本日、いわき市議会の東日本大震災復興特別委員会が開催され、国と東京電力を呼んで、汚染水流出が続くこれまでの経過の説明をしてもらいました。野田参事官から1時間程度、経過の報告説明を受け、その後2時間あまりを質疑応答しました。
出席したのは、下記の方々です。
○経済産業省資源エネルギー庁
・大臣官房参事官(原子力担当)・原子力発電所事故収束対応調整官 野田耕一氏
○東京電力株式会社
・代表執行役副社長 福島復興本社代表 兼 福島本部長 兼 原子力・立地本部副本部長 石崎芳行氏
・福島復興本社 福島本部 復興推進室 副室長 武井澄男氏
・福島復興本社 福島本部 福島広報室 リスクコミュニケーター 兼 福島復興本社 福島本部 復興推進室 副室長 林幹夫氏
・原子力・立地本部 土木・建築設備グループ 課長 中原和彦氏
配付資料には、9/10に開催された議会といわき市漁業協同組合理事会との意見交換会における、漁業者からの意見を集約した資料も含まれ、国・東京電力と情報共有されました。また会議は公開され、傍聴者とともに報道関係者として地元新聞社とともに、NHK、民放各社のカメラが入っていました。
冒頭、議会の特別委員会委員長から、以下の発言がありました。
・1Fの事故後、東電から過去4度にわたって安全性確認の説明を受けてきたが、それに続く度重なる事故は、あまりにも事後的対応である
・議会として、事故対応を政府直轄とするよう意見書を提出したが、その後の茂木経産省の現地視察は遅すぎる
・9/3の政府方針発表では、遮水壁、地下水バイパス、ALPS稼働、溶接型タンク等の方針が打ち出されたが、その場しのぎの対応でなく、先を見据えた対応をしてもらわなければ困る
それに対して、経産省資源エネ庁の野田参事官から、汚染水に問題に関する基本方針として、東京電力任せにするのではなく、国が前面に出て、必要な対策を実行する、との説明があり、野田参事官自ら福島に常駐する旨、発言されました。
以下、委員(私も含む)質疑応答の概要です。
(佐藤かずよし委員)
Q 2011年6月にスラリー壁による4面壁の設置が提案されたが、採用されなかった理由は何か。
A 当時、陸側への壁設置は技術的課題があり、採用されなかった。具体的には、陸側への壁設置により、地下水位が下がる可能性があったことと、既存設備の存在により作業スペースが少ないと判断したことである。今となっては、申し訳ない。
Q 1,100トンの流出水について、ストロンチウムのみ計測し、セシウムを計測せずに放出した理由は何か。
A 放出水は、全β検査済みした上で放出している。サリー・キュリオンの機器を通した上での放出であり、セシウムは低いと思われる。
Q 2020年にデブリを取り出す計画になっているが、現実的に可能なのか。
A 計画達成には、さらなる技術開発が必要だ。具体的には、遠隔操作機器の開発が前提である。
Q チェルノブイリの事後対応を見習い、事故処理庁等を設置すべきでないか。
A 責任主体がいなかった旧ソ連の状態とは異なり、1Fについては東京電力が事故の責任主体であり、情況が異なる。
(吉田みきと委員、私)
Q 汚染水問題に関する基本方針(平成25年9月3日原子力災害対策本部決定)によれば、「東京電力任せにするのではなく、国が前面に出て、必要な対策を実行する」となっている。しかし、具体的な対策の実施は東京電力任せになっているのは、どういうことか。
A 対策の計画全体について国は責任を持っている。国は計画を立て管掌する役割だ。事業主体は東京電力であり、それぞれの役割を持ってやっている。また工事自体はゼネコンがその役割でやっている。
Q 上記において「国が、~実行する」という主語・述語の関係では、東電が作業主体となるようには読めない。また東電は原発運営者・オペレータであって、廃炉作業は業務の中心ではない。この非常時に、国がその東電に廃炉作業を任せることは、どのように考えているか。
A 電気事業法において、廃炉作業は一義的には事業主体である東電が行うことになっている。
Q 「国直轄で行う」「国の責任で行う」というキーワードが何度も出てくるが、対策実施において現場技術力を有している国内原発メーカーの関与が限定的(廃炉対策推進課意義の汚染水処理対策委員会へ、研究開発運営組織のメンバーとして、研究開発計画の提示・報告・連携活用のみ)なのはなぜか。
A 国内原発メーカーは、電気事業法において廃炉における限定的な関与しか想定されていない。
Q 電気事業法等への法令遵守は理解するが、今は非常事態なのであって事故前の法令遵守は意味がなく、国内外の叡智を結集して問題に取り組んで欲しい。
