いわき中央卸売市場は、卸売市場法という法律に基づいて開設されている生鮮食料品等の卸売をする公共施設です。 このような中央卸売市場は、全国の主要都市に開設されており、44都市に72市場が存在します。いわきでは青果部と水産物部、花き部の3つがあります。土地・建物を昭和52年にいわき市が準備・開所し、毎年、実際に利用する卸売業者が賃貸料を支払うことにより、建設・管理コストを回収するスタイルを取っています。
 
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ここでは、青果・水産物などの生鮮食料品と花きを、生産者(出荷者)に代わって売り手にまわる者(卸売業者)と、仲卸業者・ 売買参加者をつなぐ役割があります。なぜなら毎日の取引量が大量であるため、より大量に、かつ合理的、能率的に取引されるために、市場機能があります。産地内で品物が調達できない場合、各地にある中央卸売市場同士のネットワークを使って、市場へ持ってきます。
 
市場の機能は、以下といわれています。 
・品揃え機能:多種多様な品目の豊富な品揃え 
・集分荷・物流機能:大量単品目から少量多品目への迅速・確実な分荷 
・価格形成機能:需給を反映した迅速かつ公正な評価による透明性の高い価格形成 
・決済機能:販売代金の迅速・確実な決済 
・情報受発信機能:需給等にかかる情報の収集・伝達 
 
市場は午前3時に開所し、15:00に閉まることになっていますが、トラック等の物流のピークは、早朝の4:00-6:00頃です。市場内では、水産物部 午前6:00AM、青果部 7:00AM、花き部 10:00AMの定刻になると、「せり」も行われます。

今では、せりの前に品物を押さえてしまうことが多くなっていますが、せり自体は今でも行われています。 下の写真は青果部のせりの様子です。卸売業者である平果さんのスタッフ(右側)が、仲卸業者(左側の多数の方)に品物を見せながら、価格を競っていきます。
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だみ声と独特のサインは、市場せり特有のものです。せり上がりもありますが、品物がだぶつけば(例えば、当日、大量のネギが持ち込まれたけれど、例え安くてもそんなに一日で売り切れない等)、価格が付かないこともあります。
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こちらは鮮魚のせりの様子です。卸売り業者のいわき魚類さんのスタッフ(右側)が、ちょうど生まぐろをセリを取り仕切っています。それを受けて、仲卸業者さん(中央)が注文のための札を貼っていきます。
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本日の生マグロは、銚子沖で獲れたものと、インドネシアのバリ島近海で獲れたもの、合計10本余りがセリにかけられました。バリ産のものも冷凍せず、生のまま空輸されてきているそうです。
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仲卸業者さんから注文されたものは、その場で計算伝票(荷渡票)が作成され、これが精算センターに送られ、決済に回ります。
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セリの場所にいるのは、売る側の卸売業者と買う側の仲卸業者だけではありません。まちなかの魚屋さんの姿もたくさん見られます。本日入荷された魚の状態を自分の目でチェックし、仲卸業者が落としたどの魚を自分の店に仕入れるか決めているわけです。
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市場に出入りしている関係者の役割は、以下のとおりです。
 ○ 開設者(いわき市) 
・農林水産大臣の認可
・市場を開設、施設の維持管理
・公正な取引を担保するため、卸売業者や仲卸業者、売買参加者に対する指導、監督 

 ○ 卸売業者 
 ・農林水産大臣の許可
・全国各地の生産者、出荷者から委託又は買付けにより集荷
・せり売り、相対売り等で仲卸業者や売買参加者に、大きい単位で販売
 
 ○ 仲卸業者 
・開設者の許可
・せり売り、相対売り等に参加、大きい単位で買取り
・買い取った物を市場内の店舗で売買参加者や買出人等に細かい単位で販売
 
 ○ 売買参加者 
・開設者の承認
・小売商、加工業者、大口需要者等
・卸売業者のせり売り、相対売り等に参加 
 
○ 買出人 
・売買参加者の承認を受けていない小売商等
・仲卸業者から品物を購入
 
 ○ 関連事業者 
・開設者の許可
・場内で店舗営業 

魚を例にとると、卸売業者は、いわき魚類・いわき中水の2社がそれに当たります。仲卸業者 は、丸秀水産・山 常水産・いわき丸水・大友水産・太伸の5社が登録されています。 売買参加者は、大手スーパー等で555社、買出人は、まちなかの魚屋さんのイメージで、1,539社が登録されています(数字は、市場全体)。

ただ近年、市場を通過する取引量が減少傾向にあり、市場・卸売業者・仲卸業者それぞれの経営環境が厳しさを増しています。その背景には、さまざまな物流手法の発達により、市場を通さない流通ルートが発展していることがあります。その例としては、大手スーパーの産地直接買付(いわゆる、産直)や、大手流通業者独自の全国への商品配送網(例:CGC等の共同食料品チェーン)の拡大があります。それらいずれもが、既存の中央卸売場の介在を不要とするため、そちらの取引量が拡大することは、市場へ流れる取引量の減少を意味するからです。
 
震災・原発事故の影響はもちろんですが、それ以外の構造的な要因が中央市場機能のあり方を変えようとしています。生鮮品の供給という重要な機能を確保しつつ、どのような方策が生産者・消費者にとってベストなのか、模索が続きそうです。