著者は、ハーバード大で食品と健康の関係を研究する医師です。

「カロリーゼロ」「カロリーオフ」「ノンシュガー」とうたわれる食品・飲料は身の回りにあふれています。健康を気遣う人ほど、好んで選ぶ傾向があるでしょう。人工甘味料は「甘み依存」を引き起こし、ひいては行動パターンにも影響してくるというそうでう、その大量摂取に警鐘を鳴らしています。
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人工甘味料には、いくつかあり代表的なものは、世界で最古の人工甘味料である「サッカリン」、知能低下や発がん性の疑いが問題になったことがある「アスパルテーム」、殺虫剤開発時に発見されその化学成分の1つ塩素の存在が危険視されている「スクラロース」、塩化メチレンの影響が懸念される「アセスルファムカリウム」、2007年に食品添加物として承認されたばかりの「ネオテーム」等だそうです。 

なかでも特に注目が集まるのは、2000年代以降に出てきたものです。日本でもステビアとして知られるアスパルテームや、ノンカロリーコーラを美味しくしたといわれるアセスルファムカリウム、そのほかにもネオテームやスクラロースなどです。それらの多くは、開発からまだ20年未満と歴史が浅く、身体や生殖への影響は判明しきれていません。

人工甘味料には下記のようなリスクがあるとのことです。
1.定期的な摂取で、人工甘味料不使用の飲料を飲んだ場合よりも太る傾向がある
2.インシュリンの分泌を昂進するため、II型糖尿病発生のリスクが高まる
3.依存性がある
4.特に、サッカリンはコカイン以上の依存性がある
5.腎機能低下の恐れがある
6.アスパルテームは、知能低下、発がん性の恐れがある
7.脳卒中や心筋梗塞のリスクを高める
8.鬱病発生のリスクを高める

日本における表示のルールが解説されていて、目から鱗でした。
・ゼロカロリー、ノンカロリー、レスカロリー、カロリーなし、カロリーフリー
「100ml(g)あたり5kcal未満」であれば、本当にゼロでなくても、表示Ok

・「低」「ひかえめ」「少」「ライト」「ダイエット」「オフ」
100gあたり40kcal以下(液状の場合100mlが20kcal以下)であれば、表示OK

・「すっきりした甘さ」「ほどよい甘さ」などの表現は
製造者の考えを表示しただけなので、表示自由

・砂糖不使用や砂糖無添加
食品の加工の段階で砂糖を使用していないということを示す。砂糖(ショ糖)が含まれていないという意味ではない。つまり食品本来の成分に砂糖(ショ糖)が含まれている場合や、加工段階で砂糖を使っていなければ、「砂糖不使用」と表示OK。 例えば、ドライフルーツを使ったお菓子や果実入りのお菓子は、砂糖無添加と表示できます。つまり、ドライフルーツを作るまでの過程は砂糖の表示に入らないので、砂糖無添加と表示できるわけです。

人工甘味料の甘みはサッカリンで砂糖の数百倍、最新のネオテームは砂糖の約7000~1万倍の甘みの効力があるそうです。こうした人工甘味料に慣れると、当然甘味に関する味覚が鈍り、自然とより強いものを求めるようになります。 人工甘味料には、コカイン以上の依存性があるという見方もあるそうです。人工甘味料の甘さが脳内報酬系やドーパミンなどの神経伝達物質に影響を与え、それこそ依存症や中毒に導き、「甘み依存症」になることも研究報告されているそうです。

著者の提案は、消費者自らが、自分が取っている甘味が何かということを確認し、カロリーの量だけで食べるものを決めないということです。考えてみれば、飽食の現代社会において、ダイエット・健康志向は日常のテーマです。そこにおいて、「摂取カロリー」が指標になっていて、食べ物や嗜好品をとるときの選択の有力な指標です。すなわち低カロリー食品かどうかに、非常に興味がそそられます。

ただ一歩引いて、よく考えてみると、摂取食品の違いによるカロリー1kcalの質は違いは、タンパク質、炭水化物、脂肪それぞれの体への作用の仕方が違います。 私たちの体はタンパク質や脂質からできており、必要な摂取が必要です。そう考えると、嗜好品としてあえてリスクのあるカロリーゼロ人工甘味料をとらなくとも、自然由来のカロリーありのもので十分、というかそのほうがはるかに健康に過ごせるのではないか、ということを改めて思いました。