ときわ会が運営する、常磐病院を訪問しました。常磐病院のルーツは、湯本町国民健康保険組合の診療所に遡りますが、平成23年に市営病院の赤字経営脱却を目処に、いわき市からときわ会へ譲渡されました。ときわ会グループは、人工透析と泌尿器疾患を中心に診療する医療グループで、財団法人ときわ会、医療法人社団ときわ会、学校法人志向学園から構成され、1つの病院と6つの診療所、2つの介護老人保健施設、1つの幼稚園からなっています。母体となるいわき泌尿器科が中心となり、竹林病院、市立常磐病院が手を組み、現在の形となっています。常磐病院は、譲渡後にときわ会によって、既存建物の耐震工事及びPETセンター・透析センター棟が新築されています。
ときわ会が全国的に有名となったのは、震災時の水不足により、市内で透析ができなくなったとき、(官に頼らず)自らの全国的な人的ネットワークで、1,000名近い透析患者を東京や千葉、新潟へ避難・搬送させ、患者から大感謝されたことです。また福島県では唯一、ダヴィンチという内視鏡によるロボット手術を導入し、同じく福島県内の私立病院として唯一、PET-CTによるがん検査ができる病院でもあります。
<当時の新聞記事は、コチラ>
http://goo.gl/CezBQO
病院経営陣が勤務するドクターや医療スタッフから非常に高い評価を得ているということ、いろいろな新しい取組みをされているというお話を複数の方から伺っていましたので、その内情を事務局長の神原氏にお話いただくべくお邪魔しました。
外来病棟・療養病棟は、旧市立常磐病院の建物を改装してそのまま使用していますが、新築されたPET・透析センターは、古い建物を取り壊した上で新築されています。
<データ>
一般床120、療養床120、透析床136(一部、休床あり)
常勤医師:25名
診療科:一般内科・腎臓内科・婦人科・外科・整形外科・泌尿器科・小児科・放射線科
緊急医療:病院郡輪番制度の二次救急医療機関
看護師:日勤と夜勤の2交代制
透析中の様子です。1フロア50人、合計100人が同時に人工透析を受けることができます。通常、血液中に溜まった老廃物を腎臓がろ過し、体外へ排出するのですが、透析患者はその腎臓の機能が有効に働かないため、老廃物を人工的に取り除くという人工透析を1回4時間、週3回を受診しなければ、生命の維持できなくなる方々です。いわき市内には、人工透析患者は1,000人おり、そのうち約700人を、ときわ会が引受けています。透析患者の中には、フルタイムで働いている方もおり、その要望から、透析時間は午前、午後のほか、夜間(17:00-22:00)のく3クールが設定されています。
使用されている機器は、最新の全自動透析装置が使用され、自動脱・急速補液・自動返血ができるので、医師・スタッフの工数軽減が図れ、その分患者に向き合う時間ができるそうです。患者はそれぞれベッドに横たわり、ドクターが回診していました。
これが医療ロボットda Vinci (ダヴィンチ)です。内視鏡を併用する手術用ロボットで、おなかの6カ所しか穴を開けず、大きく切らないため、患者への負担が軽いとされています。本体価格が3億円程度と高額なため、国内ではまだ100あまりの病院だけにしか導入されていません(県内の病院では初導入、現在でも浜通りではここだけ)。先進医療としての認可申請はされているものの、医療費は健康保険の対象ではないので、原則として高額の自費診療になります。2012年から前立腺ガンの手術のみ保険が適用されており、常磐病院でも87例の手術実績があるそうです。
PET-CT機器は2管球CT256発というもので、短時間でより幅広い撮影範囲が出来る機械だそうです(浜通りではここだけ)。そうはいっても薬液服用時間等の待ち時間があるので、1日8人がmaxだそうです。
PETで撮影した画像は、東京女子医大にデータ転送され、所属するがん専門医によって画像診断(読診というらしい)されます。実はPET診断は、これが肝なんです。画像撮影自体は高額な機器と放射線スタッフがいれば物理的に可能ですが、その画像を見て、どこにガンの可能性があるかは医師のがん経験値が必要です。それをデータ転送という形で、いわきにいながら、ガン経験豊富な医師に診てもらえるというは大きなメリットです。
