日本で唯一、潜水艦のホンモノが屋外展示されている施島が広島県呉市にあります。正式名は、海上自衛隊呉史料館、愛称てつのくじら館です。場所は、大和ミュージアムのすぐとなりです。実は呉市には、日本の海上自衛隊の潜水隊の基地が置かれています(2つしかありません。もうひとつは横須賀市)。公道から見る潜水艦は、巨大、全長だけで100m、高さ10m以上あります。
潜水艦の形状や性能等は軍事機密なので、微妙な箇所は、あえて改修しなおして、展示しているそうです。この潜水艦あきしおは、純国産の潜水艦で、20年近く使用されました。平成16年に退役し、特殊な巨大クレーンで陸揚げされ、艤装をしなおして、この場所に展示されています。あまりに巨大すぎるため、移動は真夜中に公道を封鎖して行われ、邪魔になる信号機を全部撤去した上で、移動したそうです。
「てつのくじら館」という愛称は、公募で当時6才だった女の子のネーミングが採用されたそうです。開館から10年経過し、その女の子も高校生になる年頃になっているでしょう。なお、入場料は、なんと無料!です。
この潜水艦展示で、なんといっても訪れたいのが、潜水艦内部です。ホンモノの潜水艦の司令室や館長室を見学でき、ソナーや潜望鏡等の搭載機器を実際に触れて、見ることができるということ。写真撮影も自由です。軍事機密に触れないようにモデファイしているとのことですが、展示されているのはあくまでもホンモノです。
潜望鏡を覗かせて頂きましたが、呉湾内の艦船がくっきり確認できました。なお、潜水艦内で潜望鏡を扱うことができるのは、館長以下わずか数名だそうです。乗組員であっても潜望鏡に触れることはまったくないとのこと。
潜望鏡が2台設置され、各種探索機器が並んでいます。大人がぎりぎり立てる高さ、広さは4.5畳程度。
海図を広げて作戦指揮する部屋。部屋といっても3畳ほどの広さもないでしょう。ここで自船、他船の位置を三次元で把握し、船の運航を指揮します。
作戦指揮する部屋には、ところ狭しと各種計器が設置されています。
レーダー?ソナー?らしき計器も。
潜水艦の中には、乗組員のためのトイレやシャワーもあります。真水の使用は厳しく制限され、乗組員ひとりあたりの真水の使用は15リットル(飲料、食料含む)だそうです。通常の陸上生活の1/4程度とのこと。
士官用ベッド。士官であっても3人部屋、3段ベッドです。高さが50-60㎝しかないので、寝床に潜り込むのに、慣れが必要です。あわてて飛び起きたら、間違いなく上のベッドに頭を打ち付けてしまいます。なお、士官でなく一般の乗組員も同様の3段ベッドですが、個室でなく大部屋になります。
艦長室だけが、1名個室です。といっても広さは2畳あるかないか。艦長といえば、乗組員全員の命を預かる重責、役職もかなり上の位の方がつきます。当然、海上自衛隊幹部候補生でしょうし、その中でも選ばれた優秀な隊員です。そんな精鋭であっても、このような個室で海中を数ヶ月にわたって、禁欲的に勤務する。国を守るために、損得抜きで任務にあたる、真の意味でのエリートでなければ務まりません。
注)写真はすべて許可を受けて撮影しております。