さざれ石は、日本国歌「君が代」の歌詞に出てくる空想上の石です。歌詞中のさざれ石(細石)は文字通り、細かい石・小石の意味だそうです。(現実的にありえないのですが)小石が天文学的な時間をかけることによって、まとまって巌(いわお)となり、さらにその上に苔が生えるまでの過程が、非常に長い年月を表す比喩として用いられています。個人的に国家の品格という意味では、この国歌は誠に品があるものだと思っています。
確かに長い年月をかけて小石の欠片の隙間を炭酸カルシウム(CaCO3)や水酸化鉄が化学反応で埋まっていき、1つの大きな岩の塊に変化することもあるかもしれません。ただ石灰岩が石灰質の作用によってコンクリート状に固まることもあるとはいえ、国歌にするほど普遍的なものではないような気がします。
さざれ石の固まってできた嚴(いわお)だそうですが、それはともかく小さな石が、このような大きな岩にすくすく成長するとは、ちょっと信じられません。もっともそこは空想科学・イマジネーション、というか神話の世界の話なのでしょう。
神話というとギリシャ神話をイメージしますが、日本人こそ神話を信じる国なのかもしれません。なぜなら皇紀2600年(神話上の神武天皇が即位した年から数えた年数)に、大きな記念行事が全国各地で開催されたことはは未だ記憶に新しいところです(余談ですが、少年ジャンプ連載のマンガNARUTOのうちは一族が使う瞳術(天照、イザナギ、イザナミ、月読等)は、日本神話からヒントを得ているのでしょう)。
ここ京都嵐山にも、さざれ石の由来の標石がありました。全国各地に君が代の由来となったと「さざれ石」があるようです。岐阜県揖斐川町さざれ石公園の他、京都嵐山にも、ここがさざれ石の本家であるとの標識がありました。その由来は嵯峨天皇がここで休憩をとり、和歌を詠んだからだそうです。
少なくとも下記の場所は、それぞれさざれ石の本家と主張しているようです。
・三重県二見浦の夫婦岩
・京都の勧修寺
・京都の賀茂御祖神社
・台湾烏来の高砂義勇隊慰霊碑前
・京都市上京区の護王神社
・鎌倉の鶴岡八幡宮
・千鳥ケ淵の戦没者墓ここのさざれ石は、京都嵐山駅そばのSL博物館の庭にありました。神話の世界と同時に、天皇の系統を正当性を頑なに守る我々日本人は現実的な面がある一方、筋道立てたロジックできちっと説明するのが難しい人種なのかもしれませんね。