乳幼児は測定機器に拒否反応を示すことが多いですが、彼らに協力してもらうため、いろいろな仕掛けがありました。壁にアンパンマンの絵があったり、本が置かれていたり。特筆は、ガチャガチャです。いろいろなかわいい消しゴムが入っているのですが、検査に協力しれくれたこどもに1回分のメダルをあげるという仕掛けです。併設の幼稚園経営者の発想と唸りました。
ドクターに対する扱いは、最大級のおもてなしといって良いと思います。日勤されるすべてのドクターには、少しでも精神的な疲れをとってもらうべく、すべてのドクターに対して個室が用意されています。これは東京から平日毎日東京からスーパーひたちの始発で往診に来られるドクターも例外ではありません。この来て頂いてありがたいというドクターに対する感謝の念は、多くのドクターが感じ入るそうです。
通常、医局(医師が待機したり、打合せする場所)は共用スペースのみで、ドクターは終日誰かの目に触れ、自分ひとりの時間が作れません。また一日に複数の手術をこなすドクターもいますので、精神的な疲れも相当になります。当直明けに診療が続くこともあり、昼休み等のちょっとした仮眠を自室でとれることができれば、大きな疲労回復ができます。これは他の病院では見られない、ときわ会ならではのドクター重視の姿勢の現れでしょう。
常磐病院の常勤ドクターは、決まったお部屋となるため、それぞれの医学書や私物等の持ち込み可能で、診療時間の合間や当直の間等をここで、有意義かつ自由に過ごしていただくことになります。
個室内には宿泊可能なベッドだけでなく、専用のバストイレも室内に新設されています。月曜に東京の自宅から来て、金曜に東京に帰るという生活をしている常勤医にとって、ビジネスホテル並みの快適な個室が用意されていることは、病院選びの大きなアドバンテージになっているでしょう。
職員に対する職場環境作りにも感心させられました。病院内に託児所が設けられ、スタッフは自分の子どもを安心してここに預けて、勤務に専念することができます。他の病院でも託児所を設けているところもありますが、ここの特徴は24時間オープンしていることと、ときわ会が運営する金谷保育園があることです。3才以上の子どもは、朝常磐病院に来て、そこから保育園の送迎バスで、金谷幼稚園に通園していきます(金谷幼稚園は、キティちゃんバスで有名)。夕方は同じく送迎バスで常磐病院に帰ってきて、職員が勤務終了後に託児所に子どもを引き取りにくるシステムです。(病院なので当然ですが)看護師も常駐し、スタッフは安心して勤務に集中することができ、勤務以外の時間を濃密に子どもと接することができるようになったそうです。現在、職員400名ですが、保育室定員数は36名で登録園児が50名です。
1フロア全部が、託児所のために使われています。保育士の資格を持った方が、15名以上常駐しています。訪れたときは3才以上の子は幼稚園に行っている時間帯でしたので、3才未満の子、約10名が保育士さんと遊んでいました。
「ときわの湯」も特筆すべきでしょう。これは天然温泉を利用したドクター・職員専用の温浴施設です。勤務後に疲れた体をほぐしてもらおうと用意しているものです。夜勤明けの看護師や当直中のドクターに好評なだけでなく、上記保育所で預かったもらった子ども達と、日勤明け後の夕方にいっしょにお風呂に入ってから帰宅するという使い方もあるそうで、職員のワークライフバランス向上に寄与しています。ここでも職員の職場環境重視の姿勢(単なる給与や勤務時間数等の待遇だけでなく)が現れています。
職員師弟の教育にも力を入れています。もともとは東京在住のドクター招致のために、師弟のよりよい学習環境を提供しよう考えたのがきっかけで、この夏休みに「ときわ塾」と称して、夏休みの1ヶ月に職員の師弟、小学校1-6年生約20名に声をかけ、病院内で勉強を教えたり、課外学習と称してスポーツをしたり、はたまた埴輪作りやかまぼこ作り体験をしました。教員免許を持つ職員がアレンジしたものの、東京からボランティアで東大生数名がお手伝いしてくれたこともあり、大成功だったそうです。現在は、学期中の夕方にも、お子さんをお預かりして勉強をみてあげることを始めています。
