震災後、獨協大学准教授の職を辞して自ら、原発に一番近い病院である南相馬市立総合病院の常勤医師として飛び込んだ小鷹医師の著書です。この病院は、震災前14人の常勤医が、一時は4人まで激減してしまいましたが、その後、各方面からの支援により現在は、震災前の超える医師数がおり、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの病院です。売り手市場の医師マーケットで、何がこの病院に医師を引きつけているのでしょうか。

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この病院には医師を引きつける何かがあります。しかも、ここは原発に最も近い病院です。東大医学部からの初期研修医や亀田総合病院からの2年次研修医も、臨床研修先にここを選びました。正直、臨床医にとってここで研修を受けたいか?という問いに対し、設備や資源に関する絶対的な不足から、少し不安と言わざるをえません。指導する医師のスキルに問題はなくても、設備や人的資源の不足している医療現場ではできることに限りがあります。だからこの病院で学べることは、どうしても解決できない問題に対して、どうしたらよいかを判断できることだそうです。

そして南相馬市立総合病院で学べることのもうひとつは、楽しめる医療だそうです。医療を通じて街の復興に貢献できるということが、このうえなく非日常的でエキサイティングとのこと。これから全国で起こりうるであろう、震災や津波や事故などの災害時の医療研修を行うことができます。さらにそこでの不便な暮らし自体が創造的フロンティア、すなわち自分で考え、自身で探り、己で見いだすことができる場所だから。手仕事、体当たり、向こう見ずといった作業を繰り返すことで、ひとつずつブロックを積み上げるかのように、社会を更正させていく醍醐味を感じることができるそうです。

以下は、著書の一文からの引用です。医師(人間)の意欲を引き出す肝は、楽しいかどうかとのこと。これは堀江貴文氏の「ゼロ」に共通しています。
http://www.mikito.biz/archives/33930327.html

医師が-もっというなら人間が-より高いパフォーマンスを発揮するための原動力は、その行動が「楽しいか否か」にかかっている。病院に限らないかもしれないが、仕事場などというところは、責任感があって、勤務考課が公正で、尊敬できる上司がいて、愉快な仲間がいれば、どんな場所でも楽しい。逆に無責任で、不公平で、尊敬できない上司と、感じの悪い同僚に囲まれていれば、どれほどエグゼクティブで、リーディングで、ソフィスティケイトされた仕事をしていても、全然楽しくない。

医師が集まる理由は、職場として楽しい病院であること、そして社会を良くしていくことの醍醐味を感じることができること、この2点が肝だと思いました。