サブタイトルが「稲オタクが考えた面白すぎる農法!」です。読むきっかけは、知人からこのGWに、田んぼの田植えの手伝いの声がかかったからです。小学校の田植え実習体験以来の作業なので、Amazonでちょっと勉強してから本番に望むべく、購入しました。
著者は、農家家庭の静岡県立農業高校出身の元ヤンキー。大学卒業後、一般就職しドロップアウト、青年海外協力隊(エチオピア)で2年間を過ごします。ここで自然の植物が持つ力に目覚め帰国、一度は一般企業に就職するものの、農業への思いを捨てきれず、兼業農家、そして専業農家への決断をします。見よう見まねの体当たりで、無農薬・有機農法の酒米「山田錦」の生産に成功した方です。また「コシヒカリ」の突然変異体を発見し、巨大胚芽米「カミアカリ」の農水省品種登録した、自他ともに認める日本一の稲オタクです。
著者の原典はエチオピア大地での農業と日本の普通の農業の彼我の差です。すなわちエチオピアでは自然に任せ、(肥料もやらず、手間もかけず)収穫量は風任せ、それでも人々が生きていく分は収穫できる。一方、日本は、小さい土地に一所懸命に、手間暇をかけて収穫量増大を目指します。収穫量増大のためなら、機械もいれますし、化学肥料や農薬、ビニール栽培、暖房も最大限に活用します。どちらが良い悪いでなく、農業指導にエチオピアに来た著者が考えたことは、いったいどちらが豊かなのだろうかということ。そうなんです、日本の土壌が貧しいんです。日本は国土の7割が山地のため、急流の川が多いです。急流が大地を削り、豊かな土壌を海へ流してしまう。いまの地表面は残りかすのようなところが多く、どうしても地力が弱いという面があります。そこで著者は、その日本で、作物の大量生産前にどのような農業が行なわれてきたか原点に立ち返ろうを思い立つわけです。
なぜ雑草は生えるのか?何のために耕すのか?肥料を入れないとどうなるのか?放って置いたら稲は育たないのか?なぜ田植えが必要なのか?土を育てるってどういうことか?なぜ田んぼに水を張るのか?おいしい米とおいしくない米の違いは何か?どうして病害虫にやられるのか?そもそも土って何なのか・・・それらすべてについて、著者の(完璧ではないにしろ)実験・試行で明らかにされていくのは痛快です。おそらく農業関係者も知らないことばかりでしょう。
本の内容はかなり技術的なところに入っていくわけですが、静岡県のスタンダードが分るだけでも、素人的に面白い。
・通常の田んぼから収穫できる標準的な量は、1反7俵
・田植えは、苗6-7本で1株、1坪に50株植える
・稲穂が出て約40-55日で草刈り
・1俵=60kg
・肥料を入れる分だけ収穫量は増える(13俵までいける)が、米粒に含まれるタンパク質が増えるため味が落ちる
・田植え後、まったく世話をしない(草取り、肥料なし)でも、1反2俵収穫できる。これが田んぼの素の実力。
・慣行農業では、農協から買ってきた稚苗(2.5葉程度)を機械化農業で植えるのが一般的
著者はいろいろな実験をやっていて興味深いです。著者は稲オタク。希少種の保存や、放射線照射等によらない突然変異体の安定化等も、試験栽培地で継続的に行なっているそうです。
酒米で有名な山田錦の限定栽培では、契約している静岡の純米酒メーカー青島酒造で、著者の名前を冠した、「松下米40」として販売されています。
http://www.yygenki.com/SHOP/121011S.html