身近に接したことで、東大生に対し変な心のハードルを持たないことは彼らの将来に大きくプラスになると思います。この中から、勉学に励む子どもが育つであろうし、その中の何人かは医療関係に進学するかもしれないことを期待しています。要は裾野を広げていくことにより、より優秀な若者となり、鮭が生まれた川へ帰ってくるように、いわきに医療関係者として帰ってくることを期待しています。これには10年単位のタイムスパンがかかりますが、それは覚悟の上でやっているそうです。神原事務長と話していて、何度もこどもの教育が一番とおっしゃっていたことが印象的でした。私もそれに賛同します。
先日、いわき医療未来会議で、いわきの医療をよくするために何を始めたらよいか議論したところ、こどもたちの職業体験が案として上がっていました。医療の現場をこどもたちに見てもらうことによって、職業に対する具体的なイメージがつき、将来の進路の大きな目安になると考えるからです。また具体的な職業を目指すことにより、学業に向き合う積極的な意味があると考えるからです。まさに神原事務局長は、この職業体験をときわ会内でやろうと考えており、まずは職員師弟を対象にはじめると考えていらっしゃいました。将来的には対外的にも門戸を広げたいとの考えもあるようなので、ぜひ一緒にやらせていただきたいと思いました。
<いわき医療未来会議は、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/31104525.html
ときわ会医師診療の心得10箇条が、掲示されていました。日本医師会で出されているものに準じた形で平易な言葉で書かれていますが、患者重視・職員重視が具体的に現れています。社是というと、誰に向けて書かれたものかわからない、難しい漢字等で戒めるものが多いなか、とても好感を持ちました。
常磐病院の譲渡時においては、建物の無償譲渡及び5年間の市有地無償貸与に加え、8.8億円の常磐病院継承開設費補助金が、ときわ会に対して支出されました。当時の詳細な経緯やその諾否は分りませんが、その後の追加設備投資及び運営は、うまくいっているようです。
※写真掲載は許可をいただいております。
※ときわ塾については、講師として参加された東京大学の学生が書いた記事が医療ガバナンス学会発行のMRICのメルマガがありましたので、以下にそのまま転載します。
ときわ会が全国的に有名となったのは、震災時の水不足により、市内で透析ができなくなったとき、(官に頼らず)自らの全国的な人的ネットワークで、1,000名近い透析患者を東京や千葉、新潟へ避難・搬送させ、患者から大感謝されたことです。また福島県では唯一、ダヴィンチという内視鏡によるロボット手術を導入し、同じく福島県内の私立病院として唯一、PET-CTによるがん検査ができる病院でもあります。
<当時の新聞記事は、コチラ>
http://goo.gl/CezBQO
病院経営陣が勤務するドクターや医療スタッフから非常に高い評価を得ているということ、いろいろな新しい取組みをされているというお話を複数の方から伺っていましたので、その内情を事務局長の神原氏にお話いただくべくお邪魔しました。
外来病棟・療養病棟は、旧市立常磐病院の建物を改装してそのまま使用していますが、新築されたPET・透析センターは、古い建物を取り壊した上で新築されています。
<データ>
一般床120、療養床120、透析床136(一部、休床あり)
常勤医師:25名
診療科:一般内科・腎臓内科・婦人科・外科・整形外科・泌尿器科・小児科・放射線科
緊急医療:病院郡輪番制度の二次救急医療機関
看護師:日勤と夜勤の2交代制
