今日は電車での移動時間が多かったので、一冊読み切りました。著者の専門はまちづくりで、大学の教授の職にあります。しかしながら研究の手段として、地域住民の合意形成のためにワークショップを試したところ、失敗や紆余曲折等を経て、一定の評価を得たとのことです。
私も、前職の経営アドバイスの中で、幹部職員や従業員への情報共有、意識付け、協働作業の重要性と難しさを感じていましたので、素直に著者の経歴に納得しました。
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まずワークショップ(WS)とは何か?から入ります。もちろん作業服販売店ではないのですが、勉強会、研修、研究集会等に近いですが、適切な和訳はありません。著者は、ワークショップとは、言葉、頭中心に行うのではなく、身体の動きも含めて、全身で感じたものを個人個人が出し合いながら、集団で作り上げていくもの、という定義をしています。要は、受け身の講義の受講でなく、参加者自らアイデアを出しあって、いいものに昇華させると私は理解しました。

その特徴は1.身体性、2.協働性、3.創造性、4.共有性、5.プロセス重視です。とくに創造性、プロセス重視が私の琴線に触れました。まず前者ですが、通常の会議では、提案者が素案を出し、参加者がそれを受入れるか、もしくはそれの批判、ダメだしをすることに留まります。一方、WSは各人が知恵を出し合い、批判するのではく建設的なスパイラルでいいものを作っていくということです。また後者、プロセス重視は、最も重要かもしれません。理詰めで正しいことよりも、参加者ひいてはその裏にいる大多数の意思を、意見出しのプロセスを経て、反映していく、そして納得感を出していくことです。

しばしば行政の立場からは、WSがガス抜きもしくは住民合意形成の証拠として利用されがちです。WSは決して「合意形成」のためのものでなく、「集団創造」の手段です。その意味では、形式的にWSを住民意思反映のために使うのは、間違っています。より良いアイデアを出していくためのツールといっていいでしょう。

WSで最も重要なのが、ファシリテーター(WS全体の流れを取り仕切るプロデューサー兼司会進行役)の役割です。残念ながら、ファシリテーターの役を務めることができる人材が少ないというのが現状です。今までたくさんの会議を経験してきましたが、私を含めてその役に見合う方が少ない、もし適切にWSをとりまとめて下さる方がいらっしゃったら適切な報酬を支払ったとしてもその有用性は甚大です。逆に私自身がファシリテーター適任者になれたら良いし、そのためには何をすべきかを考えた一冊でした。
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個人的には、個人個人の壁を壊すのが目的、という点がヒットしました。人それぞれ、立場が違うので、思いも違います。それをワークショップの中でさらけ出して、それぞの壁を壊し、関係性を再構築するのです。
下の図は、通常の関係性です。それぞれに壁(サイロ)があります。

それを各人がWSで話しあうことによって、情報を共有し、全体のために何がよいのかを一緒になって考えることができることが目的です。
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