滋賀県の大津市議会は、議員提案で「大津市子どものいじめの防止に関する条例」を制定し、今月から施行開始になりました。これは平成23年10月に起きた、大津市いじめ自殺事件を契機に、議会が独自に全国に先駆けて条例を制定したものです。当時、滋賀県大津市内の市立中学校の当時2年生の男子生徒が、いじめを苦に自宅で自殺するに至った事件です。事件前後の学校と教育委員会の隠蔽体質が問題視され、大きく報道されたのは、記憶に新しいところです。
大津市議会事務局の担当者から経緯、課題等を伺ってきました。まず議員提案による条例制定の仕組みを作り(平成23年6月施行)、その後にいじめ防止条例を制定する(平成25年4月施行)という2段階で行なわれました。
条例の特徴は、以下の5点です。
・子どもの役割を明確化
第7条「子どもは、互いに思いやり共に支え合い、いじめのない明るい学校生活に努めるものとする」(条文そのまま)。ともすれば子どもを取り巻く環境のみに力点が置かれ、当事者そのものである子どもについて見落とされがちです。子どもに対する押しつけではないかという反対意見もありましたが、そもそも子どもはどうあるべきかを明確化しました。
・市執行部に対して行動計画策定を義務づけ
第9条「市は、基本理念にのっとり、子どもが安心して生活し、学ぶことができるいじめのない社会の構築を総合的かつ計画的に推進するため、いじめの防止に関する行動計画を策定するものとする」(条文そのまま)。
市の執行部(教育委員会でなく)に対して、いじめ防止の行動計画策定を義務づけました。
これまでは学校は教育委員会の管理下にあって、市の執行部は手出しができませんでした。
これにより学校は、行動計画という一定の拘束を受けることになります。
・事件を風化させない仕組み
第10条「子どもをいじめから守り、社会全体でいじめの防止への取組を推進するために、毎年6月及び10月をいじめ防止啓発月間とする」(条文そのまま)。いわき市でも23年前にこどもの自殺がありましたが、年月の経過による事件の風化は否めません。忘れさせないために、年2回の啓発活動を義務づけました。
・財政的措置
第13条「市は、この条例の目的を達成するため、適切な財政的措置を講ずるものとする」(条文そのまま)。
いじめ対策費として3億4千万円を平成25年度予算に計上しました。市の単独経費としても約2億円の支出を見込んでいます。その内容は53校ある市立小中学校へ、それぞれ教員資格を有した1名のいじめ対策専属の教諭を配置することが主です。担任を持たないこの教諭は、いじめ相談、調査や、他校との連絡、啓発活動等を専属として1年間活動する予定です。急遽新たに53名の教員採用となるため、退職者や産休中で教員資格を有した方等を活用しているそうです。今月から始まった制度で、どのように運用されるかは未知数ですが、いずれ本当にそのような活動が各校ごとに必要か、市の予算を毎年2億円も投じて、どれほど効果があるのか、他の手段はないのか等の検証がなされていく予定です。
・市長の付属機関にいじめを守る委員会設置
第14条「市は、相談を受けたいじめについて、必要な調査、調整を行なうため、市長の附属機関として、大津の子どもをいじめから守る委員会を置く」(条文そのまま)。いじめ対策を教育委員会任せにせず、市長の責任で調査等を行なうこととしました。また委員会メンバーを、外部の弁護士、第三者とし、透明性を高めています。
これらの条例は、大津市立中学校におけるいじめに関する第三者調査委員会の報告書の提言内容がベースになっています。ホームページに全編を掲載されています(プライバシー保護等のため、黒塗り部分あり)。全文を同中学校職員全員に配布したそうです。
http://www.city.otsu.shiga.jp/www/contents/1359682792674/
報告書によれば、教育委員会の組織や内部メンバーを防御する隠蔽体質とともに、マスコミの過剰報道が問題点として指摘されています。全文を読むのはちょっと大変なので、もう少し説明すると以下の項目となっています。非常に要点を突いて問題点が抽出されています。急いで作成されたため校正が今一歩であること、委員の立場によって文章にやや偏りはあるという欠点を補ってあまりある、内容が濃い報告書になっています。後は、指摘された問題を解決するために、誰が、いつ、どうやって行動するかを知恵を絞って考えることです。
○学校の事後対応の問題点
・ 事実究明の不徹底
・教員間の教訓の共有化の不存在
・事態沈静化の重視
・いじめ加害者への対応
・スクールカウンセラーのあり方
・学校のあり方
○市教育員会の事後対応の問題点
・平時における危機管理体制整備の欠如
・市教育委員会の主体性、指導力の無さ
・学校任せの事実解明
・市教育委員会から県教育委員会、県教育委員会から文部科学省への報告の遅れ及び内容の杜撰さ
・市教育委員会の委員の問題
○事件当事者としての学校・市教育委員会共通の問題点
・初期対応の拙さ
・事実調査より法的対応を意識した対応を取ったこと
・調査の打切りが早いこと
・事後への対応に主体性がないこと
・自死の原因を家庭環境問題へ逃げたことー組織的防衛に走ったこと
・学校、市教育委員会が自らの手で事実関係を解明し、それを生徒、保護者に返すという意識に欠けていること
・地域関係者との連携の不備
・調査の透明性を確保する必要性
・報道に対する対応のまずさ
・課題としての遺族への対応
○マスコミの問題点
・センセーショナルな報道合戦
・生徒に対する大手新聞社の過剰取材
・ 事実究明の不徹底
・教員間の教訓の共有化の不存在
・事態沈静化の重視
・いじめ加害者への対応
・スクールカウンセラーのあり方
・学校のあり方
○市教育員会の事後対応の問題点
・平時における危機管理体制整備の欠如
・市教育委員会の主体性、指導力の無さ
・学校任せの事実解明
・市教育委員会から県教育委員会、県教育委員会から文部科学省への報告の遅れ及び内容の杜撰さ
・市教育委員会の委員の問題
○事件当事者としての学校・市教育委員会共通の問題点
・初期対応の拙さ
・事実調査より法的対応を意識した対応を取ったこと
・調査の打切りが早いこと
・事後への対応に主体性がないこと
・自死の原因を家庭環境問題へ逃げたことー組織的防衛に走ったこと
・学校、市教育委員会が自らの手で事実関係を解明し、それを生徒、保護者に返すという意識に欠けていること
・地域関係者との連携の不備
・調査の透明性を確保する必要性
・報道に対する対応のまずさ
・課題としての遺族への対応
○マスコミの問題点
・センセーショナルな報道合戦
・生徒に対する大手新聞社の過剰取材
・求められる真摯な報道姿勢
この提言に基づき、市長部局には「いじめ対策推進室」及び常設の第三者機関として「大津の子どもをいじめから守る委員会」を、教育委員会には「学校安全推進室」が設置されました。現在、教育委員会で提言に対する具体的なアクションプランを作成中だそうです。第三者報告書内で、教育委員会の隠蔽体質が何度も指摘されていますので、どのようなアクションを自らとるのか注目していきたいと思います。