透析中の様子です。1フロア50人、合計100人が同時に人工透析を受けることができます。通常、血液中に溜まった老廃物を腎臓がろ過し、体外へ排出するのですが、透析患者はその腎臓の機能が有効に働かないため、老廃物を人工的に取り除くという人工透析を1回4時間、週3回を受診しなければ、生命の維持できなくなる方々です。いわき市内には、人工透析患者は1,000人おり、そのうち約700人を、ときわ会が引受けています。透析患者の中には、フルタイムで働いている方もおり、その要望から、透析時間は午前、午後のほか、夜間(17:00-22:00)のく3クールが設定されています。
使用されている機器は、最新の全自動透析装置が使用され、自動脱・急速補液・自動返血ができるので、医師・スタッフの工数軽減が図れ、その分患者に向き合う時間ができるそうです。患者はそれぞれベッドに横たわり、ドクターが回診していました。
これが医療ロボットda Vinci (ダヴィンチ)です。内視鏡を併用する手術用ロボットで、おなかの6カ所しか穴を開けず、大きく切らないため、患者への負担が軽いとされています。本体価格が3億円程度と高額なため、国内ではまだ100あまりの病院だけにしか導入されていません(県内の病院では初導入、現在でも浜通りではここだけ)。先進医療としての認可申請はされているものの、医療費は健康保険の対象ではないので、原則として高額の自費診療になります。2012年から前立腺ガンの手術のみ保険が適用されており、常磐病院でも87例の手術実績があるそうです。
PET-CT機器は2管球CT256発というもので、短時間でより幅広い撮影範囲が出来る機械だそうです(浜通りではここだけ)。そうはいっても薬液服用時間等の待ち時間があるので、1日8人がmaxだそうです。
PETで撮影した画像は、東京女子医大にデータ転送され、所属するがん専門医によって画像診断(読診というらしい)されます。実はPET診断は、これが肝なんです。画像撮影自体は高額な機器と放射線スタッフがいれば物理的に可能ですが、その画像を見て、どこにガンの可能性があるかは医師のがん経験値が必要です。それをデータ転送という形で、いわきにいながら、ガン経験豊富な医師に診てもらえるというは大きなメリットです。
乳幼児は測定機器に拒否反応を示すことが多いですが、彼らに協力してもらうため、いろいろな仕掛けがありました。壁にアンパンマンの絵があったり、本が置かれていたり。特筆は、ガチャガチャです。いろいろなかわいい消しゴムが入っているのですが、検査に協力しれくれたこどもに1回分のメダルをあげるという仕掛けです。併設の幼稚園経営者の発想と唸りました。
ドクターに対する扱いは、最大級のおもてなしといって良いと思います。日勤されるすべてのドクターには、少しでも精神的な疲れをとってもらうべく、すべてのドクターに対して個室が用意されています。これは東京から平日毎日東京からスーパーひたちの始発で往診に来られるドクターも例外ではありません。この来て頂いてありがたいというドクターに対する感謝の念は、多くのドクターが感じ入るそうです。
通常、医局(医師が待機したり、打合せする場所)は共用スペースのみで、ドクターは終日誰かの目に触れ、自分ひとりの時間が作れません。また一日に複数の手術をこなすドクターもいますので、精神的な疲れも相当になります。当直明けに診療が続くこともあり、昼休み等のちょっとした仮眠を自室でとれることができれば、大きな疲労回復ができます。これは他の病院では見られない、ときわ会ならではのドクター重視の姿勢の現れでしょう。
常磐病院の常勤ドクターは、決まったお部屋となるため、それぞれの医学書や私物等の持ち込み可能で、診療時間の合間や当直の間等をここで、有意義かつ自由に過ごしていただくことになります。
個室内には宿泊可能なベッドだけでなく、専用のバストイレも室内に新設されています。月曜に東京の自宅から来て、金曜に東京に帰るという生活をしている常勤医にとって、ビジネスホテル並みの快適な個室が用意されていることは、病院選びの大きなアドバンテージになっているでしょう。
