いわき芸術文化交流館ALIOS、通称「いわきアリオス」は、旧平市民会館跡地に文化交流施設です。ALIOSの由来は、Art(芸術)、Life(生活)、Information(情報)、Oasis(憩いの場)、Sightseeing(観光)の頭文字です。
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6階建ての本館と4階建ての別館があり、本館には、国内最高水準の音響性能を持つ大ホール・中劇場・小劇場など、別館には、音楽小ホール・練習室などがあります。クラシック・オペラ・ポピュラー等の音楽コンサートだけでなく演劇等にも使われており、自主公演だけでなく、市民の文化活動の貸しホールの側面もあります。
 
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約181億円の資金が投じられたこの事業は、民間の資金やノウハウを活用して施設整備をするPFIに似た方式を用いて建設されました。施設の設計、建設、維持管理を、特別事業目的会社「いわき文化交流パートナーズ」が行い、事業運営は、いわき市が直営で行うことになっています。PFI期間は平成35年3月31日までの15年間です。その意味では、厳密にいうと建設や運営に関して民間の活力を活かしたPFIではなく、建物設備の15年間の延べ払い的(ただし、修繕計画に則った大規模修繕や維持管理コストを含む)な性格が濃くなっています。
 
「直営の文化施設」には、硬直的な使い方になることが予想されるため、施設サービスや音楽・演劇のプロデュース、戦略的な広報やマーケティング、そして照明や音響設備の操作に長けた専門スタッフを市外から招聘し、市の嘱託職員として採用しています。もちろん、アリオスは市の文化施設として、時には「自主事業の成功」や「効率」よりも他の要素、つまり「地域にもたらされる価値」等を優先しなければならない面も持ち合わせています。

このように、市内部には運営ノウハウの蓄積が少ないため、プロ集団に事業委託し、自主公演(アリオス主催でコンサートを開くこと)や貸館事業(市民が、施設を借りること)を同時に行っています。館長は市役所職員ですが、現在の支配人(副館長)は、世田谷パブリックシアターというところから移ってこられた劇場運営のプロ、大石時雄氏です。兵庫県伊丹市、東京都世田谷区、岐阜県可児市、そして福島県いわき市と幅広い地域の公共劇場に関わってこられた方です。公共劇場は、誰のものかを常に考える方で、いわく、アリオスをして公共劇場だととらえずに、「図体のでかい、施設を貸し出すことを優先する集会所」だそうです。
 
●自主事業プログラム
子どもから社会人、ご高齢の方々まで、幅広い層を対象に下記のような自主事業を展開しています。
・鑑賞公演・普及公演
・ワークショップ
・市民参加型公演
・おでかけアリオス
・マーケティングプロジェクト
・広報紙である「Alios paper」や「シーズン・ポスター」、FM番組「Alios style」等の広報
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大ホールの客席数について、数年前までいわき市内ですったもんだの大議論になったことでも有名です。コトの発端は、当初のアリオス案大ホールの客席数が1,607席と、前身の平市民会館時代1,771席よりも、減らされる予定だったこと。これに対して、吹奏楽関係者(いわき市の吹奏楽のレベルは、全国的に見ても高い)が全国クラスのコンクールが開催できないことに噛みついて、さらに合唱などの団体から2,000席の要望も出されましたが、最終的に1,600席ベースでPFI事業の募集が強行され、清水建設グループと鹿島建設グループの2社連合が争い、清水建設グループが181億円、15年間契約で落札しました。
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これは2005年当時のいわき市長選挙の争点のひとつにもなりました。1,600席ベースで話を進めた四家啓助氏(現職市長)を、増席を望む市民の声に押された櫛田一男氏(新人)が破りました。既に1,607席ベースでのPFI契約が終わっていて、増席分の建設コストを誰が負担するのかということで、もめました。結局、設備の内容を見直すことで、席数を1,705席まで増やす(さらに手を加えれば1,850席まで増席可能)ことで、建設会社と合意し、先ほどのPFI方式で建設が進む運びになりました。なお建設はPFI契約に従って清水建設が担当しましたが、いわき市の一方的な都合による設計変更により、当初1,607席ベースで見込んていた利益が確保できず、経営的にはかなり厳しい工事になってしまったようです。
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そんなドタバタが5年前にあったことは、もう過去の話で、現在の利用者には全く関係ありません。設備の稼働率は80%近くと、非常に高稼働です。運営に関しては市歳出予算からの持ち出しは、水光熱費だけでも億円単位になりますが、文化事業として、一定の市民生活に寄与しているはずです。自主事業のコンサートには賛否両論ありますが、NHK交響楽団が定期コンサートを開催している会館を、貸館として使えることに、高揚感を覚える方も多いのではないでしょうか。その意味では自主事業がブランド力に寄与しているわけで、貸館にも好影響があると思います。もとより文化施設は、ハコモノの設備レベルよりも、その活用方法であるソフトの部分が、圧倒的に大事です(それで失敗している施設が、全国にたくさんあります)。いろいろ課題はあるものの設立から5年間は、何とか軌道に乗せてきたと思います。今後は、市民(と市役所が一緒になって)自らこの施設を、中長期的にどのような施設にするのかの基本方針を持つことが大事かと思います。
・市民への貸館と自主事業(コンサート等)の割合をどれくらいにするか
・運営を外部のプロに委託し続けるか、市内スタッフに技術承継していくか
・市役所の職員の関与はどの程度とすべきか
・運営組織を、市の嘱託契約(現在の形態)を続けるか、運営ノウハウのある団体に一括委託(例えば、外部指定管理者制度)とするか、その他の道を探るか
・文化事業として、市歳出予算からの持ち出しを、どれくらいを目処とするか(例、○○億円)

<経緯>
1966年 平市民会館 開館
2006年 建設工事開始
2008年 第一次オープン
2009年 グランドオープン

アリオスは大ホールのみが注目されますが、実は中劇場こそ、凄いんです。国内有数の舞台装置を持つ中劇場の特徴は、形を変える舞台形式にあります。用途に応じていろいろなステージプランが可能です。また、古典芸能にも対応できる設備を備えています。
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おまけ:施設のイメージを図案化した、緑の色彩と葉っぱのモチーフのシンボルマークは、カールスモーキー石井(米米Club)がデザインを担当したんだそうです。聞くと、石井竜也さん自身の故郷は北茨城市ですが、母親の故郷がいわき市とのこと。いろいろなつながりがあるんですね。
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