著者いわく、日本の農業には可能性があるのだということ。TPPで大打撃を受けるのは漫然と米を作り、農協の言い値で買い上げてもらっている人達です。著者は影響を受けません。すでに販路は確保されているし、有機JASの厳しい基準審査を過去に経験しているので、世界でのブランド化についてハードルは低いと考えているからです。値段だけの競争に巻き込まれないために、どう付加価値を持たせるかは、本来、減反政策を始めた昭和40年代に考えておくべきでした。そのとき(単純な減反政策でなく、有機農法をはじめとする高付加価値への)多様な選択肢を用意していたら、いまになってTPPにおびえることもなかったでしょう。それは今になっても変わっていません。その土地その土地ごとに合わせた農法とその多様性にこそ、さまざまな可能性が眠っています。

著者の原典はエチオピア大地での農業と日本の普通の農業の彼我の差です。すなわちエチオピアでは自然に任せ、(肥料もやらず、手間もかけず)収穫量は風任せ、それでも人々が生きていく分は収穫できる。一方、日本は、小さい土地に一所懸命に、手間暇をかけて収穫量増大を目指します。収穫量増大のためなら、機械もいれますし、化学肥料や農薬、ビニール栽培、暖房も最大限に活用します。どちらが良い悪いでなく、農業指導にエチオピアに来た著者が考えたことは、いったいどちらが豊かなのだろうかということ。そうなんです、日本の土壌が貧しいんです。日本は国土の7割が山地のため、急流の川が多いです。急流が大地を削り、豊かな土壌を海へ流してしまう。いまの地表面は残りかすのようなところが多く、どうしても地力が弱いという面があります。そこで著者は、その日本で、作物の大量生産前にどのような農業が行なわれてきたか原点に立ち返ろうを思い立つわけです。
なぜ雑草は生えるのか?何のために耕すのか?肥料を入れないとどうなるのか?放って置いたら稲は育たないのか?なぜ田植えが必要なのか?土を育てるってどういうことか?なぜ田んぼに水を張るのか?おいしい米とおいしくない米の違いは何か?どうして病害虫にやられるのか?そもそも土って何なのか・・・それらすべてについて、著者の(完璧ではないにしろ)実験・試行で明らかにされていくのは痛快です。おそらく農業関係者も知らないことばかりでしょう。
本の内容はかなり技術的なところに入っていくわけですが、静岡県のスタンダードが分るだけでも、素人的に面白い。
・通常の田んぼから収穫できる標準的な量は、1反7俵
・田植えは、苗6-7本で1株、1坪に50株植える
・稲穂が出て約40-55日で草刈り
・1俵=60kg
・肥料を入れる分だけ収穫量は増える(13俵までいける)が、米粒に含まれるタンパク質が増えるため味が落ちる
・田植え後、まったく世話をしない(草取り、肥料なし)でも、1反2俵収穫できる。これが田んぼの素の実力。
・慣行農業では、農協から買ってきた稚苗(2.5葉程度)を機械化農業で植えるのが一般的
著者はいろいろな実験をやっていて興味深いです。著者は稲オタク。希少種の保存や、放射線照射等によらない突然変異体の安定化等も、試験栽培地で継続的に行なっているそうです。
酒米で有名な山田錦の限定栽培では、契約している静岡の純米酒メーカー青島酒造で、著者の名前を冠した、「松下米40」として販売されています。
http://www.yygenki.com/SHOP/121011S.html
著者いわく、日本の農業には可能性があるのだということ。TPPで大打撃を受けるのは漫然と米を作り、農協の言い値で買い上げてもらっている人達です。著者は影響を受けません。すでに販路は確保されているし、有機JASの厳しい基準審査を過去に経験しているので、世界でのブランド化についてハードルは低いと考えているからです。値段だけの競争に巻き込まれないために、どう付加価値を持たせるかは、本来、減反政策を始めた昭和40年代に考えておくべきでした。そのとき(単純な減反政策でなく、有機農法をはじめとする高付加価値への)多様な選択肢を用意していたら、いまになってTPPにおびえることもなかったでしょう。それは今になっても変わっていません。その土地その土地ごとに合わせた農法とその多様性にこそ、さまざまな可能性が眠っています。