職員に対する職場環境作りにも感心させられました。病院内に託児所が設けられ、スタッフは自分の子どもを安心してここに預けて、勤務に専念することができます。他の病院でも託児所を設けているところもありますが、ここの特徴は24時間オープンしていることと、ときわ会が運営する金谷保育園があることです。3才以上の子どもは、朝常磐病院に来て、そこから保育園の送迎バスで、金谷幼稚園に通園していきます(金谷幼稚園は、キティちゃんバスで有名)。夕方は同じく送迎バスで常磐病院に帰ってきて、職員が勤務終了後に託児所に子どもを引き取りにくるシステムです。(病院なので当然ですが)看護師も常駐し、スタッフは安心して勤務に集中することができ、勤務以外の時間を濃密に子どもと接することができるようになったそうです。現在、職員400名ですが、保育室定員数は36名で登録園児が50名です。
1フロア全部が、託児所のために使われています。保育士の資格を持った方が、15名以上常駐しています。訪れたときは3才以上の子は幼稚園に行っている時間帯でしたので、3才未満の子、約10名が保育士さんと遊んでいました。
「ときわの湯」も特筆すべきでしょう。これは天然温泉を利用したドクター・職員専用の温浴施設です。勤務後に疲れた体をほぐしてもらおうと用意しているものです。夜勤明けの看護師や当直中のドクターに好評なだけでなく、上記保育所で預かったもらった子ども達と、日勤明け後の夕方にいっしょにお風呂に入ってから帰宅するという使い方もあるそうで、職員のワークライフバランス向上に寄与しています。ここでも職員の職場環境重視の姿勢(単なる給与や勤務時間数等の待遇だけでなく)が現れています。
職員師弟の教育にも力を入れています。もともとは東京在住のドクター招致のために、師弟のよりよい学習環境を提供しよう考えたのがきっかけで、この夏休みに「ときわ塾」と称して、夏休みの1ヶ月に職員の師弟、小学校1-6年生約20名に声をかけ、病院内で勉強を教えたり、課外学習と称してスポーツをしたり、はたまた埴輪作りやかまぼこ作り体験をしました。教員免許を持つ職員がアレンジしたものの、東京からボランティアで東大生数名がお手伝いしてくれたこともあり、大成功だったそうです。現在は、学期中の夕方にも、お子さんをお預かりして勉強をみてあげることを始めています。
身近に接したことで、東大生に対し変な心のハードルを持たないことは彼らの将来に大きくプラスになると思います。この中から、勉学に励む子どもが育つであろうし、その中の何人かは医療関係に進学するかもしれないことを期待しています。要は裾野を広げていくことにより、より優秀な若者となり、鮭が生まれた川へ帰ってくるように、いわきに医療関係者として帰ってくることを期待しています。これには10年単位のタイムスパンがかかりますが、それは覚悟の上でやっているそうです。神原事務長と話していて、何度もこどもの教育が一番とおっしゃっていたことが印象的でした。私もそれに賛同します。
先日、いわき医療未来会議で、いわきの医療をよくするために何を始めたらよいか議論したところ、こどもたちの職業体験が案として上がっていました。医療の現場をこどもたちに見てもらうことによって、職業に対する具体的なイメージがつき、将来の進路の大きな目安になると考えるからです。また具体的な職業を目指すことにより、学業に向き合う積極的な意味があると考えるからです。まさに神原事務局長は、この職業体験をときわ会内でやろうと考えており、まずは職員師弟を対象にはじめると考えていらっしゃいました。将来的には対外的にも門戸を広げたいとの考えもあるようなので、ぜひ一緒にやらせていただきたいと思いました。
<いわき医療未来会議は、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/31104525.html
ときわ会医師診療の心得10箇条が、掲示されていました。日本医師会で出されているものに準じた形で平易な言葉で書かれていますが、患者重視・職員重視が具体的に現れています。社是というと、誰に向けて書かれたものかわからない、難しい漢字等で戒めるものが多いなか、とても好感を持ちました。
