いわき市では、建築行為に伴う接道要件(建築基準法第42条2項道路)に基づき、市街化区域内の市道で、道路が狭いため車両の交差ができない道路について、建築基準法による建築敷地の後退部分(みなし道路部)の用地取得を行っています。これは「ゆとりの道路整備事業」として、道路整備、交通安全の確保、道路環境、生活環境の改善を図ることを目的に、平成5年度から実施されています。
建築基準法の定めによる道路の幅員4m確保するために、建築主等からの協議があれば用地調査、買収、道路整備を実施しています。
実は、これは建築基準法が想定していない、かなり踏み込んだ内容になっています。私が知る限り、このような規定を置いている自治体はありません。

そもそも建築基準法第42条2項の規定は、前面道路の幅員4mを確保することを目的に、建物の新築、改築等のタイミングで、建築主に無償でセットバックさせる制度です。なぜなら有償だと建築主の任意の建替に合わせて、財源確保しなければならないためです。現状4m未満の道路は、数名の方だけのための生活道路と考えられ、公共が用地取得する対象として適さないためです。
では、なぜいわき市が身を削ってまで、生活道路敷地を取得する必要があるのか。
 
ひとことでいえば、セットバックの効果を確実にすることです。性善説に立てば、セットバック 後は建物が建たないので、その分道路幅員が広がるはずです。しかし性悪説に立てば、建物でなく構築物、たとえばブロック塀をセットバック部分に立てる等の嫌がらせも、事実起きています。これを防ぎ、確実に市街地の生活道路に4m幅員確保を目指すために、市が自ら一般財源を投じて(国、県からの補助金はありません)、一見投資効果がない道路敷を取得するのです。

ちなみに過去の支出実績は以下の通り。
平成19年度  39件  52,270千円
平成20年度  44件 41,237千円
平成21年度 40件 27,590千円
平成22年度 38件 23,720千円

1件のセットバックにつき、60-130万円の支出となっており、これは道路敷地としてではなく(通常、ゼロ評価)、宅地としての評価しているためです。 市の説明では、この施策は非常に有効に機能しているとのこと。通常、ゼロ評価の土地を有償取得することの税金投入の是非について、異論もあろうかと思います。
建築基準法の立法趣旨から超越した施策でもありますで、今後、その効果について注視していきたいと思います。