A 原発メーカからは数十名が政府に出向してもらっている。またメーカー内部で3000人が廃炉研究している。
Q 海外の叡智を結集するといっているが、具体的な進捗状況を教えて欲しい。
A 現在、取組中。
Q 廃炉・汚染水対策現地事務所の設置を予定していると聞いたが、その具体的設置場所と、人数はどの程度か。
A 設置場所は、Jヴィレッジもしくは福島第2原発内を予定している。人数は7-8名程度。
(伊藤委員)
Q 東電に廃炉を任せるのではなく、国の予算措置をとった上で、廃炉作業を指示すべきでないのか。
A 東電は、廃炉費用を特別損失を計上し引当金を計上しているので、資金的に問題はないはず。技術的難易度が高いものは、国費投入する。ロボット開発関連に関しては、国の予算措置が付いている。
(狩野委員)
Q 原発作業員は、下請けが跋扈しており、9次10次下請けが常態化している。安全管理の観点等から直接支払い制度に変更できないか。
A 作業員数は多く、東電は元請けに作業委託している。東電は、詳細な全体や下請け管理は把握していない。安全管理の徹底を元請けに指示している。
Q 遮水壁について凍土方式が採用されたが、他の方式はどのように検討したか。
A 工事期間と工事スペースの観点から、凍土方式を採用した。とくに建屋カバーや配管等が錯綜しており、広い工事スペースを確保することが困難。3m×3m程度の機械のボーリングで設置できる凍土方式は、15m程度の作業スペースが必要な矢板方式に比べて優位である。今年度中に実証実験を行い、土壌調査・地下水調査も同時に行いたい。
Q 情報公開について
A 一日に2回、記者会見を開いている。同時にホームページで詳細な情報を提供している。
(大友委員)
Q ALPS装置はトリチウムを除去できないと聞いているが本当か。
A そのとおりだが、濃縮できる例が海外にあり、現在研究中。
(伊藤委員)
Q 下請け構造により、原発作業員に適切な報酬が支払われていない。これに対し過去数回東電に申し入れを行ってきたが改善が見られない。
A 元請けから先の重層構造につき、すべてを東電が把握しているわけではない。また全容の詳細を把握することはできない。元請けとの契約に基づき、元請けに要請している。
最後に、石崎社長から、陳謝の言葉の後に、いわきの復興のために東電も仲間に入れて頂きたい旨の発言がありました。その真意は推測できかねますが、将来に向けた建設的な意見と受け止めました。
「国は廃炉に全責任を持つ」といいながら、実は全体計画の管掌のみで、東電にその廃炉作業をやらせるつもりに変わりがないことを確認して、正直がっかりしました。東電は事故後も1Fが安全に管理されていることをことさら強調し、次なる事故が発生し、陳謝の記者会見ではまた安全管理を述べ、さらに次の事故が発生する・・・東電の発表や陳謝会見等は、もはや多くの市民から信頼を失っています。東電は、事故対策をしっかりやればやるほど費用がかかり、自らの会社の損失が拡大するという、利益相反を抱えています。その東電に、廃炉作業のメインプレーヤーの役割を担わせるというのですから、容易には賛同できません。また「国内外の叡智を結集する」といいながら、国内原発メーカーの関与は非常に限定的で、廃炉自体には直接タッチさせない。さらに海外の叡智を集めることに関しては手つかずで、これからだというわけです。国・東電の発想と、市民感情とが大きく乖離していることを感じた3時間でした。
<廃炉作業スキーム私案 市場の失敗は、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/30190607.html
現場の奮闘とは裏腹に、戦略が間違っているため結果が出ない情況は「失敗の本質」を想起させます。
http://www.mikito.biz/archives/20737667.html
なお、この委員会と別会場で、いわき地区船曳網漁業連絡協議会の会議が開催され、いわき市のシラス漁の試験操業の再度延期が決定されたそうです。理由は、前回延期したときに比べて、情況がよくなったという材料が全くないことです。いわき市のシラスの漁期が10月末前後であることを考えると、今年の漁をあきらめたことになります。いわきの沿岸漁業関係者の落胆・諦め感は想像に固くありません。
委員会終了後には、TV各社から東京電力 石崎副社長へのインタビューがなされていました。詳細は明日の朝刊に掲載されることと思います。