常磐病院の譲渡時においては、建物の無償譲渡及び5年間の市有地無償貸与に加え、8.8億円の常磐病院継承開設費補助金が、ときわ会に対して支出されました。当時の詳細な経緯やその諾否は分りませんが、その後の追加設備投資及び運営は、うまくいっているようです。
※写真掲載は許可をいただいております。
※ときわ塾については、講師として参加された東京大学の学生が書いた記事が医療ガバナンス学会発行のMRICのメルマガがありましたので、以下にそのまま転載します。
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いわき、ときわ塾を訪れて
東京大学大学院工学系研究科原子力国際専攻
修士課程一年
前橋 佑樹
2013年9月12日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
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●「いわきの子供たちに勉強を教えてくれませんか?」
そうときわ会事務局長、神原章僚さんに言われたのは、今年の三月の事でした。当時私は友人と一緒に、東京で親交のある競輪選手の古川功二選手の応援に、福島県いわき市を訪れていました。そこで開かれた宴会の席での話だったのですが、その時は、分かりました、考えておきます、と深く考えずに返事をしてしまいました。しかしその後あっという間に話は進み、七月には「「魁!ときわ塾」をやろうと思います。小学生が20名ほど参加予定です。」と、受け入れ体制が整った旨のメールをいただきました。私は、東大剣道部の後輩の小田紘之君(東大工学部四年)と、その研究室の先輩の太田耕右君(東大大学院工学系研究科一年)と一緒に八月の六日から九日まで再びいわきに行くことになりました。
●ときわ会
ときわ塾を主催するときわ会グループは、いわき市を中心に、人工透析と泌尿器疾患を中心に診療する医療グループです。一方で、介護老人保健施設や幼稚園を持つなど、医療のみに限らない活動をしています。私がときわ会を知ったのは、東日本大震災のとき、大学の先輩がいわき市の透析患者の搬送を協力した縁からでした。三月にいわきを訪れたときにご紹介いただき、いわき市内の津波被害のあった沿岸部を案内していただきました。その際、震災から2年経った当時でも残ったままのガレキや、津波にさらわれた家の残骸など、震災の爪痕を目の当たりにし、自分に何が出来るだろうと考えたことがこの度いわきに再び行こうと思ったきっかけの一つでした。
●ときわ塾
ときわ塾は、いわき泌尿器科内の部屋を借りて行われました。小学生低学年10名、高学年9名を対象に、朝8時から夕方5時頃まで速算や読書、学校の宿題、外国人講師を招いての英会話などの勉強が行われ、テニスやボードゲームなどのレクリエーションも行われます。その他、戦争についてのお話や、座禅、新地高校の高村泰広先生による宇宙についての講義など、いわゆる塾というイメージによらない様々な活動が行われました。我々が赴いたときはちょうどお昼時で、子供たちと給食を一緒に食べることになりました。初めての出会いにも関わらず、ときわ塾の瀬谷知之先生から「東大の先生が来てくれました!」と紹介を受けると、子供たちはどんどん質問してきます。「先生好きな食べ物なんですか?」「先生ギリシャ数字知ってますか?」(なんと子供たちはモノからデカまで全部言えた。)「彼女いますか?」など、大人だったら初対面の人にまず聞けないようなことまで平気で突っ込んできます。普段小学生と接する機会のない私にはそれだけで十分新鮮であり、あっという間にいわきの子供たちに親しみを感じるようになりました。
はじめ、我々の仕事は子供たちに勉強を教えることと考えていたのですが、神原さん、瀬谷先生に、「子供たちと本気で接して、話してほしい」と言われ、考えを少し変えました。子供たちと同様に、全力で速算、速読に取り組む。7日の午後には体育館で紙飛行機を飛ばしたのですが、全力で取り組んだ結果、見事に子供に負けてしまいました。子供たちは我々に勝つと本気で喜びます。我々が出来ることは微々たるもので、何を伝えられるのか分からなかったのですが、子供たちの喜ぶ姿を見て、少しでも役に立てたのかな、と感じることが出来ました。
