医療崩壊寸前のいわきの医療事情を改善するために、日本政府が認めている医学部新設にぜひ、いわき市も応募して欲しい。残念ながら市民が提出した医学部誘致に関する請願書に対し、志師会・つつじの会・公明党の3会派が、3/12開催の市議会本会議で反対票を投じました。反対派は、討論の中で反対の理由として以下7点を挙げています。それに対する当方の反論を述べます。
- 上記請願は、市民が議会に対して、この絶好の機会にいわき市が医学部を誘致する「姿勢」を表明して欲しいというものです。姿勢を示すことについて、大学名は必要ありません。
- 関東や関西、東北を含む複数の大学が医大新設の意向を有しており、今後、設置の準備状況等の中から、候補が絞られていきます。誘致を希望するいわき市市民から特定の大学を指名すべき性質のものではありません。
- 大学を特定するとしても、それは市執行部・議会の役割であり、その役割まで請願を出した市民に求めるのは、筋が通りません。
反対理由2. 全国医学部長会議をはじめ、被災3県に医学部を設置している福島県立医科大学、東北大学医学部、岩手医科大学が医学部新設に反対を表明している
- そもそも全国組織である日本医師会は、医大の新設そのものに反対しており、いわきに限らず、医学部新設には反対の立場です。一方、安倍首相は医大新設を認可するとしています。国の公募に、いわき市も応募して欲しいということです。
- 反対の立場の団体は、医大新設により自らが経済的に不利益を受ける可能性のある団体であり、いわきの医療改善ために反対しているのか、疑問です。
- 反対の団体の意見を聞き入れていわき市が医大新設の候補から降りたとしても、医大新設を認可するのは、首相の指示を受けた文部科学大臣であり、他の被災地に医大新設が認可されることは明白です。その場合、いわき市は指をくわえて見ていることになります。
反対理由3. 現在本市内の病院では、県立医科大学や東北大学から多くの医師の派遣を受けている状況を考慮すると、医学部の新設について積極的に関与することは困難である
- 県立医科大学や東北大学からの医師派遣等を含めて現在の仕組みによって、共立病院の医師不足が発生しています。両大学とも傘下の医師数に余裕があるわけではなく、共立病院に多くの医師を供給できる余力はないと思えます。医師供給源を県立医科大学や東北大学のみに頼るだけでは、現在の医師不足は解消できません。
- 市内の私立病院の多くは、それぞれの医師供給源を開拓し、関東圏等から医師派遣を受けています。医学部の新設はそのルートの拡大を意味し、医師確保に寄与します。
- 地方医科大学の卒業生の一定程度が、地元に留まることは他地区で証明されており、医大卒業後も数十名単位の医師が初期研修生等として地元残留することが期待できます。
反対理由4. 共立病院では、県立医科大学、東北大学と信頼関係を結び、医師の派遣を受けているが、それを失う恐れがあり、地域医療の崩壊につながりかねない状況になる
- 現在の信頼関係は、医大新設と直接関係ありません。現在派遣を受け、いわきで地域医療に携わっている医師の多くが地域医療に誇りを持って臨床にあたっており、自らが選択していわきにいらしている医師も多い。倫理に反する医師引き上げに賛成するとは考えにくいです。
- 仮に医大誘致活動により、県立医大や東北大学から現在派遣されている医師の引き上げ等が発生したならば、県立医科大学、東北大学の倫理性が問われます。そんなことは絶対に無いと、固く信じます。
- 本来、病院経営は自らが医師に対して魅力有る勤務場所を提供することによって医師招聘を実現するものであって、お願いして派遣してもらうものなのか疑問に思います。本質的な解決になっていません。
反対理由5. 医学部の新設は、病院勤務医師約200名を医学部教員に振り替える必要があり、病院勤務医師が引き抜かれる可能性が増し、さらなる医師不足を招く可能性がある
- 医学部教員は全国から広く募集予定です。それは文部科学省が公表している医学部新設の要件にも記載されています。
- 医師は「西高東低」といわれており、西日本に多く配置されています。それは歴史的に国立大学が西日本に重点的に配分されてきたという事実から発生している事象です。例えば京都府には、京都大学と京都府立医大があり、人口あたりの医師数は、いわき市の約2倍です。
- 全国の医学部大学院には論文の準備のため、臨床を行わずに基礎研究を行っている研究医が多数所属しています。彼らを新設医大の教員に招聘する場合においては、病院勤務医師が引き抜かれることはありません。
- 全国医学部の医局には、退官直前のベテラン教授や、上がつかえて教授ポストや准教授ポストが与えられない若手研究者がたくさんいると聞きます。彼らの新任ポストとして、今までにない開かれた大学の教授ポストがあれば、これに応募する研究者は少なからずいると考えます。
- 一般的に医大の教員となるには、博士号取得や、論文を書き大学院を修了している医師になります。いわき市の臨床医の多くがその要件を満たしているわけではなく、その場合教員候補となりえません。
反対理由6. 医学部の新設には病床数600床以上の付属病院の設置が必要とされ、本市で該当するのは共立病院だけであり、共立病院が付属病院となる可能性がある
- 新設医大において、共立病院とは別に新設の付属病院を建設することが考えられ、市民が受ける医療サービスの量の向上が期待できます。その場合、共立病院は付属病院とはなりません。
- 私立病院の目的は市民の医療向上であり、運営主体がどこであるかどうかは、副次的な論点です。
反対理由7. 市当局においても、誘致活動は地域医療の崩壊を招きかねないので反対である
- 市当局の医療政策において、過去10年間で市内の医師数が100名近く流出させてしまっています。市当局の立場と、市民の総意は異なっていると考えます。請願は議会に対して提出したものであり、市民を代表する議会の意思が市当局の意向に左右されることは、議員の独立性を自ら放棄したとみなしかねません。