「西洋美術とキリスト教は密接に関連している」、頭では分っているつもりでも、生の感覚がつかめない。本書は画中のキリスト教の主要な主題からサブストーリー的なものまでを、イラストやマンガもおり混ぜて、コンパクトかつディープに解説した事典で、キリスト教の知識も同時に学べます(信者とっては常識かもしれませんが)。

私は大学3年時に、見聞のためヨーロッパ各国を2ヶ月近くかけて旅行しました。結果としてローマ滞在が過半を占めたのですが、バチカン市国をはじめとして、宗教色の強い町です。暇に任せて美術館や史跡を訪ね歩きましたが、それらの歴史的建造物や美術と、宗教は切り離せません。ストーリーや背景を知らずして、目の前にある作品を理解できないというのは非常に違和感を感じていました。 
_SS500_
本書は「受胎告知」「最後の晩餐」「キリストの磔刑」等有名なテーマも網羅されています。また、聖書内に留まらず、司教の祭服や様々な聖母子像の比較など、興味深い目からウロコの話も勉強になります。そういえばロシア正教のイコンは、Iconのこと、そうアイコン、Windowsのアイコンのことだと初めて知りました。

キリスト教トリビアのネタ帳といったら、信者から怒られそうですが、キリスト教に縁もゆかりもない私にとって、キリスト教ってそういう物語の積み重ねなんだ、と分ったことで同教に対する親近度・見方も大分変わってきました。このような著作が日本人の手によって日本語で編まれていることに感謝です。母国語で外国の文化を理解できることは、そうそう他の国では容易でないことです。先人達の作り上げてきてくれた日本国に感謝です。