自治体病院全国大会2013「地域医療再生フォーラム」に参加しました。

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○自治医大の永井良三学長
日本の医療システムはアメリカ的な市場原理に基づく「自助」ではなく、ヨーロッパ的な社会主義的「公助」でもなく、「共助」である。それが日本らしいという話をされました。医療の進歩という点ではアメリカの市場原理システムが最も科学研究スピードが速いことは衆目の一致しているところですが、実際に医療現場に適用する段階で、結果として提供する医療が高額となってしまうという欠点があります。日本は、ヨーロッパ的な公助にやや近いのですが、医療サービスのほとんどが民間の開業医や民間病院(一部、公立もありますが)が手がけているところに大きな特徴があります。

○八戸市立病院救命救急センターの今明秀所長
今明秀医師にいわく、地方の病院もブランド化し(実はこれが難しい)、それを適切に熱意を持って広報できれば(これはもっと難しい)若い研修医が集まってくる、とのこと。キャッチフレーズは、予測救命率が低い患者を救う「劇的救命」と、ドクターヘリとドクターカーが同時に出動する「サンダーバード作戦」です。と、まとめれば簡単ですが、実際の取組みは地道が努力の積み重ねです。八戸市は、新幹線もない田舎、近くに医科大学もありません。そんな悪条件の中で、今年度の八戸市立市民病院卒後臨床研修プログラムの研修医フルマッチを達成し、平成21年度には病院機能評価の救急医療機能分野で4項目中3項目に評点5、国内で最高点を獲得したそうです。救急医17名を擁し、共立病院の4名体制からすると、羨ましい限りです。今医師いわく、医師不足は地方ということが原因ではない、と断言されています。いわく、まず地域の唯一・頂点・先駆者の病院となり、それを商品として精力的に今医師が自ら広報し、学生や研修医が読む雑誌への多数の論文投稿、研修医向けの救急講習会の全国展開等により、病院自体の魅力度を上げる努力を継続的に行っているそうです。いわき市では救急は、医師にとってはつらい、病院にとってはもうからない、患者にとっては搬送に時間がかかる、と3重苦の悪循環に陥っています。そのソリューションのひとつが、八戸の取組みにあるのではないでしょうか。

○岐阜市民病院の冨田栄一病院長
市民病院のあり方について話されました。こちらも一般会計からの繰入れがある病院ですが、特筆すべきは利益剰余金を6年連続で出していることです。競合の専門単科病院の開設等の危機に際して、経営改善の取組みを行なっています。市民病院でもここまでできるのかということを再認識しました。
・SWOT分析・戦略マップの作成
・バランスト・スコアカードの導入
・PDCAサイクル
・病院全体及び部署ごとの行動計画書
・インセンティブスキームの導入
上記いずれも医療職にとってはなじみがない(そもそもこういった経営手法は、医療になじまないという人もいます)ので、導入に当たっては気が遠くなるような反対の声があったことは想像に難くありません。しかし、今ではそれも6年目に入り、上記の取り組みが定着しているそうです。この取組みをしての6年間が、上記利益剰余金を生み出している時期と一致していることは、偶然ではありません。

あわせて市民病院として、市民公開講座(毎月開催)や子供達の体験学習を行っています。これこそが市民病院のあるべき活動だと思います。
 
○細田博之元官房長官(来賓)
国の歳出予算は逼迫している。特に国が負担する医療費は年々1兆円ずつ増えており、これは国立大学に対する予算規模よりも大きい金額です。このままでは持続的出ないのは自明なのですが、内容を精査すると、年金、介護、消費税などの問題が絡みあって、解決策の全体像が分からない人が多いそうです(私もそのひとり)、最適解を求めるために「針の穴を通すような政策を進めている」のだと話されました。残念ながら、私にはそれがどのようなものかイメージできませんでしたが。
 
他病院がどのような取組みをしているかは、能動的に調査すればけっこうなことが分ります。それを他山の石とできるかどうかは、病院経営者の心持ちひとつです。