各地でJRの赤字路線の廃線化が進んでいます。廃線の後は、バスを走らせられればまだ良いほうで、廃墟になってしまうケースもあるようです。いわきも小名浜地区で、イオンモールを開発提案者としたウォーターフロント開発計画が進んでいます。それは隣接した小名浜臨港鉄道基地の移転を伴うものなので、跡地の活用方法を検討中です。

その例としてニューヨークのハイライン(The High Line)を取り上げたいと思います。ハイラインは、廃線になった列車の高架橋をリノベーションして公園にしようという、ニューヨークでも特に注目されてる都市再開発プロジェクトの1つです。
http://www.thehighline.org/about/park-information 

ハイラインは地上3階相当にあるので、地上からは階段、もしくはエレベータで上がっていきます。
R0017846

階段を上がっていくと、、、
R0017847

そこには、一面の開けた空が広がっています。
R0017848

ハイラインは3階相当の高さがあるので、NY街なかの様々なものを見下ろすことができます。写真は50丁目あたりの道路渋滞をゆうゆうを見下ろしているところです。奥には、道路をまたいでビルとビルを4階部分でつなぐ連絡橋が見えます。日本では、道路法と建築基準法で厳格に規制されているので、こういった光景は珍しいですが、マンハッタンではしばしば見かけます。
R0017854

道路上のハイラインには、窓ガラス越しにベンチが置かれているので、落下の危険等はなく、子どもでも安全です。観光客にとっては、マンハッタンを行きかう交通を、すぐ真上から見下ろすことができるので、好評のようです。
R0017860

階段状のベンチでは観光客だけでなく、近隣の人がペーパーバッグを持ち込んで、読書している姿も見られます。
R0017862
R0017868

線路のレールをいろいろな形で残して、昔日の面影を残しています。線路をそのまま残す、そこに木・花を植栽する、レールと同じ高さまで石を敷き詰めて歩きやすくする等。そこでは歩行者、ジョギングをする人、写真を撮る人等が見られます。
R0017866
R0017869

ハイラインの建設にあたって功績のあった方、資金の寄付をされた方、この地に由緒ある方等は、銘板によりその功績等を、通行人に周知しています。これに選ばれることは非常に名誉なことであり、ハイライン建設にあたり強い動機付けになっています。再開発事業のツールのひとつとして参考になります。
R0017870

 ビルに突入する線路跡。過日は、線路が倉庫ビル4階部分に直結になっており、積み卸しが倉庫内でできるという画期的な積み卸しをやっていたと思われます。いまとなってはそれも貴重なモニュメントの一つになっています。
R0017856

大きい階段状のベンチは大人気。地元の高校生・大学生が友人とくつろいでいます。日本の大学生がくつろぐ場所って?(友人宅、カラオケ、バー等)を考えると、学生の熟成度の相違(プラスもマイナスも)を感じます。
R0017872

ハンディキャップ用のエレベータも完備。よく見るとシースルーエレベータで、かつ機械部分が塔屋にない最新型です。地味な機械ですが、細部のデザインにかなり工夫があると感心しました。
R0017874

目立たないといえば、ベンチ。線路から突き出た盲腸の形で、随所に通路がはみ出る形でベンチが置かれていますう。100%実用性はないのですが、意外性とオブジェとしての創造性で風景に溶け合っています。
R0017878

個人的に一押しなのがこのショット。左手前が道路上にあるベンチになっており、座ると正面にストリート(マンハッタンの横軸)を見下ろすことができます。工夫はベンチに座った目線から風景が切り取れるように、H型鋼を全面に置いていることです。これにより、街なかの景色が風景画のような形で切り取って見えることになります。アーティストらしい発想です。
R0017882

ハイライン沿いは、過去に倉庫・食肉解体・工業地帯であったため、古びた倉庫・事務所ビルが立ち並んでいました。ハイラインの完成に合わせて、新築ビルの建設ラッシュになっています。一部の地区の再開発事業が起爆剤となって、地域全体が活性化していくお手本です。
R0017887

 ビルの壁一面を使ったモダンアート。インパクトある画は、ハイラインの通行人から目を引くので、広告効果は抜群です。遠くから見ると詳細に描かれているように見えますが、近くに寄るとペイントの粗さが目立ちます。このへんの適当さがNYスタイルなのかもしれません。
R0017891

工事現場を観察しました。マンハッタン島は岩盤でできており、地震に強いと言われています。したがって建物は鉄筋が入っていないレンガ積みのものがたくさん見られます。新築のビルディングであっても、非構造体の壁面はブロック積みです。写真をよく見ると鉄筋が入っていないブロックもあります(もちろん構造体は、鉄筋コンクリートです)。なお、耐震の費用対効果を考えてのことだとは思いますが、地震はこないといわれてきたニューヨークにも、数年前に震度3があったそうです。

別件ですが、ニューヨークは、ハドソン川沿い約60kmの地点にインディアンポイント原発(加圧式軽水炉型、1974年運転開始)を抱えています。ニューヨーク市民の総電気使用量の30%がこれに頼っているとのことですが、老朽化のため水漏れや運転停止などトラブルが頻発傾向だそうです。インディアンポイント原発から半径80km 内には、ニューヨーク市の800 万人を含め2,000 万人近くの人々が居住しているそうですから、仮に災害が起こった場合、避難は不可能です。3.11を踏まえ、NYが廃炉決定するかどうか注目です。
R0017888

ハイラインはまだまだ完成途上で、さらに北進していく予定で、建設が進められています。これからどのようなものに進化していくか楽しみです。
R0017894