大学等の地域の連携したまちづくり推進事業成果報告会が、2/11にいわき市保健福祉センターで開催されました。これは、いわき市の各部局が特定のテーマについて、大学等に調査研究を委託し、その1年間の成果報告の機会です。委託先の大学等とは、東日本国際大学、いわき明星大学、福島高専、筑波大学です。
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報告があったのは、以下の5つのテーマです。
1. 沿岸部被災自治会における情報伝達・共有にむけたポータルサイトの実証実験及び有効性の検証(行政経営部が委託、いわき明星大学・福島工業専門学校が共同受託)
先進事例として飯舘村や富岡町が、住民にタブレット端末を配布しています。同様にいわき市でも実証実験を薄磯、豊間地区で行っています。

2. 被災児童生徒に対するこころのケアの進め方と支援システムの構築(教育センターが委託、いわき明星大学 心理相談センターが受託)
被災し不登校などの生徒とその親に対して、個別心理相談等を実施しました。

3. 焼却飛灰からの放射性セシウムの除去と回収による除染システムの構築(生活環境部が委託、福島工業専門学校が受託)
福島高専が、飛灰からセシウムを除去する「水熱処理」技術を発見しました。「コンビニの肉まん蒸し器」に飛灰を入れると、セシウムが30-70%が抽出され、さらにそれを吸着剤で回収すると、ぐっと減量化できる技術です。

4. 大型商業施設と共存した地域経済復興に関する研究(都市計画部と商工観光部が委託、東日本国際大学が受託)
小名浜のイオンモール計画と地域経済との結びつきの研究です。類似事例として藤沢市のテラスモール湘南の調査報告がありました。

5. 震災による買い物環境の変化と、将来に向けた買い物利便性の確保と向上について(商工観光部が委託、筑波大学が受託)
市内全域でアンケートを行い、カテゴリーごとに、買い物の満足度や移動距離、車の有無等の関係性の研究です。

詳細については、配布のレジュメをご参考ください(下記サイトにPDFとして置きました)。
http://goo.gl/xJCCA

私見は以下の通り。
1. 情報伝達ツールとして、携帯電話やタブレットを使用する仕組みは良い。そのキモは、高齢者を中心とする情報弱者にその使い方を教える若者をどれだけ各地域で育成できるかと、(そもそも膨大な情報の海の中を整理して)当該個人に役に立つ情報を的確にピンポイントで提供できるかということ。
2. こころに傷を持つ生徒が多数存在することが理解できました。一方、その人数や支援体制をどこまでフォローすべきかは今後も勉強していきたいです。
3. 汚染飛灰を、熱した蒸気を通すことにより、濃度の濃いセシウムを一定割合抽出できる画期的な技術を披露いただいた。これの素晴らしい点は、硫酸や塩酸等の薬品を使わないこと、また抽出したものが異常な高濃度にならないため扱いやすいこと、また、残った飛灰(セシウムをまだ含んでいる)の中のセシウムは、強力に固着しているので水に溶け出さない、すなわち通常の処分場に埋め立て雨水にさらしても大丈夫ということです。まだラボ、実験段階とのことですが、実用化に向けてぜひ支援していきたいです。
4. イオンモールの出店について大枠が決まっているものの、各ステークホルダーの思惑は違うようです。典型的な総論賛成、各論反対です。利用する消費者の視点を忘れないようにしてほしいです。
5. 市内の買い物は、自動車利用が圧倒的ということが浮き彫りになりました。今後、団塊の世代が自家用車を自ら運転できなくなり、買い物弱者となったときにどうするかです。そのときどこまで行政が支援すべきかが今後の検討課題です。
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筑波大学の研究成果は、学内で学生の最優秀論文賞を受賞されたとのこと。指導教授の方も、望外の喜びのようでした。また今回の発表は、筑波大学生にとっても晴れの舞台でもあり、プレゼンの後には、教授を囲んで大学ホームページでの紹介用の記念撮影をされていました。

これはまさにいわき市と大学等とのWIN-WINの関係だと思います。すなわち市としては、重要なテーマについて地元に精通した優秀な研究者と学生によって、最先端科学技術もしくは統計技術等を用いた研究をしてもらい、市政に生かすことができること。大学にとっては、現実に起きているテーマを、委託費をもらって調査・研究することができることにより、研究成果が直接役に立つこと、またそれを論文として学界等に発表できることです。私の目から見ても登壇した発表者の方は、ご自分の成果に自信を持ち、また素晴らしい報告だったと思います。