※上記内容は、当方のメモをもとに起こしたものであり、内容が正確でないおそれがあります。会議自体は公開許可されておりますので、正確な情報については市役所の広報、報道機関等の発表情報をご参照ください。
出席したのは、下記の方々です。
○経済産業省資源エネルギー庁
・大臣官房参事官(原子力担当)・原子力発電所事故収束対応調整官 野田耕一氏
○東京電力株式会社
・代表執行役副社長 福島復興本社代表 兼 福島本部長 兼 原子力・立地本部副本部長 石崎芳行氏
・福島復興本社 福島本部 復興推進室 副室長 武井澄男氏
・福島復興本社 福島本部 福島広報室 リスクコミュニケーター 兼 福島復興本社 福島本部 復興推進室 副室長 林幹夫氏
・原子力・立地本部 土木・建築設備グループ 課長 中原和彦氏
配付資料には、9/10に開催された議会といわき市漁業協同組合理事会との意見交換会における、漁業者からの意見を集約した資料も含まれ、国・東京電力と情報共有されました。また会議は公開され、傍聴者とともに報道関係者として地元新聞社とともに、NHK、民放各社のカメラが入っていました。
冒頭、議会の特別委員会委員長から、以下の発言がありました。
・1Fの事故後、東電から過去4度にわたって安全性確認の説明を受けてきたが、それに続く度重なる事故は、あまりにも事後的対応である
・議会として、事故対応を政府直轄とするよう意見書を提出したが、その後の茂木経産省の現地視察は遅すぎる
・9/3の政府方針発表では、遮水壁、地下水バイパス、ALPS稼働、溶接型タンク等の方針が打ち出されたが、その場しのぎの対応でなく、先を見据えた対応をしてもらわなければ困る
それに対して、経産省資源エネ庁の野田参事官から、汚染水に問題に関する基本方針として、東京電力任せにするのではなく、国が前面に出て、必要な対策を実行する、との説明があり、野田参事官自ら福島に常駐する旨、発言されました。
以下、委員(私も含む)質疑応答の概要です。
(佐藤かずよし委員)
Q 2011年6月にスラリー壁による4面壁の設置が提案されたが、採用されなかった理由は何か。
A 当時、陸側への壁設置は技術的課題があり、採用されなかった。具体的には、陸側への壁設置により、地下水位が下がる可能性があったことと、既存設備の存在により作業スペースが少ないと判断したことである。今となっては、申し訳ない。
Q 1,100トンの流出水について、ストロンチウムのみ計測し、セシウムを計測せずに放出した理由は何か。
A 放出水は、全β検査済みした上で放出している。サリー・キュリオンの機器を通した上での放出であり、セシウムは低いと思われる。
Q 2020年にデブリを取り出す計画になっているが、現実的に可能なのか。
A 計画達成には、さらなる技術開発が必要だ。具体的には、遠隔操作機器の開発が前提である。
Q チェルノブイリの事後対応を見習い、事故処理庁等を設置すべきでないか。
A 責任主体がいなかった旧ソ連の状態とは異なり、1Fについては東京電力が事故の責任主体であり、情況が異なる。
(吉田みきと委員、私)
Q 汚染水問題に関する基本方針(平成25年9月3日原子力災害対策本部決定)によれば、「東京電力任せにするのではなく、国が前面に出て、必要な対策を実行する」となっている。しかし、具体的な対策の実施は東京電力任せになっているのは、どういうことか。
A 対策の計画全体について国は責任を持っている。国は計画を立て管掌する役割だ。事業主体は東京電力であり、それぞれの役割を持ってやっている。また工事自体はゼネコンがその役割でやっている。
Q 上記において「国が、~実行する」という主語・述語の関係では、東電が作業主体となるようには読めない。また東電は原発運営者・オペレータであって、廃炉作業は業務の中心ではない。この非常時に、国がその東電に廃炉作業を任せることは、どのように考えているか。
A 電気事業法において、廃炉作業は一義的には事業主体である東電が行うことになっている。
Q 「国直轄で行う」「国の責任で行う」というキーワードが何度も出てくるが、対策実施において現場技術力を有している国内原発メーカーの関与が限定的(廃炉対策推進課意義の汚染水処理対策委員会へ、研究開発運営組織のメンバーとして、研究開発計画の提示・報告・連携活用のみ)なのはなぜか。
A 国内原発メーカーは、電気事業法において廃炉における限定的な関与しか想定されていない。
Q 電気事業法等への法令遵守は理解するが、今は非常事態なのであって事故前の法令遵守は意味がなく、国内外の叡智を結集して問題に取り組んで欲しい。
A 原発メーカからは数十名が政府に出向してもらっている。またメーカー内部で3000人が廃炉研究している。
