経営の神様、、5フォース分析やバリュー・チェーンなど数多くの競争戦略手法を提唱したマイケル・ポーターの医療ビジネス本です。5フォースは好きな分析ツールのひとつですが、ハードカバーで626ページ、手強いです。

第一に「患者にとっての医療の価値を追求すること」を目標として据え、この目標に沿った具体的な戦略、運営プランを提示しています。米国の医療が題材ですが、医療システムを広く論じていますので、本質は日本でも同じだと思いました。

医療を巡る議論は、限られた資源をどのように配分し、誰が負担するかという問題です。医療コスト、アクセス、そして質の三者のバランスをどのようにとるか。戦後の日本は、医療のアクセスと低コストを優先してきました。人口当たりのベッド数は欧米の数倍です。保険制度の下、低い医療費で高度な医療を、長期にわたって受けることができました。一方、1ベッド当たりのマンパワーは欧米の病院の1/3から1/5だそうです。日本の医療は現場の献身的な努力なくしては成り立ちません。このため、救急医療や重症疾患への対応は、不十分になっているといわざるをえません。医療費単価が抑制されているため、医療経営は「ゼロサム競争」に陥っています。

医療提供者、患者、メーカ-、政府等それぞれの立場から取るべき戦略を論じていますが、ざっくりいって、主張されているのは、以下の2点です(私の理解では)。
・ゼロサム競争でなく、診療実績に基づいて医療の価値を向上させる競争をするべき
・医療サイクル全体における医療の評価を上げるべき

至極ごもっとも。「患者にとっての医療の価値を追求すること」をシンプルに追求すればよいのではないか。ポーター教授の提言は、日本でこそ有効に機能するのではないか、そう思わせる本です。

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