小名浜港では、震災でダメージを受けた岸壁の復旧作業とともに、懸案であった東港の埋め立て作業が進んでいます。その進捗を確認すべく、小名浜港湾事務所にお願いして視察してきました。この視察は、同僚の小野潤三議員のアレンジです。
ご案内いただいたのは、国土交通省 東北地方整備局 小名浜港湾事務所の 魚谷憲(うおたにさとし)所長です。まず事務所で、小名浜港及び工事概要を説明いただきました。小名浜港くらいのある程度大きな港で、商業港、漁港、レジャーボート港が併設されている港はめずらしいとのこと。
資料提供:国土交通省 小名浜港湾事務所様
小名浜港の各埠頭にはそれぞれの役割分担があります。
1号埠頭:ららみゅう
2号埠頭:アクアマリン福嶋
3号埠頭:石炭(輸入)、金属鉱(輸入)
4号埠頭:化学薬品(輸出)、セメント(移入)
5.6号埠頭:石炭(輸入)、金属鉱(輸入)
7号埠頭:石炭(輸入・移出)、金属鉱(輸入)
藤原埠頭:製材(輸入)
大剣埠頭(重油移出入)、石油製品(移入)
これらの各埠頭を、小名浜港周辺に集積している工業系企業が利用しています。
【化学薬品】日本化成、【酸化亜鉛】東邦亜鉛、【銅製品】小名浜精錬、【食塩】日本海水、【木材】小名浜材木団地、小名浜合板、【酸化チタン】堺化学工業、【化学製品】クレハ
<小名浜港の全景港湾図は、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/19590551.html
小名浜港は、石炭の国際バルク戦略港湾(日本で2つだけ)に指定され、国際輸入の基地として、また輸入した石炭の国内港間輸送(フィーダー、といいます)の拠点として期待されています。東京電力の広野火力発電所及び常磐共同火力発電所が消費する石炭は、小名浜港からの供給です。いわき市は、常磐炭田採炭時代には、この小名浜港から石炭を移出していたことを考えると、輸入(主にオーストラリアから)していることに時代の移り変わりを感じます。
国土交通省が保有する工事管理用の船で、港内を視察しました。30ft級の船で、かなりの人数が乗れます。国土交通省の管轄は港湾の整備、福島県の管轄は港湾の管理という建て付けになっていますので、この船の使用目的は港湾の整備工事の管理目的なので、日常的に出動するものではないそうです。
港によっては舟艇の混雑、航路が矮小等の理由により船の出入りをコントロールしていますが、小名浜港は、基本的に船の出入りをコントロールしていません。よって、漁船・貨物船を問わず、公有水面を自由に航行可能です。ただ、岸壁・船着き場だけは別です。上記のとおり、港湾施設は福島県が管理者となっているので、岸壁への接岸は県への事前届出・承認が必要です。このあたりが、市民と港との間に心の壁を作っている要因かもしれません。国土交通省は、独自の船着き場を保有しています。
沖合から見る旧魚市場。他の施設が巨大なだけに小さく見えます。
埋立作業中の東港地区国際物流ターミナルの予定地です。画面中央に土砂をどんどん入れています。漁業関係者との取り決めで、放射性物質を含まない(100bq/kg未満)土砂のみを入れるということになっているそうです。現在の岸壁付近の水深は14m程度ですので、目標としている18mを実現するには、大規模な港湾内浚渫が必要になりそうです。
現在の小名浜港の防波堤内の一定地区を埋め立て、臨港地区と大水深岸壁を同時に整備しようというのが、「東港埋立計画」、その埋立地と内陸の3号埠頭を、橋でつなぐのが「臨港道路計画」です(小名浜港湾事務所HPより)。
東港地区国際物流ターミナル予定地の外周部には、すでに巨大なケーソンは打ち込み済みです。後はひたすら土砂をいれていくだけになっていました。小名浜港の課題のひとつは、大水深岸壁の不足から(現在の水深は深いところで14m程度)滞船(船舶の沖待ちでの入港待ち)が発生していることです。一刻も早く岸壁の復旧をすすめると同時に、より荷主の負担軽減を軽くするため、荷役作業の弾力化等、荷主に対して小名浜港の利用を促す方策が求められています。
大剣埠頭に設置されている、自走式ガントリークレーン(40TEU/時)を沖合から見ました。高さは約100mだそうです。
