案して、効果的かつ効率的な取組みをなるよう、磨き上げたうえで、積極的な情報発信に努めてまいりたいと考えております。
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注)上記内容は、議場内でのメモをもとにテキスト化したものであり、内容が正確でないおそれがあります。公式記録については、 議会事務局HPをご確認くださるようお願い致します。