いわき市輩出の人物で、歴史の教科書に登場するという観点では、もっとも有名な安藤信正のマンガ物語です。通り一遍の「坂下門外の変」の紹介ではなく、その背景、信正の考え、そして失脚後の奥羽越列藩同盟、磐城平城の落城、幽閉等が描かれています。

興味を引かれたのが、作品の作られ方です。単に、一作者が個人的に取材をして作画したわけではありません。いわき市自体が制作の主導となり、いわき地域学會(馬目順一代表)に監修を依頼し、プロに選考をお願いして作画を公募していることです。選考委員には、釣りキチ三平の矢口高尾氏やサイボーグ009の石ノ森章太郎氏らが含まれています。地域学會が監修を行っているので、時代考証等は十分なされています。

こういった本は、主役をヒーローにする礼賛一辺倒の視点が多く見られます。しかしこちらは公平な視点で描いたそうで、必ずしも礼賛一辺倒ではありません。個人的にはいわきの郷土愛の本なので、もっと肩入れしてもよいのではないかと思いますが。

会津の「八重の桜」が大河ドラマ化されました。会津は白虎隊の逸話と城自体がが残ったという点で大きなアドバンテージがありますが、単純に人物のなした功罪だけみれば、安藤信正が大河ドラマの主人公になったとしても不思議はありません。私見ですが、大河ドラマになりそうな信正のエピソードがたくさんあります。機会をみつけて、NHKへ働きかけていきたい。

(順不同)
1. テロである坂下門外の変に会うが、負傷しながらも政務を続行する
2. 幕府と朝廷との関係を深める公武合体を、成功させる
3. 奥羽越列藩同盟・磐城平城の合戦の当事者となり、負け戦を経験する
4. 桜田門外の変で散った井伊直政の死を隠して、水戸藩と彦根藩との内戦を、回避する
5. ヒュースケン暗殺を口実とするイギリス・フランスによる日本の植民地化を、回避する
6. 米国の支配下だった小笠原諸島を、日本領有宣言する
7. ロシアによる対馬占領を、戦争をせずに退去させる
8. 寺社奉行として厳格な法律運用し、ズル賢い者を逮捕していく
9. 小大名にもかかわらず、41歳で外国係老中(総理兼外務大臣)となる異例の出世スピードとなる
10. 磐城平藩の産業奨励する

一般の書店で販売されていませんが、中央図書館等で貸出しています。ぜひ一読されることをお勧めします。

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