<大剣埠頭のガントリークレーンは、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/19084423.html
ちょうど、7号埠頭で石炭バルク船が岸壁に横付けされ、石炭の積み出し作業を行なっていました。2台のローダーの先についている巨大なバケットで石炭を陸揚げしていきます。バケットのような旧タイプでの陸揚げ作業は、1艘につき1週間近くかかるそうです。
一方、自動で石炭を掻き出して陸揚げするタイプの新しい機械でやると、1艘あたり3-4日間で陸揚げできるとのこと。現場作業でもハイテク化が進んでいるようです。
風力発電の実証実験が今年から福島県沖で始まります。その発電施設のパーツは小名浜港に集結しつつあります。写真は風車の土台が海流で流されないように、海底と土台をつなぎ止めるチェーンです。いったん何トンあるかわからなくくらい重そうです。
<完成イメージ:小名浜港湾事務所HPより>
将来は片側1車線+歩行者用歩道が整備され、(一定の制限はあるものの)一般人も自由に東港に行けるようになりそうです。
風力発電の基地となることが予定されている藤原埠頭です。震災の影響で、岸壁突端のケーソンがずれてしまい岸壁としては使用困難となってしまったので、ケーソンを撤去しやり直しています。当面の対応として応急措置がとられていました。
ご案内いただいたのは、国土交通省 東北地方整備局 小名浜港湾事務所の 魚谷憲(うおたにさとし)所長です。まず事務所で、小名浜港及び工事概要を説明いただきました。小名浜港くらいのある程度大きな港で、商業港、漁港、レジャーボート港が併設されている港はめずらしいとのこと。
資料提供:国土交通省 小名浜港湾事務所様
小名浜港の各埠頭にはそれぞれの役割分担があります。
1号埠頭:ららみゅう
2号埠頭:アクアマリン福嶋
3号埠頭:石炭(輸入)、金属鉱(輸入)
4号埠頭:化学薬品(輸出)、セメント(移入)
5.6号埠頭:石炭(輸入)、金属鉱(輸入)
7号埠頭:石炭(輸入・移出)、金属鉱(輸入)
藤原埠頭:製材(輸入)
大剣埠頭(重油移出入)、石油製品(移入)
これらの各埠頭を、小名浜港周辺に集積している工業系企業が利用しています。
【化学薬品】日本化成、【酸化亜鉛】東邦亜鉛、【銅製品】小名浜精錬、【食塩】日本海水、【木材】小名浜材木団地、小名浜合板、【酸化チタン】堺化学工業、【化学製品】クレハ
<小名浜港の全景港湾図は、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/19590551.html
小名浜港は、石炭の国際バルク戦略港湾(日本で2つだけ)に指定され、国際輸入の基地として、また輸入した石炭の国内港間輸送(フィーダー、といいます)の拠点として期待されています。東京電力の広野火力発電所及び常磐共同火力発電所が消費する石炭は、小名浜港からの供給です。いわき市は、常磐炭田採炭時代には、この小名浜港から石炭を移出していたことを考えると、輸入(主にオーストラリアから)していることに時代の移り変わりを感じます。
国土交通省が保有する工事管理用の船で、港内を視察しました。30ft級の船で、かなりの人数が乗れます。国土交通省の管轄は港湾の整備、福島県の管轄は港湾の管理という建て付けになっていますので、この船の使用目的は港湾の整備工事の管理目的なので、日常的に出動するものではないそうです。
港によっては舟艇の混雑、航路が矮小等の理由により船の出入りをコントロールしていますが、小名浜港は、基本的に船の出入りをコントロールしていません。よって、漁船・貨物船を問わず、公有水面を自由に航行可能です。ただ、岸壁・船着き場だけは別です。上記のとおり、港湾施設は福島県が管理者となっているので、岸壁への接岸は県への事前届出・承認が必要です。このあたりが、市民と港との間に心の壁を作っている要因かもしれません。国土交通省は、独自の船着き場を保有しています。
沖合から見る旧魚市場。他の施設が巨大なだけに小さく見えます。