最終日、瀬谷先生の計らいで、1時間ほど子供たちから質問を受け付ける時間をいただき、その中で、「どうやったら東大に行けますか?」と質問されました。そもそも小学生が大学のことを考えているのが私は驚きだったのですが、出来るだけ正直に、「目標を持って、楽しく勉強して下さい。」と答えました。抽象的な答えになってしまい、どこまで伝わったか分かりませんが、将来一人でも多くの人が、自分の目指すところに行ってくれればと思い、いわきを後にしました。
●現場からの復興
私はこの春から東大大学院工学系研究科の原子力国際専攻に進学しました。この専攻に進学しようと決めたのは震災から1年と少し経った去年の6月ごろ、報道される情報が正しいのか間違っているのか、自分の周りは安全なのか安全でないのか分からず、自分で考えられるようになりたいと考えたのがきっかけでした。しかし、いざ進学して勉強してもわからないことだらけ、原発再稼働はいいのか悪いのか、最近だと汚染水の海洋への流出などは大丈夫なのか、中々答えを出すことは出来ません。ですが、今回福島へ行って子供たちとふれ合い、復興という観点から何をすべきなのかが少し見えた気がしました。
福島の復興というと、原発事故の収束や、立ち入り禁止区域の除染などの印象が先行しますが、一方で人材育成、教育も非常に大事なことだと思います。子供の成長できない土地に未来はないからです。被災地の教育というと、人材がいなくなり、苦慮するイメージがありますが、必ずしもそうではありません。例えば、福島県立相馬高校は震災以後、外部の講師を招き、継続的に指導いただくことで、大学合格実績を飛躍的に伸ばし、今年は遂に東大合格者を出しました。この時に主体となって外部講師に働きかけたのが、震災当時相馬高校に勤められていた前述の高村泰広先生です。地域の教員が外部の方とうまく交流し、被災地の教育レベルを上げた例だと言えます。いわきのときわ塾も同様で、地域で活躍するときわ会が主体となり、我々の様な県外の人間と協力する事で、小学生たちの教育レベルを引き上げようという取り組みです。大学受験のように結果が明確に出るものではないのですぐに効果が見えるものではありませんが、保護者の方からの評判はよいようで、冬にも開催してほしいという希望が多数出ているとのことです。私に出来ることは、継続していわきに行き、子供たちと接すること、そして新しい仲間を紹介することです。原子力を学ぶ者としては、つい原発再稼働の是非など大きな事ばかり考えてしまいますが、現地に入って自分に出来ることをすることの大事さを気付かされました。
【略歴】
平成 1年 兵庫県三田市に生まれる。
平成 9年 如月剣友会にて剣道を始める。
平成14年 兵庫県私立灘中学校・高等学校に入学。剣道部に所属、主将を務める。
平成21年 東京大学理科一類に入学し、運動会剣道部に入部する。
平成25年 東京大学工学部を卒業し、同大学院工学系研究科原子力国際専攻に入学する。
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ご覧になる環境により、文字化けを起こすことがあります。その際はHPより原稿をご覧いただけますのでご確認ください。
MRIC by 医療ガバナンス学会 http://medg.jp
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配信・解除依頼はホームページ http://medg.jp/mt/ の「お問い合わせ」からご連絡ください。手続きに数日要することがありますので、ご了承ください。
今回の記事は転送歓迎します。その際にはMRICの記事である旨ご紹介いただけましたら幸いです。
MRIC by 医療ガバナンス学会 http://medg.jp
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