第4回いわきサンシャインマラソンに伴う経済波及効果を、6億1,500万円と推計しました。これは長野マラソン大会が同規模であること(どちらも参加者9,000人弱)、継続した大会であること(いわき4回、長野12回)、市の人口規模が同程度であること(いわき33万人、長野38万人)、地方都市であること(どちらも首都圏でない)、から、同大会をベンチマークとして、私的なざっくり推計を行なったものです。本大会の運営費が8,400万円であるということと比較すれば、非常に大きな投資効果を得たといえるでしょう。
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経済波及効果のうち、市外参加者によるものが370百万円と、市内参加者の102百万円を3倍以上、大きく上回ります。これは市外参加者が落とす単価(宿泊費・交通費を中心に)が、市内参加者に比べて非常に大きいことが主たる要因です。いわきサンシャインマラソンが、いわき市民のいわき市民によるいわき市民のための大会であることは、十分理解しているつもりですが、あえて経済波及効果の面だけに着目すれば、市外ランナーをターゲットとして誘客すべきということになります。この層は宿泊のついでに、温泉やアクアマリンパーク等に立ち寄り周遊する可能性があります。

参考までに他大会の出場者数、経済波及効果を掲げておきます。東京マラソンの運営費が巨額の19億円といわれていますが、その経済効果240億円であるなら、道路閉鎖によるマイナスの効果等があるとしてもぜひ開催すべきという判断になるのかと思います。
ランキング

(出典:長野経済研究所をもとに作成)

経済波及効果の増加を求めるならば、キードライバーは、参加者数、なかでも市外からの参加者数であることが分かりました。またもうひとつのドライバーは客単価、すなわち来て下さった方に、どう楽しんでいってもらうかです。

市外からの参加者数増加策ですが、まず市外参加者がどういう要因でISMに参加する意思決定をしたのか把握することが重要と思います。前回でも書きましたが、関東からの参加者の多くが、東京マラソンの外れ組であること、そしてわざわざ関東から来て頂くからにはそれなりにマラソン愛好家である可能性が高いです。また復興途上のいわきを応援したいという層もいらっしゃいます。幸いなことに、ランナーの多くが参考にしている「RunNet」の口コミサイトのランキングで、ISMは上位(今日現在、東京マラソンを押さえて、堂々の全国第3位!)に位置しており、これを維持できれば、関東からの集客は比較的難しくないと思います。ヤラセやサクラはだめですが、ぜひ第4回ISMに参加された方の積極的な評価をお願いしたいと思います。
RunNet

それと客単価向上について。いわき市内を周遊し、できればもう1泊するような取組みが欲しい。RunNetの口コミをざっと閲覧する限り、「いわきを応援するために参加した」「来てくれてありがとう、との沿道からの声援が嬉しい」とのコメントが多数見られます。これらの暖かい声に応えるべく、コンタクト時(申込時においては、ネット申込画面、受渡し時においてはフェイスtoフェイスで、資料送付時には封筒内の資料で)に、いわきの魅力を伝えられる体系的なモノが欲しいですね(今回頂いた資料も内容がバラバラで、店舗側の売らんかな、の意図を感じるパンフがあった)。もっともこれは実行委員会というよりも、いわきの商業者の課題ですね。

ランナー増加のためには,、ネックもあります。例えば以下のような場面で運営が困難になるケースが想定されます。一方、ISMも第4回となり、運営ノウハウも集積してきたでしょうから、きっと克服できるでしょう。
・スタート地点である陸上競技場のキャパシティ(RunNetの口コミで、スタート地点での運営に多くのランナーの不満が集中)
・大動脈である鹿島街道の封鎖時間が長くなること等による、警備体制の強化必要
・各種備品の予備の準備が必要(今回も支給されるべき貴重品袋が品切れになってランナーから不満発生、またゴール後の無料カジキ丼が品切れになったり、カニ汁の調理が間に合わない事態発生)

サンシャインマラソン実行委員会は解散せず、通年活動になるそうです(今日現在、市役所5階に同看板設置中)。来年はさらに、期待できると思います。


<試算の前提・留意事項>
公的な団体等から委託を受けて試算したものではなく、手元にある公表データだけで、以下の仮定や条件の下で私的な計算を行なったものです。引用は自由ですが「一定の前提に基づく、吉田実貴人による推計」である旨を記載ください。
・総支出額の推計にあたり、参加ランナー及び同行者の消費支出額、開催に要した大会運営費、その他イベントでの消費額を推計の対象としました。
・エントリー受付者8,896人のうち、実際に現地で参加した割合を90%とし、推計対象人数としました。
・同行者人数は、ランナー1人り当たり0.5人と仮定しました。
・市内からの参加者は日帰り、市外からの参加者は宿泊するものと仮定しました。
・平均消費額は、長野経済研究所発表の2012.7.2プレスリリース(以下、長野経済研究所といいます)を参考に、以下のテーブルを用いました。 
単価
・大会運営に関わる歳出として、いわきサンシャインマラソン実行委員会の決算報告を基に、81百万円を大会運営費として推計対象に加えました。
・その他支出として、ゴール会場である小名浜マリンパーク会場で消費された金額を4百万円(20店舗×20万円/店の売上増)と見積もりました。
・以上の金額を合計し、総支出額(直接効果)としました。
・間接効果としては、直接効果により需要が増加した産業部門が、ほかの産業部門から原材料を購入することで生産を誘発する一次生産誘発額と、一次生産誘発額までの過程で生まれた雇用者所得の一部が、家計消費等に回ることで生じる需要と生産への波及効果である二次生産誘発額が考えられます。本来は、いわき市の産業連関表を用いてきちんと計算すべきですが、簡易的に長野経済研究所プレスリリースの直接効果と経済波及効果との割合である0.61を、直接効果に対して間接効果が発生する割合として用いました。 

<サンシャインマラソンの参加者属性分析は、コチラ>
http://www.mikito.biz/archives/23495678.html