埋立作業中の東港地区国際物流ターミナルの予定地です。画面中央に土砂をどんどん入れています。漁業関係者との取り決めで、放射性物質を含まない(100bq/kg未満)土砂のみを入れるということになっているそうです。現在の岸壁付近の水深は14m程度ですので、目標としている18mを実現するには、大規模な港湾内浚渫が必要になりそうです。
現在の小名浜港の防波堤内の一定地区を埋め立て、臨港地区と大水深岸壁を同時に整備しようというのが、「東港埋立計画」、その埋立地と内陸の3号埠頭を、橋でつなぐのが「臨港道路計画」です(小名浜港湾事務所HPより)。
東港地区国際物流ターミナル予定地の外周部には、すでに巨大なケーソンは打ち込み済みです。後はひたすら土砂をいれていくだけになっていました。小名浜港の課題のひとつは、大水深岸壁の不足から(現在の水深は深いところで14m程度)滞船(船舶の沖待ちでの入港待ち)が発生していることです。一刻も早く岸壁の復旧をすすめると同時に、より荷主の負担軽減を軽くするため、荷役作業の弾力化等、荷主に対して小名浜港の利用を促す方策が求められています。
大剣埠頭に設置されている、自走式ガントリークレーン(40TEU/時)を沖合から見ました。高さは約100mだそうです。
<大剣埠頭のガントリークレーンは、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/19084423.html
ちょうど、7号埠頭で石炭バルク船が岸壁に横付けされ、石炭の積み出し作業を行なっていました。2台のローダーの先についている巨大なバケットで石炭を陸揚げしていきます。バケットのような旧タイプでの陸揚げ作業は、1艘につき1週間近くかかるそうです。
一方、自動で石炭を掻き出して陸揚げするタイプの新しい機械でやると、1艘あたり3-4日間で陸揚げできるとのこと。現場作業でもハイテク化が進んでいるようです。
風力発電の実証実験が今年から福島県沖で始まります。その発電施設のパーツは小名浜港に集結しつつあります。写真は風車の土台が海流で流されないように、海底と土台をつなぎ止めるチェーンです。いったん何トンあるかわからなくくらい重そうです。
東港と3号埠頭を結ぶ臨港道路の建設も進んでいます。海に架ける橋なので、土台となる橋梁部分をまず作っています。将来的には橋のライトアップも検討中とのこと。観光資源という観点からは、ライトアップは必須だと思います。
<完成イメージ:小名浜港湾事務所HPより>
小名浜港東港地区国際物流ターミナルと3号ふ頭を結ぶ臨港道路の構造には、PCエクストラドーズド橋というデザイン性に優れた形式で、小名浜港の景観のランドマークとなることも期待されています。
将来は片側1車線+歩行者用歩道が整備され、(一定の制限はあるものの)一般人も自由に東港に行けるようになりそうです。
風力発電の基地となることが予定されている藤原埠頭です。震災の影響で、岸壁突端のケーソンがずれてしまい岸壁としては使用困難となってしまったので、ケーソンを撤去しやり直しています。当面の対応として応急措置がとられていました。
日経新聞(2013.6.4)によれば、東京電力や東北電力、日本製紙グループ、東邦亜鉛、クレハ、三菱マテリアルが出資する小名浜製錬など11社は、石炭の共同輸入を始める検討に入ったそうです。2018年にも福島県の小名浜港に大型船で一括輸送し、輸送費を個別で運ぶより4割安くするとのこと。それに合わせて国交省は18年までに小名浜港に現在は14メートルが最深なのを水深18メートルの岸壁を整備予定です。新設後は12万トン級の大型船が着岸でき1隻あたりの輸送能力は5割増える。港湾内の混雑緩和で小名浜港を利用する企業全体で年12億円のコスト削減効果がある。
計画では、大型船でオーストラリアやインドネシアから小名浜港まで石炭を輸送し、同港周辺で使う分を降ろす。残った分を小型船に小分けしたり、そのまま大型船を使ったりして、東北地方と茨城県の5港に輸送する。共同輸送で海外からの輸送コストは平均で1トン1619円と個別に運ぶ場合に比べ4割下がるそうです。
復旧作業と東港埋め立て作業が進んでいることが、今回の視察で把握できました。一方、港湾に関しては、国・県・荷役組合等の思惑が必ずしも一致していないため、将来的にどのように小名浜港を利用していくかという共通認識が完全でないところが、アキレス腱かもしれません。