Q 海外の叡智を結集するといっているが、具体的な進捗状況を教えて欲しい。
A 現在、取組中。
Q 廃炉・汚染水対策現地事務所の設置を予定していると聞いたが、その具体的設置場所と、人数はどの程度か。
A 設置場所は、Jヴィレッジもしくは福島第2原発内を予定している。人数は7-8名程度。
(伊藤委員)
Q 東電に廃炉を任せるのではなく、国の予算措置をとった上で、廃炉作業を指示すべきでないのか。
A 東電は、廃炉費用を特別損失を計上し引当金を計上しているので、資金的に問題はないはず。技術的難易度が高いものは、国費投入する。ロボット開発関連に関しては、国の予算措置が付いている。
(狩野委員)
Q 原発作業員は、下請けが跋扈しており、9次10次下請けが常態化している。安全管理の観点等から直接支払い制度に変更できないか。
A 作業員数は多く、東電は元請けに作業委託している。東電は、詳細な全体や下請け管理は把握していない。安全管理の徹底を元請けに指示している。
Q 遮水壁について凍土方式が採用されたが、他の方式はどのように検討したか。
A 工事期間と工事スペースの観点から、凍土方式を採用した。とくに建屋カバーや配管等が錯綜しており、広い工事スペースを確保することが困難。3m×3m程度の機械のボーリングで設置できる凍土方式は、15m程度の作業スペースが必要な矢板方式に比べて優位である。今年度中に実証実験を行い、土壌調査・地下水調査も同時に行いたい。
Q 情報公開について
A 一日に2回、記者会見を開いている。同時にホームページで詳細な情報を提供している。
(大友委員)
Q ALPS装置はトリチウムを除去できないと聞いているが本当か。
A そのとおりだが、濃縮できる例が海外にあり、現在研究中。
(伊藤委員)
Q 下請け構造により、原発作業員に適切な報酬が支払われていない。これに対し過去数回東電に申し入れを行ってきたが改善が見られない。
A 元請けから先の重層構造につき、すべてを東電が把握しているわけではない。また全容の詳細を把握することはできない。元請けとの契約に基づき、元請けに要請している。
最後に、石崎社長から、陳謝の言葉の後に、いわきの復興のために東電も仲間に入れて頂きたい旨の発言がありました。その真意は推測できかねますが、将来に向けた建設的な意見と受け止めました。
「国は廃炉に全責任を持つ」といいながら、実は全体計画の管掌のみで、東電にその廃炉作業をやらせるつもりに変わりがないことを確認して、正直がっかりしました。東電は事故後も1Fが安全に管理されていることをことさら強調し、次なる事故が発生し、陳謝の記者会見ではまた安全管理を述べ、さらに次の事故が発生する・・・東電の発表や陳謝会見等は、もはや多くの市民から信頼を失っています。東電は、事故対策をしっかりやればやるほど費用がかかり、自らの会社の損失が拡大するという、利益相反を抱えています。その東電に、廃炉作業のメインプレーヤーの役割を担わせるというのですから、容易には賛同できません。また「国内外の叡智を結集する」といいながら、国内原発メーカーの関与は非常に限定的で、廃炉自体には直接タッチさせない。さらに海外の叡智を集めることに関しては手つかずで、これからだというわけです。国・東電の発想と、市民感情とが大きく乖離していることを感じた3時間でした。
<廃炉作業スキーム私案 市場の失敗は、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/30190607.html
現場の奮闘とは裏腹に、戦略が間違っているため結果が出ない情況は「失敗の本質」を想起させます。
http://www.mikito.biz/archives/20737667.html
なお、この委員会と別会場で、いわき地区船曳網漁業連絡協議会の会議が開催され、いわき市のシラス漁の試験操業の再度延期が決定されたそうです。理由は、前回延期したときに比べて、情況がよくなったという材料が全くないことです。いわき市のシラスの漁期が10月末前後であることを考えると、今年の漁をあきらめたことになります。いわきの沿岸漁業関係者の落胆・諦め感は想像に固くありません。
委員会終了後には、TV各社から東京電力 石崎副社長へのインタビューがなされていました。詳細は明日の朝刊に掲載されることと思います。
※上記内容は、当方のメモをもとに起こしたものであり、内容が正確でないおそれがあります。会議自体は公開許可されておりますので、正確な情報については市役所の広報、報道機関等の発表情報をご参照ください。