地方競馬、競輪、競艇、オートレースの4競技を総称して「公営ギャンブル」と呼びます。賭け事=社会風俗の悪化と単純に片付けられないところが興味深い。公営ですからいわき市の場合、財政上は特別会計といって(計算は別にしますが)元のお財布は一緒、胴元がいわき市そのものです。
 
そもそも公営ギャンブルは、敗戦後の地方財政復興の財源として編み出されたものです。いわき市(当時は平市)においても戦後復興を遂げるために、競輪事業からの貢献(財政上の用語でいうと、競輪事業特別会計から一般会計への繰出金がもたらされる、という表現を使います)が非常に大きかったです。当時の一般会計に繰入れられたオカネは、第一に教育費、第二には社会資本投資に向けられました。競輪は、庶民の娯楽として定着し、多額の収益をもたらした一方、市政への多額の貢献をもたらしてくれました。しかし高度成長以降、社会からの「逆風」にさらされ、さらにバブル崩壊後の急速な売上減によって、撤退する自治体が相次ぎ、慢性的な赤字に陥っているところも多く、赤字を埋めるために税を投入するという、本末転倒な惨状にある自治体もあるそうです。
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本書の大部分は、公営ギャンブル4競技の歴史の通観に割かれています。正直、私は公営ギャンブルの生い立ちやこれまでの財政貢献について知らないことが多く、面白く読ませてもらいました。ギャンブルを通して見た昭和史といってもいいかもしれません。競馬に関しては、騒擾事件が頻出した草創期、ハイセイコーを生んだ成長期、3冠馬「オグリキャップ」を輩出した成熟期と、通史的な流れがわかります。その後バブル崩壊を境に右肩下がりに売上は落ち込み、現在はすでに多くの自治体が撤退したがっている状況です。レジャーの種類が多様化し、ファンの高齢化進んでいく中、レトロ・懐かしさだけでは、現行の仕組みでは限界に来ているという見方があります(一方、近年になって売上を伸ばしている場もあります)。

著者は、方策の一つとして民営化と効率化を提案しています。例えばカジノで有名なラスベガスやシンガポールでも(厳格なルールを設定して)民間企業が運営を行なっています。よく考えるとそもそも収益事業を、運営失敗のリスクを公が取って運営することが不自然なかも知れません。現在、日本ではカジノは禁止されていますが、カジノ構想・カジノ特区制度等の合法化の動きもあります。

幸い、いわき平競輪は2009年にバンクや施設の全面改修を行ない、日本で最も新しい設備を備えた施設のひとつとなっており、昔の淫靡な汚い雰囲気はなくなっています(レトロ趣向にとってはさみしいのでしょうが)。売上もなんとか維持し、競輪事業会計はプラスの収益、今でも一般会計に対して毎年4-5億円の貢献をしてくれています。この状態だからこそ次の一手の選択肢は多い。大きなビジョンとしてどういう方向性にもっていくか、きちんと検証したいと思っています。

<いわき平競輪については、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/19356654.html
http://www.mikito.biz/archives/24407039.html