現在、全国の議会では開かれた議会を目指して、①議会基本条例の制定、②議会報告会の開催を検討している自治体が多いです。これは、これまでの閉ざされた議会、すなわち市民自らが傍聴等に来ない限り、議会という密室で討議がなされている、また市政に対してどのような付加価値を付けているか、市民からまるで理解できない、という指摘に対応するものです。①議会基本条例によって、開かれた議会のルール作りをし、②実際に、議会が閉ざされた議場を出て、市民と開かれた対話するという趣旨なのです。

趣旨自体は良いのですが、「神は細部に宿る」といいます。詳細がきちんとしていなければ、趣旨が達成されないおそれもあります。本当に①②が機能するものなのか、市民にとって有益なものなのか、調べる必要があります。福島県内13市のうち、①を制定済みなのは、会津若松市と伊達市のみ(制定予定:福島市、喜多方市)です。②を実施しているのは、会津若松市・喜多方市・伊達市 のみです。ちょうど、南相馬市が試験的に(議会基本条例の制定に先んじて)議会報告会を、実施するとの情報を頂いたので、議会報告会を視察させていただくこととしました。

<南相馬市については、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/30580688.html
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会場となった、鹿島区にある西部コミュニティセンターです。市役所から車で10分程度ところにあり、応急仮設住宅に囲まれた畑の中にありました。鹿島区は30km外で、特段の居住・移動制限がなかったことから、南相馬市の仮設住宅の多くが、この鹿島区に建設されたそうです。50-80人くらいは収容できる立派な施設です。
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タイトル:市民との意見交換会
運営:市議会議員23名全員が中心となって設営、運営
回数:4日間で12カ所開催(原町地区6カ所、小高地区3カ所、鹿島地区3カ所)
参加人数:各回20-30人程度
周知方法:全戸配布されている議会報と、臨時チラシ
開催時間:夜開催18:30-20:00を中心に、昼開催もあり
根拠法:議会基本条例の制定に先んじて、試験的に実施

表題のタイトルは「市民との意見交換」。議会報告会、すなわち議会で何が議論されているかの説明ではなく、市民の意見に耳を傾けるという点に多くの時間を割かれていました。参加されたのは約20名、議員個人からの参加呼びかけ、いわゆる動員はなく、あくまで自主参加の方ばかりです。当初思い描いていた、議会報告会のイメージとは違いましたが、参加した市民はそれぞれの強い思いで語られていました。8名の方がそれぞれ5分~15分程度の質問をされました。質問は多岐の及びましたが、その多くは東電賠償に関するものでした。いわきの場合、(復旧のステージから進んで)復興にどう向かうかに論点が移っていますが、南相馬市の場合、復旧はどうするか賠償をどうするかのステージからまだ先に進めない状況でした。参考までに抜粋を記載します。
 
<東電賠償に関して>
・進捗が遅い、市長は何をやっているのか
・当初説明と実際の賠償が大きく異なっており、一貫していない
・東電責任者が出てこない
・(小高区・原町区は継続なのに)鹿島区の賠償打切りは納得できない
・市の中に、東電賠償担当部局を設置して、ワンストップサービスしてほしい
<その他>
・畑の除染に関して、天地逆転とゼオライト散布は効果が薄い
・義援金の配分に関して 、胎児に配分がないのは納得できない
・市は、東電を監視しているという姿勢を見せるために1Fを定期的に視察してほしい
・特定避難勧奨区域を見直して欲しい
・ 市に期待しない市民が増えている。できないものはできないといってほしい
・被災地子ども支援法の実質的な効果を出して欲しい
・常磐線・常磐道の早期開通を望む
・当該意見交換会の周知方法にもっと工夫が必要 

以上を踏まえて、私が感じた今回の市民との意見交換会の課題は、以下のとおりです。
<基本的な課題>
・行政執行機関に対する要望に対し、チェック機関たる議会が責任ある回答ができないことがある
・本来、議会として承認された内容のみしか、回答できない
・周知は十分か(議会報が、積極的に読まれていない)
・どの地区で、何回開催するか(現実的な回数)
・どの議員が、どの地区を担当するか(地元に、良い顔をしたい)

<当日の課題>
・長時間とうとうと演説する市民(質問と意見が混在し、座長が制止できない)
・議員個人の考えを述べることはできないとされているが、実際には質問に対して、議員個人が回答するため個人の考えが入らざるを得ない
・東電に対する市民の不満が爆発し、市民代表の議員として同調せざるをえない空気が存在する
 
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1.5時間の中で、質問者は8人でした。東電に対する不満をつらつらと話した市民、10分以上自説をとうとうと述べる市民もいらっしゃり、東電に対する強い思いや、市政に対する厳しい意見もありました。座長として、取り仕切った市議会議員の力量によって、場の進め方や雰囲気が大きく変わると思います。
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これまで、議会と市民の距離は非常に遠いものでした。この市民との意見交換会を拝見しても、その距離は縮まっていないと感じました。いわきにおいても議会からの情報発信を進める方向については論を待たないのですが、市民からの意見を聞く方法については、やればいいというものではなく、実質的に効果がでるよう工夫が必要だと感じました。

※写真掲載については、許可を得ています。
※以上の内容は、南相馬市の公式見解ではなく、すべて私が感じたことです。